酔っ払いの戯言的失言
夜が明け、クロエの手下とやらの報告を待っていた。
クロエは早朝から出ていき、ハクアは部屋の窓際でタバコをふかしている。
俺はやることがないのでベッドの上で横になり、目を瞑る。
二度寝するにしても、昨日の事で全然眠くない。
早くクロエが帰ってくることを願おう。
しばらくすると——
「主様、出かけるよ〜」
「……どこに行くんだ?」
「な・い・しょ♡」
とても嫌な予感がする。
正直行きたくない。
「例の手下たちから話は聞けたのか?」
話を逸らすことにした。
「うん、聞いたよー。だからさっ、出かけようか」
「まるで意味がわからないんだが……」
「いいから行くよー。ハーちゃんは主様担いでね」
「ハァ——仕方ないわね」
俺はハクアに軽々と担がれた。
少し抵抗しようと体に力を入れたが、ビクともしない。
そのまま俺は宿から連れ出された。
◇
街の外にある原っぱに到着した。
その原っぱの中央に一人の人物——ブルンガルドが腕を組み、胡座をかきながら座っていた。
わーお、コイツやりやがった。
見通しのいい原っぱなので、遠目から何となく人がいるなとは思っていたが、まさか本人だとは思わないだろ。
試しに暴れてみるも、ハクアにガッチリホールドされているので抜け出せない。
諦める、しかないか……
俺たちが近寄ると、ブルンガルドは静かに立ち上がった。
俺はブルンガルドと対峙する。
ケツを向けたまま。
両手で顔を隠し、悪あがきをする。
「キタカ」
(来たか)
「お? 逃げずによく来たね〜。コチラが僕たちの主様であーる! 讃えよ!」
「……カオヲミセナイノハ、シツレイデハナイカ?」
(顔を見せないのは、失礼ではないか?)
「主様はこう言ってるのさ。お前なんか俺のケツで十分だ。ってね!」
「お前はもう黙れ」
「——ン? ソノコエハ」
(——ん? その声は)
……チッ、声を覚えられてたか、仕方ない。
「ハクア。降ろしてくれ」
ハクアから降り、ブルンガルドと正面から向き合う。
「ヤハリキノウノオトコカ……タシカ、ヤシロダッタカ?」
(やはり昨日の男か……たしか、ヤシロだったか?)
「ああそうだ。まあ、なんだ。何を聞いたのかわからないが、このバカの話は信じなくていい。バカだから」
クロエを親指で指し示すと、ブルンガルドはクロエを見て一言。
「キサマガヤマヲケシタトキイタガ?」
(貴様が山を消したと聞いたが?)
「俺は無実だ」
うちのウルトラバカはなにバカな事を言ってんだか……山を消したのはハクアだろうに……俺は無実だ。
しかしブルンガルドは俺から視線を外す事はなかった。
「ナラバ、ダレガケシタトイウノダ?」
(ならば、誰が消したというのだ?)
俺がチラッとハクアを見ると、ブルンガルドもハクアに視線を移した。
「あの時の主様の雄姿。とても素晴らしいものでしたね」
「まさか素手で山を消し飛ばすとは……さすがの僕も驚いたよね!」
コイツラぶち殺してやろうか……
「アアイッテイルガ?」
(ああ言っているが?)
「本気にするなって、あのバカ二人の戯言なんだ。気にするだけ無駄だ。アイツらバカだからさ」
「酷いぞー! ブーブー!」
「もう少し言い方ってものがあると思いますよー! ブーブー!」
後ろからブーイングが聞こえてくるが無視する。
「後ろのは放っておいてだ、ブルンガルド……さん? 貴方は何故山が消えたことを調べているんだ?」
「ブルンガルドデカマワン。オレハトアルサンニングミヲサガシテイル。ソイツラハオレノユウジンヲコロシタ……ヤマヲケスホドノジツリョクシャナラバ、ソノカノウセイガアルトオモッテナ」
(ブルンガルドで構わん。俺はとある三人組を探している。ソイツらは俺の友人を殺した……山を消すほどの実力者ならば、その可能性があると思ってな)
「そうか……」
なるほど、つまりは敵討ちの相手を探していたわけだ。
だが生憎と俺らにそんな心当たりはない。
山を消すほどの実力者ならば、その友人を殺せたって? 俺らはそんな強い相手とは今まで出会ったことがない。
大抵の敵はハクアかクロエが一撃で殺している。
だから俺らが仇でないことは明白だ。
「ちなみに、その友人の名前は何て言うんだ?」
「イジークマト・ミュルダールダ」
(イジークマト・ミュルダールだ)
「イジークマト・ミュルダール……」
うーん、聞いた覚えがないので、やはり俺らは無関係だな。
「ハジマリノマチーノテマエニアルムラニスンデイタ」
(ハジマリノマチーの手前にある村に住んでいた)
「…………何か神様を頼っていた村のことか?」
「ソウダ。シッテイルノカ?」
(そうだ。知っているのか?)
