偉大なる空に輝くアル中の星にして――
ついに10万文字超えたのでポイントとブックマークしていくように――みみみみみみみ。 byクロエ
「仲間からは私が確殺天使で、クロが絶滅天使と呼ばれていましたね」
「かくさつ……え、ぜつめつ? え?」
「――説明しよう!!」
困惑する俺を他所にクロエがシャッと視界を遮った。
「ハーちゃんは標的を確実に殺す事から確殺天使と呼ばれているのだ!」
「はいはい。クロはどんな手を使ってでも特定の種族を絶滅まで追い込むことからそう呼ばれておりますので、私よりも質が悪いです」
「ハアアアア⁉ 僕は命令で仕方なくやってるだけですぅー!」
「どっちもろくでもねえな……」
思った以上にろくでもない二つ名だった。
いや、ろくでもないというよりも、かなり物騒な部類だ。
標的を確実に殺すに、絶滅まで追い込む? コイツラやっぱり天使というよりかは悪魔かなんかだろ。
あの神(笑)はなんてもんを押し付けてくれたんだ。
あまりの二つ名に口を噤んでいると、クロエが口を開く。
「ハーちゃんはね、バカみたいに戦闘狂だからね。相手が死ぬまで戦い続けるんだよ〜だから敵を確実に殺す天使――確殺天使って呼ばれてるんだ~」
「貴女も確実に殺しましょうか?」
「Oh~fuck!(勘弁してほしいね!)」
「何でいきなり英語を……しかも罵倒してるし……」
「クロはバカですからね」
「バカって言うほうがバカなんです~やーいバーk――うおおおおおおおおおお! あっぶなあいっ!」
ハクアがクロエの顔面に放ったバールをクロエは寸前で回避。
あまりの風圧に俺の髪型がオールバックになってしまった。
サッと前髪を下ろし、告げる。
「それで、クロエの絶滅はどういう意味なんだ? どうせロクでもない理由だよな?」
「そうです。クロは時間を掛けてでもその種が滅びるまで粘着しますから……ひどいと最後の一匹を10年くらいネチネチと虐めますね」
「おっとそれは誤解ですぜ主様。僕が絶滅させた奴らはその世界で存在自体が害悪である奴らであって、仕方なく。そう、仕方なく上司である神様の命令に従って使命を全うしただけであって、僕の本意ではないのですよ。僕だって心が痛いよ? でも仕方ないんだよ。神様からの命令だから、僕に拒否権なんて存在しないんだよね。だから心を殺して使命を全うしていたわけですよ。まあ今まで好き放題してきた連中が痛い目に合うのを見るのはスカッとして気持ちよかったけどね? それはそれ、これはこれってことで、僕は持てる力を全て使ってその世界を壊しかねない種族を処理する使命を請け負っていたんですよ。どお? 僕ってとてもけなげで真面目な天使でしょ?」
「すっごい早口」
「クロを庇うつもりはないのですが、クロが滅ぼした連中は本来ならその世界では自然に生まれないような種ばかりです。存在そのものが悪であり、世界を本能のままに食い尽くす連中ですので、まあ一応その世界の救世主的な感じにはなります」
「なるほどね。つまり、二人は元々色んな世界を救うために働いてるって感じか?」
「その認識で大丈夫です」
「どやっ」
やっていることは物騒だが、一応世界を良くするために働いてはいたんだな。
標的を殺すのが仕事か……コイツら本当に天使か?
たしか悪魔の中にも元々天使だった奴もいたような気がする。
そう考えるとタバコや酒を好き放題嗜んでる時点で堕天してる気もするな。
「まあ絶滅と酔いどれなら、まだ酔いどれの方が愛嬌?があっていいんじゃないか。諦めてそっちを名乗ればいいと俺は思うぞ」
「え、普通にやだ。普通にやあーだああああああ!!」
「うるさっ……」
「黙らせましょうか?」
ハクアは大声を出すクロエに向かってバールを振る。
良いフォームだ。
そう思ったが、さすがにバールが当たってはタダではすまないだろうと思ったので、話を逸らすことにした。
「おふざけはこれくらいにして、明日の為に準備をするぞ」
「「準備?」」
「病み上がりの女の子に会うんだ、何かしら手土産が必要だとは思わないか?」
「僕は思わない」
「呪いを解いた我々が気にする必要はないと思いますが」
「…………」
俺は無言でドアを開けると言った。
「つべこべ言わずについて来い」
「「はーい」」
俺たち三人はお土産を見繕うべく街へ繰り出した。
◇
タバコと酒を与え大人しくなった二人を従え、お嬢様への土産物を物色する。
無難にお菓子とかがいいだろうか。それとも花束か?
