飲み仲間が働いてくれました
今回より、ブルンガルドのセリフは全てカタカナで読みずらいので、読みやすいように翻訳したのを後ろにつけています。
「なるほど。そのブルンガルドというのが私を探している、と」
「ああそうだ」
しばらくして帰ってきたハクアに先程の出来事を伝えた。
なぜ奴がハクア——もとい山を消した人物を探しているのか。
あの山の所有者という可能性もある。
そうだとしたら、非常にまずい。
この世界での山の価値がどれ程のものかわからない上に、元々整備されていたトンネルも壊してしまった。
早々にこの街を離れるか?
いや、すぐに姿を消すと怪しまれる可能性がある。
知らぬ存ぜぬを貫くとしよう。
「面倒なら消してきますが?」
「やめてくれ……」
◇
「じゃあ僕の手下に探らせてくるよ」
日が傾き始めた時間に帰ってきたクロエにも、ブルンガルドのことを伝えたところ、そんな返事が返ってきた。
「何かコソコソとやってると思ったら……お前何したんだ?」
クロエはこの街についた次の日から、一人で出かけることが多かった。
その結果がこれである。
いつの間にか手下を作っていたようだ。
「この街の裏を牛耳っている奴らと飲み仲間になったからね~。そのまま乗っ取った」
「乗っ取った以外は嘘だろ」
「酷いな~。ちゃんと話し合いで解決したんだよ? 平和的に僕に全権を明け渡してくれたね~」
コイツには何を言っても無駄だな。
とりあえず手下とやらがどんな連中なのかはわかった。
「手下に探らせると言ってもだな。何をどうするんだ?」
「直接聞きに行かせる」
「バカか?」
「違う違う。ちゃんとこの街の裏のボスが、何でそんなことをしているのか気になってるって感じにするよ。山が消えた理由は知らない態で上手くやるから任せてよ~」
それなら上手くいく……か?
チンピラ連中と俺たちとの繋がりを匂わせなければいいだけだしな。
「わかった。この件はお前に任せる。くれぐれも無茶やデタラメな行動はするなよ?」
「オッケー。じゃあ早速行ってくるね。夕飯までには戻るから~」
そう言うと、クロエは窓を開け外に飛び出して行った。
毎度のことだが、玄関から出てけよ……
◆
人気の少ない路地裏を大男が静かに歩いていた。
すると——
「そこのアンタ。ここから先は通行止めだぜ?」
ブルンガルド・ゴライアスの行く手を遮るように、チンピラ風の男たちが立ちはだかった。
「サキホドカラツケラレテイルノハシッテイル。ナンノヨウダ?」
(先程からつけられているのは知っている。何の用だ?)
「おっと、なら話は早い。うちのボスがお前に聞きたいことがあるそうだ」
「オレニ? ナニヲダ?」
(俺に? 何をだ?)
「なぜ山が消えた件を探っているのか、だとよ。うちのボスもこの件は調べているが、何もわからないらしくてな」
「ソウカ……アイニクオレモ、ジョウホウハモチアワセテイナインデネ」
(そうか……生憎俺も、情報は持ち合わせていないんでね)
「ボスはお前が犯人なんじゃないかと睨んでいるそうだ」
チンピラの言葉にブルンガルドは大きくゴツゴツした手で顎を撫でた。
ブルンガルドは思案する。
この場をどう乗り切ったものかと。
この程度の人間なんぞ、文字通り吹けば消し飛ばすことは容易であると。
だがここで暴れれば教会の連中に目をつけられるだろう。
例の三人組の件もある以上、問題を起こすのは避けたい。
そう結論づけたブルンガルドは口を開く。
「オマエラノボスノモトマデアンナイシロ」
(お前らのボスのもとまで案内しろ)
「おっ、話が早くて助かる。明日の早朝、広場にある噴水の前に来い。人目につくところならお前も安心だろ?」
「ワカッタ。デハアスノソウチョウ二マタアオウ」
(わかった。では明日の早朝にまた会おう)
ブルンガルドは男たちに背を向けると歩き出した。
その後ろ姿が路地裏から見えなくなると、チンピラ風の男たちはほぼ同時に全員が腰を抜かした。
「ふ、ふぅぅぅううう……し、死ぬかと思ったぜ……」
「いくらボスからの命令とはいえ、あんなバケモン相手に出来るかっての……来なきゃよかった……」
「じゃあお前はボスの命令無視できるってのか?」
「……ボスの命令を聞いた方がマシだ。わかってんだろ……」
男たちはまるで傷を慰め合うようにその場で震え続けた。
◇
「たっだいまー!」
「おー、お帰り。どうだった?」
本当にハクアの作る夕食が出来上がるタイミングで帰ってきた。
「約束は取り付けたから。明日の朝に広場の噴水前に行くよー」
「……行くよー。じゃねえんだよ。何でそうなるんだ?」
「だるいから直接聞いた方が早いでしょ? だから明日会う約束を取り付けたんだって」
コイツに任せたのが間違いだった。
何も行動せず大人しくしているべきだったな。
「私とクロがいるのですから、万が一にも危険はありえませんよ。今日のメニューはシチューです」
「……ハァ。わかったよ。その代わりしっかり守ってもらうからな? あと米はあるか?」
こうなっては仕方がない。
約束を破っても後々面倒になりそうだし、ここはもう一度会って俺は何も知らないと思わせるしかない。
「米はありませんので、パンと一緒に食べてください」
「そうか……残念だ」
この話題は色々と意見が分かれるだろうが、俺はシチューをご飯にかけて食べる派だ。
生前の会社ではそんな話題が挙がり、しばらくの間米派とパン派で争ったことがある。
ハクアとクロエがどっち派かわからないが、好きに食べてもらうとしよう。
「シチューってお酒のつまみには向かないよねー」
「嫌なら食べなくていいわよ?」
「嘘嘘♡ ハーちゃんのシチューだぁい好き♡」
クロエの皿をハクアが奪おうとしたが、それよりも速くクロエが動いて皿を確保していた。
文句言わずに素直に食えばいいものを……うん、美味い。
俺はハクアのシチューを頬張りながら明日に控える面倒事に思いを馳せた。
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