ヤンキー座りにはタバコが似合う
「いやー、まさかまたヤシロ殿が依頼を受けてくださるとは思いませんでしたよ」
「これも何かの縁と言うやつですかねー」
アイリーンの指示した商店は、俺がファーステッド家と接点を持つきっかけとなった人物だった。
ちなみに名前はカールというらしい。
軽い気持ちで有力者とのコネが作れないかとコンソメを渡したところ、まさか貴族と接点ができるとは思わなかった。
もっとも、その貴族が原因で街を出る羽目になったのだが……これに関しては仕方のないことだ。
一人の病に伏していた少女を救えた。それでいいじゃないか。
その後は軽い世間話も交えつつ、依頼の詳細な内容を聞き出す。
簡単にまとめると、隣街に商品を仕入れに行くので、その間の護衛をして欲しいというシンプルな内容だった。
その内容を聞き出すのに三十分もかかったのは、生前でもよく経験したいわゆるオッサンの無駄話というやつだ。
俺もそうだったが、歳をとると無駄話が多くなってしまうのは、異世界といえども共通することなのだろう。
「出発は明日の朝。でよろしいですかな?」
「ええ、大丈夫です。では失礼します」
ソファーでふんぞり返る二人を立たせ、店を後にした。
◇
打ち合わせも終わったので、食料やらの買い出しを済ませる。
念の為冒険者ギルドと宿屋には伝言を残しておくとして……あとやっておくことはなんだろうか。
…………特にないな。明日は早起きしなくちゃいけないから、今日は早めに寝るとしよう。
◇
「はい。では伝言承りました。ヤシロさんたちに用がある方は隣街のギルド経由で連絡いたしますね」
「ありがとう。面倒かけて申し訳ないな」
「いえいえ。ヤシロさんたちは街の周辺の強い魔物を一掃してくださいましたから、これくらい問題ないですよ」
「……強い魔物を一掃した覚えはないんだが」
「え? ヤシロさんの指示だと言って、ハクアさんが時々魔物を持ってきてましたよ?」
「へーそうなのかー。おい、ハクア」
俺が名前を呼ぶと、ハクアは口笛を吹きながら去っていった。
あのヤロウ……時々いなくなると思ったらこんなことしてやがったのか。
とはいえ、クロエのように人様に迷惑をかけてないだけマシ……か? 一応、魔物の数が減れば街への脅威は減るしな。
ため息を吐く俺を見て、アイリーンはクスリと笑う。
そんな俺の足下にいくつかの人影が押し寄せた。
「ヤシロさん! この街出ていくって本当ですか!?」
「え、まあそうだけど……」
「あの悪魔はどうなるんですか⁉」
「悪魔? …………ああ、クロエは一緒に連れてくが」
その瞬間、何故か冒険者ギルドが沸いた。
皆が口々に「よかった!」「もう苦しまなくていいんだ!」と歓喜の声をあげている。
そんな様子を目の当たりにした俺は意識を改めることにした。
クロエは野放しにしてはいけない――と。
その後は強面の冒険者から兄貴と呼ばれたり、ヤシロ様と崇められたりしながら冒険者ギルドを後にした。
「僕何も悪いことしてないよ?」
そんな言葉を悪びれもせずに発するクロエであった。
◇
夜が明け、陽が昇り始めた時間に商店の前へやってきた。
店の前には馬が二頭繋がれた馬車が停まっていた。
「おや、もう来たのですか。準備がまだ終わっていないので、少々お待ちください」
「そうなんですか。では待たせてもらいますね」
さすがに早く来すぎたようだ。
邪魔にならないように三人して隅っこに座る。
タバコを吸っているのが二人に、酒を飲んでいるのが一人。
……傍から見れば店の前でたむろしているヤンキーのような絵図らだな。
「何見てんだよー」
「絡むな馬鹿垂れが」
クロエがチラチラコチラを見ている通行人へ絡もうとするので止める。
「まるでチンピラですね」
「お前もその輪に入っているからな?」
ハクアが煙を吐きながら呆れるも、どうみても俺ら三人は一括りだ。
お前もチンピラの一人だということを自覚してほしい。
「ヤシロさん。準備が出来ましたので、出発しましょう」
「わかりました。ハクア、クロエ。行くぞ」
「承知しました」
「りょうか~い」
馬車の運転席的な場所へカールさんが座り、俺たちは馬車の荷台へと乗り込む。
馬車か……生まれて初めて乗るな。
元の世界では馬車なんて乗る機会がほとんどなかったので、ちょっと楽しみでもあった。
乗り心地は軽トラの荷台のようなものだろうか? それなら乗ったことがあるので、イメージはしやすい。
現代社会しか経験したことがないので、こういう中世の頃のような文化は新鮮味がある。
「では出発します」
そういってカールさんは手綱を操り、馬車を走らせた。
新章開幕!
さらばハジマリノマチー。
さらば12歳の魔性の女。




