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黄金色の釣り餌

「よーし、こんなもんだろう」

「ええ、悪くないじゃないですか」


 目の前には輝く置き物がある。

 光治郎がパレッタに陛下への書状を書いてもらったときに、カメラでパチリと何枚か撮影。


 それを浩史が3Dプリンタで打ち出して、金メッキで仕上げたのである。


「な、なんなんですか! これは」

「見りゃわかるだろ。パレッタ像だよ。……ちゃんと本人の承諾はとってあるからな」


 嫌がるパレッタにかなり強引に拝み倒してのものではあったのだが。


「スゲェ、欲しいぃぃぃ!!」

「ダメダメ。これは王都の翼竜像を作った連中に見せて、度肝を抜くためなんだから。そろそろ出かけるか。アレク、留守番頼んだぞ」

「そ、そんなー」


 光治郎と浩史はパジェロを駆って、王都へと繰り出したのである。



 王都に着くと光治郎は早速、ピートが買った土産物屋に直行。


「いらっしゃい。何をお探しで」

「ああ、実は知り合いがここでこれを買ったんだが、作った人を知りたくてな」

「お客さん。申し訳ありません。それは本人の希望でお教えできないんですよ」

「そこをなんとか。俺たちの未来がかかってんだよ」

「そう申されましても」


 何度かの押し問答の末、断念。

「どうするんです」と尋ねる浩史に「本当はこんなことしたくないんだが」と光治郎は王都へと向かう。


 門番にパレッタからの書状を渡す。

 即会見。ほんとあいつ何者なんだろうか、と考えていると。


「よくきたな。コージロー。して、今日は何用じゃ」

「実はお願いしたいことがありまして」


 ことのあらましを話す。

 流石に陛下に電気の説明をしてもわからない。


 自動車のレストアができる人材を欲していること。

 土産物屋の置き物を見て、その技術力の高さが知れること。


「あいわかった。私もこの翼竜像を作ったものが知りたいしな。だが、コージローに便宜を図ることが多すぎるという声も上がっていてな」

「それは……申し訳ないとは思います」


 今回の自動車普及計画の失敗も陛下の口利きで収めてもらったようなもの。

 王家を便利屋のように使うという声が上がるのはわかる。


 でも、こればっかりは引く訳にはいかない。

 計画の再建は人材確保にかかっていると言っても過言ではないのだ。


「ですが、これはどうでしょう?」


 用意してきたパレッタ像を見せると陛下の視線が釘付けに。

 臣下たちからもため息が漏れる。


「なんと見事な」

「パ、パレッタ様のお姿が」


 効果はてきめんである。


 陛下の腰が浮き、一歩踏み出そうとしたところでためらう。

 そして椅子に座り直した。


 さらにひと押し。


「この技術を翼竜像にも施せば、王都の権威もさらに向上するものと」

「可能なのか」

「はい、伝えることができれば。それと……パレッタ像はそのまま陛下に献上いたします」


 ざわめく臣下たち。

 陛下が手を挙げ、そのまま会見は終了した。


 書状はすぐに出来上がり、一礼して王宮を辞すことに。


「社長、良かったんですか。あれ、渡してしまって」

「ああ、こんなことになるんじゃないか、ってな。もう一個用意してたんだ」


 呆れる浩史と歩いていくうちに土産物屋はもうすぐ。



「いらっしゃ……。またあなたたちですか」

「ああ、今度はこういうものがあるんだが」


 王家の紋章。そして書状の内容。

 土産物屋は言うことを聞くしかない。


「くれぐれも変な強要をしないでくださいね。あの方々は繊細なんですから」

「わかってるよ。悪いようにはしないって。それに……きっとあの翼竜像はもっと見事な品になると思うよ」


 あっけに取られる店主を後に、二人は王都の北のハズレへ。

 ついた場所は錬金術師の研究所。



「こんちわ。錬金術師の方はいますか」

「ひいぃ! なんですか。別におかしな研究はしてませんよ」


 酷く怯えている。

 宥めすかせて、事情を話し、危害を加えることはないと説明。


「ほ、本当に何もしませんよね?」

「大丈夫だって。だいたい、なんでそんなに怖がることがあるんだよ。まあ、いいや。これを見てくれ」


 光治郎はまず翼竜像を置き、そして隣にはパレッタ像を。

 その途端、怖がっていた錬金術師たちが駆け寄ってくる。


「う、うわっ、なんだお前ら」

「これは! どうやって作ったんですか。こんなにムラのない。しかも光沢が全然違う」


 かかった。

 光治郎は密かに右手でガッツポーズを作る。


 均一な被膜。淀みのない金色の輝き。電気的知識が不足している彼らが最も欲している技術。

 研究者たる錬金術師にとって、これ以上の釣り餌はない。


「知りたいか。その方法」

「えっ! 教えてくれるのか」



 ここからが光治郎の切り札である。


「お前ら。協力してくれたら、そのメッキ方法を全て教えてやる。原理も材料も。おまけに俺たちの仕事を手伝ってくれたら今後研究費を心配することはなくなるはずだ」

「本当ですか!」

「ああ、請け合おう。さあ、どうする」


 隠しきれない好奇心。

 思わずうなづく錬金術師たちと光治郎は、ガッチリと握手を交わした。


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