表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/44

煙と共に消える山

 バールを構えるハクアは自信満々の表情を浮かべている。

 

 まあたしかにハクアなら何とか出来るだろう。

 

 でもなぁ、とても嫌な予感がする。


「どうするつもりだ?」

「そのゴーレムをぶん殴ります」


 殴って解決……できるんだろうなぁ。

 

 とりあえずゴーレムとやらを実際に見てから決めるとしよう。

 

 ハクアに頼るのはそれからでも遅くはない。

 

 俺はカールさんに洞窟の前に行くことを告げた。


「ええ!? まあ行くのは構いませんが……どうなさるおつもりですか?」

「実際にゴーレムとやらを見ておこうかと。嘘の可能性もありますし」

「なるほど……確かにちゃんと確認しておく必要はありますな」


 実際嘘の可能性はあると思っている。


 自分の目で確かめないことには他人の言うことなんて信用出来ない。


 特に商人という人間はな。


 街にいた時にお釣りを誤魔化す輩はそれなりにいた。


 コチラが計算できないとでも思っていたのだろう。


 実際、学のない人間でも冒険者になることは可能だ。


 文字が読めないのも普通にいる。


 そういう人間は四則演算なんて出来るはずがない。


 だから商人はそういう冒険者をカモにしたりする。


 釣銭を誤魔化された時は淡々と詰めたけどな。


 一度でも舐められたままだと、その後も舐められてしまう。


 なんか思い出したらムカついてきた。


 あの店主はもう少し脅しておけばよかったか?


 まあいいや。


 今はゴーレムとやらが優先だ。


 もしも嘘だったら……ハクアに木をへし折ってもらって脅すか。


 そんなことを考えているうちに、俺たちを乗せた馬車は目的地へ到着した。


「ヤシロさん。どうやら本当のようですな」

「ですね。しかし……デカイな」


 トンネルのある場所には道を塞ぐように人型の岩が体育座りをしていた。


 見事に人も通ることが出来ないくらいピッタリと塞いでいる。


 なるほど、これは邪魔だ。


 体が岩で出来ているから剣の類では倒せないのか。


 ツルハシかダイナマイトでもあれば話は別だろうな。


「では私の出番ですね」


 ハクアはそう言うと、バールを肩に担ぎゴーレムに近付く。


「いけるか?」

「余裕ですよ。見ててください——フッ!」


 ハクアがバールをゴーレム目掛けて振り抜くと、まるで砂糖菓子のようにバラバラに砕け散った。


「これで通れ……ませんね」

「なんだこりゃ……」


 入口を塞ぐゴーレムは確かに粉々に砕け散った。


 だがトンネルの中には別のゴーレムがこれまた体育座りでギチギチに詰まっている。


「——あー。これ向こう側までゴーレムがミッチリ詰まってるね。意味わかんないね。なんかの嫌がらせ?」

「……ここから向こう側まで何メートルあるかわかるか?」

「うーんと、大体500メートルくらいかな」


 バカなのか?


 なんでこのゴーレムたちはそんなバカな行動をしているんだ。


 それともそういう習性でもあるのか?


「もしや誰かが操っているのかもしれませんなぁ」

「魔物をですか?」

「ええ。ゴーレムは人工的に創り出すこともできますから、ですがこれは異常過ぎますよ」

「なるほど……二人もそう思うか?」

「いえ別に」

「土くれをいくら操れてもすごくはないからねぇ」

 

 天使の二人からすると、別に大した事ではないらしい。

 

 ならばいっそのこと任せてみることにした。


「ハクア。お前ならどうにか出来るか?」

「問題ありませんが……よろしいのですね?」

「——? ああ、よろしいぞ」

「わかりました。では離れていてください。クロ。主様に防壁を」

「ういよー」


 ……あれ、もしかしてまずい事を頼んでしまったか?


 嫌な予感がする。


 ハクアはトンネルの入り口で立ち止まり、バールを仕舞うと呪文を唱えた。


「《山食らう顎(やまくらうあぎと)》」


 ハクアが唱えた魔法。


 それは一言で表すのなら——天災だった。


 とつぜん地面に巨大な魔法陣が描かれると、黒く、不定形なナニカが目の前の山を一飲みにした。


 それはあまりにも大きく。


 俺の理解の範疇を超えていた。


 たった数秒の出来事で目の前のトンネルが掘られていた小さい山が消え去った。

 

 その光景を目の当たりにしたカールさんは静かに腰を抜かした。


 俺も無言でタバコに火をつけてしまった。


 現実を直視したくない。


 もう、何も視たくない……


 改めて思い知らされる。


 ハクアとクロエは人の領域を遥かに超えた存在に位置する生き物なのだと。

 

 目の前の山を消し去ったハクアは俺たちに向き直るとこう言った。


「どうです? 見事に解決してみせましたよ?」


 そう言いながら胸を張り、手の平を俺に差し出す。


 無言で《無限嗜好品供給むげんしこうひんきょうきゅう》を発動すると、新しいタバコを手渡した。


「……カールさん。申し訳ないのですが、他の商人に通れるようになったと伝えに行ってもらってもいいですか?」

「え? あ、わ、わかりました。夢……ではないのですね」

「俺のほうから言い聞かせておきます」


 カールさんは素早い動きで元来た道を馬車で駆け抜けていった。


 良かれと思って動いてくれたとはいえ、一応注意はしておくか。


「ハクア」

「はい、なんですか?」

「やり過ぎ」

「……? 何がですか?」

「山を、山を消すのはやり過ぎなんだよ……」


 俺がそう言うとハクアは首を傾げた。


 どうやら天使には理解出来ないようだ。


「ハーちゃんさ~。一応この世界の生態系とかは気にした方がいいよ? 生き物が死滅した土地なんて旅してもつまんないでしょ?」

「別に? この程度で死ぬ連中が悪いのよ。私が相手にした連中はこの程度じゃ死にはしないもの」

「うーん、そうだねー。じゃあ僕から言う事はないかなー。主様ー。僕には無理!!」


 珍しく自主的に倫理観が働いたクロエでも今回は駄目だった様だ。


 クロエには酒瓶を投げ渡して労っておく。

 

 とはいえ。


 実際に良かれと思って動いてくれたんだ。


 褒める必要はあれど、非難するわけにはいかない。

 

 俺はハクアの頭を撫でながらこう言った。


「ハクア。よくやったが、今後は何をするのか事前に言ってくれると助かる。次に期待しているからな?」

「……わかりました。次はもう少しうまくやりましょう」


 どうやら俺の言いたいことは伝わったらしい。


「生き物を対象外にした魔法を放てばいいのですね」

 

 なにも伝わっていなかった。


 とりあえず笑顔を浮かべながらハクアの頭を撫でた。


 

 

ノエ丸大先生が執筆している「異世界転移は草原スタート⁉」の初稿を倒したので投稿を再開します。

アルファポリス内にてお気に入り登録お願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いつの間にか主人公がだいぶ中世マインドに馴染んでるなあ って思うと馴染んだ精神でも耐えられない斜め上の事態を引き起こす天使s
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