色々な店を見て回ったが、コレといったものは見つからなかった。
「うーん。二人は何かいいの見つけられたか?」
正直60を超えたオッサンの俺には若い子の趣味が理解できない。
できないのなら、少なくとも性別が同じ二人に問い掛けるのが手っ取り早いってもんだ。
「そうですね……私は主様が与えるものならどんなものでも伏して拝むべきであると思います」
「呪いを解いてあげたのにお土産まで用意するのは優しすぎると思うな~」
コイツラに意見を求めた俺がバカだった。
とはいえ、一つ思い当たることがあるので聞いてみよう。
「ハクア。お前お菓子とか作れるか?」
「一応作れはしますが……なるほど、私に作れと仰るのですね」
「ああそうだ。悪いが頼めるか? 代わりと言っちゃなんだがお前の好きな銘柄を出すからさ」
「でしたら……あの娘の時に出した葉巻を頂けますか? 一度吸ってみたいと思っていたので」
「あれか。わかった用意しておくよ」
「僕には~?」
「お菓子が作れるなら支給するぞ」
俺がそう言うと、クロエは凄い顔をして先を歩いていった。
「主様。クロは酒のツマミになりそうな料理以外は全て黒焦げになるのでお勧めはしません」
「何でそうなるんだよ……」
「さあ? 私にも理解しかねます。それよりもさっさと材料を買って帰りましょう」
「わかったから腕を引っ張るなって――」
◇
お菓子の材料を買った帰り道、冒険者ギルドの前を通りかかった際にそれは起きた。
「お? やっと来たか〜遅いよ〜」
「勝手に消えるお前が悪い」
先程何処かへ消えたクロエが冒険者ギルドの入り口付近で待ち構えていた。
何やらニヤニヤしているし絶対なにか企んでるよな……
警戒しながら近寄ると――
ザッと男たちが現れ、声を揃えてこう言った。
「「「偉大なる空に輝く冒険者の星にしてクロエ様!!」」」
男たちは死んだような目で佇む。
その様子にハクアは盛大に溜息を吐く。
俺も少し眩暈がしてきた。
「これがロビー活動の成果で、僕の新しい二つ名さっ!!」
クロエの頭を掴んで無理矢理頭を下げさせながら言った。
「うちのバカが迷惑をかけて本当に申し訳ない。今後はこのような事は二度とさせないように徹底的に指導いたしますのでどうかお許しください」
「な、何で僕が悪いみたいに――」
「もしこのバカがまた何かしてくるようなら遠慮なく言ってくれて構わないので――お前も文句言ってないで謝れ」
「謝らない! 謝らないぞおおおお!!」
「――禁酒」
ボソッと俺がそう言うと、クロエが動きを止め。
「すいませんでしたあー」
素直に謝ってくれた。
ハクアは俺とクロエから距離を取って知らん顔をしている。
さすがに関わりたくないのだろう。
俺だってこんなことに付き合いたくないが、やらかしてしまった以上は対応するしかない。
別の世界に来てまで人の尻ぬぐいをする羽目になるとは……
クロエの頭から手を離し、言った。
「ほら、もう宿に帰るぞ……頼むから問題を起こさないでくれよ」
「私の評判も悪くなるのだから気をつけなさいよ」
「なにさなにさ二人して、まるで僕が悪いみたいじゃーん」
「そうだ」「そうよ」
「チィッ!! みみみみみみ~」
クロエが怪光線を男たちに浴びせると、目に光が宿った。
「…………あー、君たちは悪い夢を見ていたんだ。今後はそんな夢を見る事はないので安心してほしい。はい、解散!」
手をパンパン叩き、男たちを冒険者ギルドの中へ行くように促す。
ただ買い物に出ただけなのに疲れることをさせないでほしい。
今後はクロエを単体で外に出すのはやめた方がいいか?
俺が止めたところで勝手に抜け出すだろうし……宿に帰ったら釘をさしておくしかないか。
ハクアにクロエを担ぐよう指示をし、再度宿屋を目指すことにした。
◆
ヤシロたちが冒険者ギルドの前から立ち去り、少しの時間が経った頃。
一人の男がボソリと呟いた。
「ヤシロさん……」
「ああ、あの災害を制御できる存在だ」
「俺らの――希望。だな」
冒険者たちのヤシロに対する評価が上がった瞬間であった。
ハクアが本気で戦う時は「深淵歩き」のような構えになります。
クロエはブライアンホークのようにフリースタイルで舐め腐った態度で戦います。
ハクアとクロエの二人が本気で戦うことになった際は、クロエが自身をフル強化したあとハクアにデバフを大量にかけてようやく身体能力が対等になります。
そのさい攻撃魔法と回復魔法が使えるハクアの方が少しだけクロエよりも強くなりますが、クロエが死ぬ気で策を練るので最終的に五分五分になります。そんな感じのパワーバランス。