あ、やばい。俺の中の何かが警報を鳴らしている。
これ以上喋ると藪蛇になる。
そういった確信がある。
「それって肉だるまみたいな奴?」
クロエが空気を読まずにそう言った瞬間——空気が変わった。
「……ニクダルマダト? キサマラ、ナニカシッテイルナ?」
(……肉だるまだと? 貴様ら、何か知っているな?)
「あー、ゴメンね。僕が殺しちゃったかも」
クロエは軽い感じでそう言った。
まるで、悪びれる様子がない。
例えるなら、約束していた用事を忘れていたかのような軽さだ。
クロエの言葉を聞いた直後から、ブルンガルドの体が微かに震えているのがわかった。
「…………イジークマトハ、ドンナサイゴヲムカエタノダ?」
(…………イジークマトは、どんな最後を迎えたのだ?)
「どんなって。命乞いする前に殺したからさー。別に特別面白い展開はなかったよ? 雑魚だったし」
ブルンガルドの顔が驚愕へと変わり、すぐに怒りを露わにする。
「キサマアアアアアアア!!」
「おや? 怒った? やーい、お前の友達でーべーそー」
クロエが謎の煽りをするので、止める必要が出てきた。
「ブルンガルド。すまないが、一旦怒りを抑えてくれ。イジークマトというのを殺したのには事情があるんだ」
「ドンナジジョウガアルトイウノダ!!」
(どんな事情があるというのだ!!)
「アイツは人を食っていた。だからだ」
やつは村を守ると言って、村人を生贄として捧げさせていた。
少なくともその行為を見過ごすわけにはいかない。
ブルンガルドも、奴が魔族であることは知らなかった可能性がある。
「ダガヤツハミカエリトシテムラヲマモッテイタ」
(だが奴は見返りとして村を守っていた)
「……そうだな。だが俺らは、村の連中から奴の生贄にされそうになった。だから抵抗しただけだ。それに奴は魔族らしいからな」
「オレモマゾクダ」
(俺も魔族だ)
…………なるほどね。
魔族かー、そうかそうか。
一度深く息を吸い、言った。
「お前はどうしたいんだ?」
「イジークマトの——トモノカタキヲウツ。ソレダケダ。ソシテ、メノマエニソノカタキガイル」
(イジークマトの——友の仇を討つ。それだけだ。そして、目の前にその仇がいる)
ブルンガルドが組んでいた腕を解くと、その皮膚は徐々に青みを帯び始める。
被っていた帽子も脱ぎ捨てると、その下からは魔族の証である二本の角が姿を現す。
「ワガナハ、ブルンガルド・ゴライアス。十指ノ葬列ガ一人〝不動ノ巨兵〟ナリ」
(我が名は、ブルンガルド・ゴライアス。十指の葬列が一人〝不動の巨兵〟なり)
押し潰されるようなプレッシャーがビリビリと全身へと襲いかかる。
「ニンゲンヨ。キサマラノシヲモッテトモノツグナイトシヨウ」
(人間よ。貴様ら死をもって友の償いとしよう)
更新ペースですが
「異世界転移は草原スタート!?〜勇者はお城でVIP待遇、俺は草原でサバイバル〜」
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「異世界ニコチン酒道〜《無限嗜好品供給》スキルと共に第二の人生を謳歌するつもりが、ヤニカス天使と酒カス天使がついてきた件。え、返品不可?〜」
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「自称・極悪聖女、我が道を行く〜私に罪を擦り付けた奴らを潰すために軍を作ります。集え! 我が御旗のもとに!〜」
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「エクス・マキナの操縦士〜元世界王者は、事故の起きなかったIFの身体で神速を刻む~」
の四作品を1話書いたら次、という形でローテーションしているので、少々お待ち下さい。
更新を待ってる間、他の3作品を読んで頂けると作者が喜びます。




