再始動と「お帰りなさい」、そして金色の導くものは
三峰モータースは再始動した。
いきなりレストアを始めた光治郎を浩史が止めた。
「何するんだ。早く、取り返さないと」
「社長。また、無理するつもりですか」
「そうですよ。すでに陛下から顧客に通達が出ているんです。急ぐ必要はないんですから」
「わかったよ……」
説き伏せられて、光治郎はスパナを置いた。
スケジュール表に大きくバツを書き、ページをめくって線を引き直す。
仕事は最低限の修理に止め、レストアはひとまず中断とあいなったのである。
「ウチは元々修理屋だしな。本業に戻ったと思えば……まあ、悔しくないと言えば嘘になるが」
「今は休んで、それから立て直しです。どうせピートがいませんしね。羨ましいか? アレク」
「べ、別に」
ガランとしたガレージ。いつもより人が少ない。
フレイヤさんがまだ来てないこともあるが、それよりピートがいない。
今、彼とサティは新婚旅行中なのだ。
光治郎は優雅にくつろげるキャンピングカーを送った。
せっかく一緒になった二人に休みもやれなかった詫びも兼ねて。
流石に凝った車種を選ぶ余裕はない。
レストア中のタイプ2を作り替えるだけで精一杯であったが、内装は神様を説き伏せて無理にお願いしたウェストファリア製である。
「メチャメチャ豪華じゃないですか。ここまでしてもらっていいんですか」
「何言ってんだ、ピート。レストア車の試乗で休みもやれなかったしな。その報酬だと思ってくれ」
「ありがとうございますにゃ」
「ああ、サティもいろいろ手伝ってくれてありがとう。さあ、行った行った」
恐縮する二人を押し出したのが、一週間前のことである。
「そろそろ帰ってくるんですよね」
「ああ、もっとゆっくりしてきていい、って言ったんだけどな」
至ってのんびりとしたガレージ内。
修理は浩史とアレクが担当し、光治郎は来週からのレストア計画を練り直していた。
「やっぱ、人手が足りんなあ」
「俺、やっぱ電装覚えますよ」
「いや、アレクは十分良くやってるから」
また、いつもの押し問答である。
実際、覚えてくれたら助かりはするが、絶対的な人手不足が解消するわけじゃない。
そこに。
キキー。
ブルブルブル、ブルン。
一台の車が止まった。音でそれがなんなのかがわかる。
三人はガレージを開けた。
「おかえり。王都はどうだった、……って、サティが運転してたのか?」
「すごいよかったですにゃ。運転はピートが優しく教えてくれて」
おーおー、と囃し立てる浩史とアレク。
反対側からピートが降りてきた。手には金色に輝く高そうな土産の品がある。
「これどうぞ。今、王都で話題の翼竜像です。ガレージの玄関口にでも飾ったらどうかと思って」
「へぇ、これはかなり……浩史! ちょっと来てくれ」
「どうしたんです。そんな血相を変えて」
何を騒いているんだと気のない風に見ていた浩史。
その瞳の色が変わる。
「これって」
「お前もそう思うか」
「はい、間違いありません」
金箔を貼ったのでは均一にならない。
窪みまでムラもなく、光沢が続いている。
間違いなく電気メッキである。
この異世界に電気を理解しているものがいるという何よりの証拠――
「ピート、どこでこれ見つけた」
「王都の少し高級な土産物を扱う店で」
「わりぃ、あとは浩史に任せる!」
光治郎はそれだけ言うと、踵を返し走りだした。
向かう先にあるのはパレッタの家。
「コージローはどうしたんです。あんなに慌てて」
「作業を劇的に変えるヒントを見つけたかも知れないんだ。王都へ行くぞ」
「パレッタの家に行ったのに? あっ、もしかして陛下につなぎを頼むつもりで!」
浩史がうなづいた。
アレクはパジェロをポンポンと叩き、整備を始める。
――急ぎの旅ならこいつが必要になるはずだ。
それは予感ではなく確信であった。




