最悪の体育祭
ある日の学校でのこと。
今日は体育祭の日だ。ほとんどの生徒が白のハーフシャツ、紺色のハーフパンツと運動着を着ている。
私も白のハーフシャツ、紺のハーフパンツで登校してきた。教室で準備していると、アスマとユミが私に話しかけてきた。二人とも運動用の服装だ。
教室は生徒たちの活気に満ちていた。
アスマ「よっ、アヤ! おはよう!」
アスマは白のハーフシャツに紺のハーフパンツ姿で、いつもより元気そうに私に話しかける。
ユミ「おはよう、アヤ。体育祭、楽しみね。」
ユミも同じく運動着姿で、クールな表情ながらも少し興奮した様子だ。
アスマ「今日はバスケとリレーがあるんだよな! 俺、バスケで絶対活躍してやる!」
アスマは拳を握りしめて意気込む。
ユミ「私は短距離走とリレーに出るわ。アヤは何に出るの?」
ユミは私に尋ねる。
アスマ「そういやアヤ、九条は今日来てんの? 応援に来るとか言ってなかった?」
アスマは少し気になった様子で私に尋ねる。
アヤ「ウチは女子バスケに出る予定なんだ。マコトくんは剣道の試合に出るって言ってたよ。」
ちょうどそこにマコトくんが教室に入ってきた。
マコト「アヤちゃん、おはよう。」
アヤ「あ、マコトくん! おはよう!」
私はマコトくんと手を取り合う。
マコト「あ……すみません。お邪魔でしたか?」
マコトくんはアスマとユミを見て申し訳なさそうにしている。一方マコトくんが私と手を取り合う様子を見て、アスマとユミは一瞬表情を曇らせる。
アスマ「あ、九条! おはよう! お邪魔なわけねーだろ!」
アスマは笑顔で手を振る。
ユミ「おはよう、九条くん。お邪魔だなんて、そんなことないわ。」
ユミも穏やかに微笑む。
アスマ「九条、お前剣道の試合出るんだって? 頑張れよ!」
アスマは励ますように言う。
ユミ「そうね。私たちもバスケとリレー、頑張るわ。」
ユミも頷く。
アスマ「あ、そうだ! アヤ、お前女子バスケ出るんだろ? 俺、応援しに行くからな!」
アスマは嬉しそうに言う。
ユミ「私も応援するわ。アヤのバスケ、楽しみね。」
ユミも微笑む。
アスマ「九条も、アヤの試合見に来いよ!」
アスマはマコトくんに提案する。
ユミ「そうね。九条くんの剣道の試合が終わったら、アヤの応援に来てあげて。」
ユミもマコトくんに言う。
マコト「はい。そのときはよろしくお願いします。じゃあアヤちゃん、また後でね。」
マコトくんは教室を出て行った。
それからホームルームが始まり、体育館で開会式が行われた。開会式終了後、私は武道場に向かう。剣道の試合はここで行われる。
観客エリアに正座し、武道場を眺める。選手控えの間にマコトくんが防具を身につけて正座している。
開会式が終わり、私が武道場に向かう様子を、アスマとユミは少し離れた場所から見ていた。
アスマ「……アヤ、九条の試合見に行ったな。」
アスマは少し寂しそうに呟く。
ユミ「……ええ。恋人だもの、当然よね。」
ユミも同じように寂しげな表情を浮かべる。
アスマ「……でも、俺たちもアヤの試合、応援しに行こうぜ。」
アスマはユミを見て言う。
ユミ「……そうね。私たちは幼馴染として、アヤを応援するわ。」
ユミも頷く。
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武道場では、剣道の試合が始まろうとしていた。マコトは防具を身につけ、正座して試合開始を待っている。私は観客エリアで、マコトの姿をじっと見つめていた。
そして、試合開始の合図が鳴り響いた。マコトが立ち上がり、竹刀を構える。
「始め!!」の合図でマコトくんと相手の選手が立ち上がり、竹刀を構える。相手の選手が二歩、三歩、大きく下がる。相手の選手が駆け足でマコトくんに向かって突っ込んでくる。マコトくんは竹刀を構え、相手の動きを見ている。
すると相手の選手はとんでもない動きに出た。
「うおおおおおおっ!!」
相手の選手は大きく飛び上がり、そのまま前転してマコトくんに向かって竹刀を振り下ろしたのだ!
「白、反則!!」
審判が反則を注意するも相手の選手は言うことを聞かない。マコトくんは大きく後ろに下がり、竹刀は床に当たり、床に穴を空けた!さらにマコトくんに向かって竹刀を振り下ろし、鍔迫り合いが起こる。
「その剣……誰に習った?」
静寂な武道場に、相手の声が響く。マコトくんは必死に押さえ、大きく下がって距離を取る。その後、他の選手が相手を押さえ、強制的に退場された。
「重大反則により、赤勝利!!」
マコトくんが勝利した。拍手など起こらず、マコトくんは礼をして、控え室に戻っていった。私はとんでもない試合をただ眺めていた。
その頃、アスマとユミの近くの生徒がひそひそと話をしていた。
生徒A「ねえ、剣道の試合見た?」
生徒B「ああ、大きく飛び上がって斬り下ろしてたよな?」
生徒C「あんな試合見たことないわよ。」
生徒D「あれじゃあゲームの剣士じゃねえか……。」
武道場から少し離れた場所で、アスマとユミは周囲の生徒たちの噂話を聞いていた。
アスマ「……おい、ユミ。今の話聞いたか?」
アスマは眉をひそめてユミに話しかける。
ユミ「……ええ。剣道の試合で、何か異常なことが起きたみたいね。」
ユミも不安そうな表情を浮かべる。
アスマ「前転して斬りかかるとか……反則だろ。床に穴開けるとか、どんだけ力込めてんだよ……。」
アスマは信じられないという表情で呟く。
ユミ「……九条くんは無事だったのかしら。アヤも見ていたはずよね……。」
ユミは心配そうに私のことを思う。
アスマ「……とにかく、武道場に行ってみようぜ。アヤの様子を確認しねぇと。」
アスマはユミに提案する。
ユミ「……そうね。急ぎましょう。」
2人は急いで武道場に向かった。
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武道場に着くと、私がまだ観客エリアに座っている姿が見えた。アスマとユミは私に駆け寄る。
アスマ「アヤ! 大丈夫か!? 今の試合、マジでヤバかったって聞いたけど!」
アスマは息を切らしながら私に尋ねる。
ユミ「アヤ……九条くんは無事なの……? あんな反則行為……信じられないわ……。」
ユミも心配そうに私を見つめる。
先生「私語を慎め! そして武道場は今立ち入り禁止だ!!」
審判の先生がアスマとユミに怒鳴った。
アスマ「あ、すみません……。」
アスマは審判の先生に怒鳴られ、しゅんとする。
ユミ「失礼しました……。」
ユミも小さく頭を下げる。
私が親指で入口を指すと、2人は私に続いて武道場の入口に向かった。
武道場入口。
マコトくんは入口で座り、ペットボトルのお茶を飲んでいた。
アヤ「マコトくん!!」
私はマコトくんの所に駆け寄る。マコトくんは立ち上がって私の手を取った。
マコト「アヤちゃん、さっきの試合……」
アヤ「うん、見てた。マコトくん……大丈夫?」
私はマコトくんの事を気遣う。
マコト「ああ、大丈夫だよ。」
マコトくんはアスマとユミの姿を見て、会釈した。
マコト「2人とも、ご心配おかけしてすみません。」
アスマ「九条! 大丈夫か!? さっきの試合、マジでヤバかっただろ!」
アスマはマコトに駆け寄り、心配そうに尋ねる。
ユミ「九条くん……怪我はないの? あんな反則行為、見ていて怖かったわ……。」
ユミもマコトを心配そうに見つめる。
アスマ「つーか、あの相手の選手、何なんだよ! 前転して斬りかかるとか、剣道じゃねぇだろ!」
アスマは憤慨した様子で言う。
ユミ「床に穴まで開けるなんて……。九条くん、本当に無事で良かったわ。」
ユミは安堵のため息をつく。
アスマ「……でもさ、九条。お前、あの攻撃よく避けたよな。すげぇ反応速度だったぞ。」
アスマは少し感心した様子で言う。
ユミ「そうね……。九条くん、剣道、相当強いのね。」
ユミもマコトの実力を認めるように頷く。
アスマ「……それにしても、あの相手の選手が言ってた『その剣、誰に習った?』って……何だったんだ?」
アスマは首を傾げる。
ユミ「……気になるわね。九条くん、何か心当たりはあるの?」
ユミはマコトに尋ねる。
マコト「いえ、俺にはさっぱり分かりません。」
マコトくんはかぶりを振った。私はさっきのセリフに聞き覚えがあった。
アヤ「もしかしてだけど……ゲームのセリフじゃない? 確か何かのゲームで主人公が大きく飛び上がって、相手に切りかかるシーンがあったと思うけど……。」
マコト「もしかしたらそれかもな……。」
マコトくんが頷いた。それからマコトくんはアスマとユミの方を見て真剣な眼つきになる。
マコト「二人とも、アヤちゃん。気を付けて。何か嫌な予感がするんだ。」
マコトくんの予感が現実にならないことを祈るばかりだった。
アスマ「……ゲームのセリフ? マジかよ……。」
アスマは信じられないという表情で呟く。
ユミ「……ゲームの技を現実で再現しようとしたの……? 危険すぎるわ……。」
ユミも呆れた様子で言う。
マコトくんが真剣な眼つきで警告すると、アスマとユミは表情を引き締める。
アスマ「……分かった。九条、ありがとな。俺たち、アヤを守るから。」
アスマは力強く頷く。
ユミ「……ええ。私も、アヤのそばにいるわ。何かあったら、すぐに駆けつけるから。」
ユミも真剣な表情で言う。
アスマ「……でもさ、九条。お前も気をつけろよ。さっきみたいな変なヤツがまた現れるかもしれねぇし。」
アスマは心配そうにマコトを見る。
ユミ「そうね……。九条くん、無理しないで。何かあったら、すぐに先生に報告して。」
ユミもマコトを心配する。
アスマ「……あ、そうだ。アヤ、お前の女子バスケの試合、いつだっけ?」
アスマは私に尋ねる。
ユミ「私たちも応援に行くわ。アヤの活躍、楽しみにしてるわね。」
ユミも微笑む。
アヤ「ウチの試合はまだ先だよ。この後リレーがあるでしょ? ウチ、マコトくんと一緒に応援に行くから。頑張ってね!」
私は不安が顔に出ないよう元気にアスマとユミにエールを送った。
校庭。
私とマコトくんは観客席に並んで座っていた。まず男子リレー、それから女子リレーが行われる。まずはアスマのリレーだ。
「アスマくん、頑張ってー!」
私はアスマを大声で応援する。アスマが私に向かって手を振る。
4人の選手がトラックに並ぶ。アスマは赤のバトンを持っている。他に白、青、緑のバトンを持つ選手が並ぶ。
信号銃が鳴り、4人の選手が一斉に駆け出す。アスマは2位だ。
次々と他の選手がアスマを追い抜いていく。
アヤ「アスマくん、頑張って!!」
私はアスマに懸命にエールを送る。
マコトが何かに気づいたのか、突然立ち上がって叫んだ!
マコト「避けて!!」
1位の選手が突然バナナの皮をポケットからばらまいたのだ! 青いバトンを持つ2位の選手はバナナの皮を踏んで転んでしまった! 3位の選手はバナナの皮を懸命に避けるがトラックを大きくはみ出してしまう。アスマは立ち止まって1位の選手を呆然と眺めていた。1位の選手の勢いは依然止まらない。
ピピピピピピ!! とホイッスルが連続で鳴る。
「ただ今の試合について緊急連絡します。著しい問題行為により、ただ今の試合を無効とします。安全確認等が完了するまで、リレー競技について一時中断といたします。繰り返します……」
私はアスマの所に駆け出していた。マコトくんも私の後をついてくるように走っていた。
アスマはトラックの上で呆然と立ち尽くしていた。目の前で起きた信じられない光景に、言葉を失っている。
アスマ「……何だよ、今の……バナナの皮って……レースゲームかよ……。」
アスマは信じられないという表情で呟く。私とマコトが駆け寄ってくると、アスマは我に返った。
アスマ「アヤ……九条……。」
アスマは2人を見て、少し安心した様子を見せる。
アスマ「……マジで何なんだよ、あいつ……。バナナの皮ばらまくとか……反則だろ……。」
アスマは憤慨した様子で言う。
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その頃、女子の控え室では、ユミが男子リレーの様子を聞いて、表情を曇らせていた。
ユミ「……バナナの皮……? まさか、またゲームの真似……?」
ユミは不安そうに呟く。それからユミは急いで控え室を出て、トラックに向かった。アヤとアスマ、そしてマコトの姿が見える。
ユミ「アスマ! アヤ!」
ユミは3人に駆け寄る。
ユミ「アスマ、大丈夫……? 怪我はない?」
ユミはアスマを心配そうに見つめる。
アスマ「ああ、俺は大丈夫だ。でも、バナナの皮踏んだヤツが転んでたぞ……。」
アスマは転倒した選手のことを心配する。
ユミ「……九条くん、これも……あなたの言っていた『嫌な予感』なの……?」
ユミはマコトに尋ねる。
マコト「……俺にもさっぱりだ。」
マコトくんは立て続けに起こった事態にかぶりを振った。
アヤ「これでは今後の競技も心配だな……」
マコトくんが顎に手を当てて考え込む。
アヤ「ね、ねえ。先生に相談してみようよ?」
私はおずおずとマコトくん、アスマ、ユミに聞いてみる。
アスマ「そうだな……。このままじゃ、次の競技も危ねぇかもしれねぇ。」
アスマは私の提案に頷く。
ユミ「ええ、そうね。先生に相談して、対策を考えてもらうべきだわ。」
ユミも同意する。
アスマ「よし、じゃあ俺たち、先生のところに行こうぜ。」
アスマは立ち上がり、3人を促す。
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4人は体育祭の本部がある場所に向かった。そこには、体育祭の責任者である体育教師が数名いた。マコトが事情を説明すると、体育教師たちは深刻な表情を浮かべた。
教師A「……なるほど。剣道の試合でも、リレーでも、異常な事態が起きているのか……。」
教師B「……ゲームの真似事をしている可能性が高いな……。危険すぎる……。」
教師A「……分かった。今後の競技については、教員が監視を強化する。それと、不審な行動を取る生徒がいたら、すぐに報告してくれ。」
先生は私たち4人に頼む。
アスマ「分かりました! 俺たちも気をつけます!」
アスマは力強く頷く。
ユミ「私たちも周囲に注意を払います。」
ユミも真剣な表情で言う。
教師A「それと……君たち4人は、今後も一緒に行動してくれ。何かあった時に、すぐに助け合えるようにな。」
先生は私たちに指示する。
アスマ「了解です!」
ユミ「分かりました。」
4人は本部を後にし、再び校庭に戻った。
結局リレーの競技については中止することとなってしまった。
私はバスケの試合が行われる第1体育館に向かった。先ほどの事態を受けて、入口では持ち物検査が行われている。持ち物検査を受けた後、私は青いビブスを着て1階の試合コートに向かう。私の後ろには青いビブスを着た2人の選手が待機している。前方には黄色いビブスを着た選手が3人並んでいる。
マコト「アヤ、頑張って!!」
2階を見上げるとマコトくんが両手を振って応援している。隣にはアスマとユミが手を振って応援している。私は右手を振って3人に応えた。
ホイッスルが鳴り、試合が始まる。私と相手の選手が高く飛び上がり、ボールを奪い合う。相手の選手の方がより高くジャンプし、ボールを奪い取った。私と後ろの選手は自分側のゴールまで下がり、守りの陣形をとる。
相手の選手1人がこちらに向かってくる。相手側のもう1人の選手は私の前方、つまり相手から見て後方に立っている。
相手の選手はボールを後ろの控えの選手にパスした。控えの選手は足を屈めている。怪我でもしたのだろうか?
すると頭上から大声が聞こえた。
マコト「アヤ!! しゃがめ!!」
マコトくんの声だ。私はとっさにしゃがんだ。
すると相手の選手は飛んできたボールを思い切り蹴飛ばした!! 蹴飛ばされたボールは私の横を通り過ぎ、後ろの控えの選手の間を通り抜け、体育館のガラスに激突し、ガラスが割れ、向こうのフェンスに激突して落ちた!
アヤ「……え?」
私は突然の出来事に呆然として、しゃがみこんだまま相手の選手を見ていた。相手の選手は舌打ちすると体育館を出て行った。体育館ではホイッスルがやかましく鳴っている。2階の観客席ではブーイングや批判の声がやかましくなっている。
私のところにマコトくんとアスマ、ユミが走ってやってきた。
マコト「アヤ、大丈夫か!?」
私はやって来たマコトくんに思い切り抱きつき、胸に顔をうずめて泣いてしまった。
アヤ「マコト……! こ、怖かったよお……!」
アスマは相手の選手が去った体育館入口を睨んでいる。ユミは割れたガラスを呆然と眺めていた。
アスマ「……ふざけんな……! あのクソ野郎……!!」
アスマは拳を握りしめ、怒りに震えている。相手の選手が去った入口を睨みつけたまま、今にも追いかけそうな勢いだ。
ユミ「……信じられない……。ボールを蹴るなんて……。これは完全に殺人未遂よ……。」
ユミは割れたガラスを呆然と眺め、声を震わせている。もしアヤがしゃがんでいなければ、と考えると恐ろしくて仕方がない。
マコトくんに抱きついて泣いている私の姿を見て、アスマとユミは胸が締め付けられる思いだった。
アスマ「……アヤ……。」
アスマは私に駆け寄り、そっと私の背中に手を置く。
アスマ「……怖かったよな……。でも、もう大丈夫だ。俺たちがいるから……。」
アスマは優しく、しかし震える声で私に語りかける。
ユミ「……アヤ……本当に、無事で良かった……。」
ユミも私の隣に膝をつき、涙をこらえながら私の肩に手を置く。
ユミ「……九条くん、ありがとう……。あなたが叫んでくれなかったら……アヤは……。」
ユミはマコトくんに感謝の言葉を伝えるが、声が震えている。
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その後、体育館には多くの教師が集まり、事態の収拾に追われた。体育祭は緊急中止となり、生徒たちは教室に戻るよう指示された。
私たち4人は、教室に戻る途中、静かに歩いていた。私はマコトくんの手をしっかりと握り、アスマとユミは私の両脇を歩く。
アスマ「……なあ、九条。お前、どうしてあのタイミングで叫べたんだ?」
アスマはマコトくんに尋ねる。
ユミ「……そうね。普通、あんな状況で咄嗟に反応できないわ。九条くん、何か気づいたの?」
ユミもマコトくんに尋ねる。
マコト「……ほとんど直感のようなものですよ。あとは相手の選手の脚を見てました。普通に歩いていたし、テーピングや包帯といった跡も見えなかった。ほとんど奇跡みたいなものです。でもこれでは……」
私たちは教室の座席に座っていた。立て続けに起こった事態で空気が重くなっている。
担任の喜田先生が鋭い目つきで入ってきた。私たちは慌てて各自の席に戻る。マコトくんも自分の教室に戻っていった。
喜田先生「……一連の騒動を受け、体育祭についてお伝えします。協議の結果、誠に残念ですが、体育祭は中止することになりました。」
クラス中の生徒が顔を見合わせる。不満の声も上がる。
喜田先生「……今回の一件により、心に深い傷を負った生徒もいます。悪いのは問題行動を起こした生徒たちです。しかしこのまま続けても生徒たちに負担がかかる、ということで体育祭は中止という判断となりました。……学校の授業も1、2週間は中断です。スクールカウンセラーも常時2名配置いたします。学校は開けておきます。ここで自習してもいいですし、カウンセラーの先生に話しに来て相談してもらっても構いません。生徒の皆さんは速やかに下校してください。カウンセラーの先生と話したい方はカウンセリングルームまで来てください。」
喜田先生は必要事項を伝えると教室を出て行ってしまった。生徒たちはしばらく騒いでいたが、ぽつりぽつりと帰っていく生徒もいた。
喜田先生が去った後、教室には重苦しい空気が漂っていた。生徒たちは小声で話し合ったり、呆然としたりしている。
アスマとユミは、私の席に近づいた。
アスマ「……アヤ。大丈夫か?」
アスマは心配そうに私に声をかける。
ユミ「……アヤ。無理しないで。カウンセラーの先生に相談してもいいのよ。」
ユミも優しく私に語りかける。
アスマ「……俺たち、アヤの家まで送ってくから。一人にしたくねぇんだ。」
アスマは真剣な表情で言う。
ユミ「……そうね。私たちも、アヤと一緒にいたいわ。」
ユミも頷く。
アスマ「……九条にも連絡しとくか? あいつも心配してるだろうし。」
アスマは私に提案する。
ユミ「……そうね。九条くんも一緒に、アヤの家まで行きましょう。」
ユミも同意する。
アヤ「……うん。ありがとう。4人で一緒に帰ろう。」
私とアスマ、ユミはマコトくんの教室に向かった。
マコトくんはリュックを背負っている。
マコト「みんな……本当に残念だね。」
マコトくんの声が重い。
アヤ「マコトくん、一緒に帰ろう?」
私はマコトくんの顔を見る。マコトくんは頷き、4人で一緒に帰ることになった。
帰り道。私たちは並んで歩く。一連の騒動のせいで空気が重く、会話がない。誰も何も言うことがないまま、ただ帰り道を歩いていた。
私の自宅の前で立ち止まる。
アヤ「みんな、今日はありがとう。気を付けて帰ってね……。」
私は家に入り、「……ただいま。」と小さな声で挨拶する。そのまま2階の自分の部屋に入り、バッグをその辺に置き、着替えずにベッドに倒れこみ、そのまま眠りについた。
私の家の前で、アスマとユミ、そしてマコトくんは立ち尽くしていた。私が家に入っていく姿を見送った後、3人は重い沈黙に包まれた。
アスマ「……九条。お前、今日はアヤを守ってくれて、本当にありがとな。」
アスマはマコトくんに向き直り、真剣な表情で礼を言う。
ユミ「……そうね。九条くんがいなかったら、アヤは……。本当に、ありがとう。」
ユミも深く頭を下げる。
アスマ「……でも、これからどうすんだよ。また、あんな変なヤツが現れたら……。」
アスマは不安そうに呟く。
ユミ「……そうね。学校は休みになったけど、アヤの安全が心配だわ……。」
ユミも同じように不安を口にする。
アスマ「……なあ、九条。俺たち、明日もアヤの様子を見に来ていいか? お前も一緒に来てくれよ。」
アスマはマコトくんに提案する。
ユミ「……私も、アヤのそばにいたいわ。一人にしたくない……。」
ユミも頷く。マコトくんも同意し、3人は明日もアヤの様子を見に来ることを約束した。
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翌日、朝。
アスマとユミ、そしてマコトは、私の家の前に集まっていた。
アスマ「……おはよう、九条。」
アスマは少し疲れた表情でマコトくんに挨拶する。
ユミ「おはよう、九条くん。……昨日は、あまり眠れなかったわ……。」
ユミも同じように疲れた様子だ。
アスマ「……アヤ、起きてるかな……。インターホン押してみるか。」
アスマは私の家のインターホンに手を伸ばす。




