寝起きは最初にタバコを手に取るよね
カスサイドへ戻ります。
窓から差し込む日差しを顔に受け、自然と目が覚めた。
いつも通り目覚まし時計がなくても目が覚めるのは、前世からの習慣でもあり悲しい性でもある。
俺は二つの癌を患って一度死んだ身ではあるが、なんの冗談か再び新たな命を手に入れた。
しかも現代日本ではなく、この異世界という場所でだ。
神を名乗るふざけた存在に、《無限嗜好品供給》という嗜好品を文字通り無限に出せる力を授かった。
物理法則や質量保存の法則なんかを完全に無視しているこのスキル?というやつは、ハッキリ言ってこの世界を壊しかねん。
こんな力を一般人である俺にタダで渡すなんて、何を考えているのやら……
今のこの状況も、神とやらの思惑通りなのかもしれないな。
「――おはよう二人とも」
俺がそう声をかけたのは、この世界に一緒に来ることになった二人の天使。
名をハクアとクロエ。
ハクアは腰まである長い銀髪が特徴的な高身長の美女で、クロエは長めのウルフカットに黒髪の美少女といった感じだ。
クール系とカワイイ系とそれぞれが対極にいるようなこの二人。
共通している点は、どちらも思わず振り返ってしまうほどの美貌をしている。
ちなみにメイクの類はしないそうだ。
天使だからこその美貌なのかもしれないが、二人いわく自分たちは特に美しいと胸を張っていた。
まあ……普段の二人の行いを見ている俺としては怪しく思うが、おそらく本当なのだろう。
そんな二人は俺より先に起きて朝食の準備をしていた。
「おはようございます。朝食の用意をしていますので、先に顔を洗ってきてください」
「おは〜、僕と一緒にいこ~」
「はいはい」
クロエと共に宿屋の一階にある水飲み場へと向かった。
◇
顔も洗い、部屋に戻ってきたタイミングで客が訪れた。
「ヤシロ様。おはようございます」
「ああ、おはよう。今日も報告か?」
やって来たのはこの街を治めるファーステッド家の執事であるエドガーだった。
ファーステッド家の一人娘の呪いを解呪してから数日が経っているとはいえ、毎日のようにエドガーが娘の経過報告をしに来る。
俺としては後ろ盾になってくれるのならこれ以上かかわる気はないのだが、向こうから来られては無下にするわけにはいかない。
毎日娘の食べた食事のメニューを嬉々として話すエドガーの姿は、本当に大切に思っていたのだと思わせるには十分だった。
だからといって毎日来られても困る。
なので俺はエドガーに告げた。
「そろそろ毎日報告に来なくてもいいと思うぞ?」
「何をおっしゃいます。貴方様方はお嬢様の命の恩人なのですから、お嬢様の様子は逐一報告いたしますとも」
「はいはい。主様が困ってるんだからさ~、出て行きなって。ほら、しっ、しっ」
「……むう。わかりました。では明日また参りますので、今日はこれにて失礼いたします」
「いやもう来なくていいぞ」
俺がそう言っても、エドガーは「ハッハッハッ」と笑いながら去って行った。
「また明日も来そうだな……」
「消しとこうか~?」
「やめときなさい。次からは部屋の中に入れるな」
「ハッハッハッ〜、仰せのままに〜」
コイツわざとやってるな……?
《無限嗜好品供給》からノンアルコールの缶を取り出して放り投げる。
「おっと。危ない」
すぐさまクロエはカシュッとプルタブを開けるとグイッと飲みだした。
「――って、これアルコール入ってないヤツじゃん!!!!」
「騙される方が悪い。今日は禁酒でもしてろ酒カス天使」
「何ケンカしてるんですか、朝食の用意が出来ましたよ。それと私は今セブンスターな気分です」
無言でセブンスターを取り出しハクアに手渡す。
ハクアは片手で器用に封を開けると、フライパンを片手にタバコを吸いだした。
魔法でタバコの灰が食事に混入しないとはいえ、料理中は吸うのを止めてもらいたいところだ。
テーブルにハクア特製の朝食が並べらていく。
魔物の肉で作ったカリカリのベーコンに、鳥型の魔物の卵を使ったオムレツ。
パンは市販品だが、ハクアがこの街で厳選した一番おいしい店のやつだ。
オムレツには少しの肉と野菜が詰まっていて食べ応えも抜群の逸品になっている。
正直このヤニカスがここまで料理が上手いのは納得がいかない。
納得はいかないが、その腕前を貶す理由にはならない。
実際味は絶品だ。ほんと、何か悔しい。
クロエと共に朝食をムシャムシャ食べていると、ハクアが口を開いた。
「主様。今日はどうされますか?」
ふむ……今日か、なにしよ。
正直ギルドの依頼を受けてもいいが、金は十分にある。
ファーステッド家の娘を治療した代金を後日たんまり頂いたので懐は温かい。
なので無理して働く必要はないわけだ。
「今日は街を各自ブラブラするって感じでどうだ?」
「まあ、主様がそうおっしゃるのなら」
「僕もいいよ~。今日は部屋でゆっくりしてたいし~」
そんなわけで、今日一日は各々自由に過ごすことになった。
◇
……さて。俺は今、街のとある場所へ来ていた。
それは街の一角にある歓楽街。
ようはそういう店が多く建ち並んでいる区域だ。
死ぬ前ならいざ知れず、今の俺は二十歳の頃の自分だ。
若いだけあってそれなりに持て余したりもする。
あの二人が常にそばにいるので、処理もかなり気を使う日々だ。
そんなわけで、まだ真昼間だというのに、布地の薄い女性たちが多く軒先に佇んでいるこの通りへとやってきていた。
異世界ならではというべきか、人間以外の種族の女性もそれなりに見かける。好奇心がないと言えば嘘になるが、俺にはまだ早いだろう。
俺が酒場で入手したこの世界のそういう店は、軒先の女性と金額の交渉をしたあとに宿屋に行くというものが多いそうだ。
宿屋に行ってナニをするかはわからないが、恐らく部屋に入った瞬間に一目ぼれして恋人関係になる的な建前が発生するのだろう。
そんなわけで、一番ビビッときた女性に声をかけようとした。
「主様。こんなところで奇遇ですね」
体がビクーンッと跳ね上がるも、俺は努めて冷静に対応した。
「お、おお?? ハクアか、どうしたあ↑? こんな場所に用事でもあるのか? 俺はたまたま通りがかっただけだからコレといった用事はないぞ?」
「そうですか。娼婦のような姿の女たちが多くいるのでそういう場所かと思いましたが、主様には関係がないようですね」
「そう、だな……いやー実は図書館を目指していてな、どうやら道に迷ってここにたどり着いたみたいなんだよ。ははは……」
「そうなんですね。図書館の場所は私が把握していますので案内いたします。コチラへどうぞ」
「………………………………ありがとう!」
俺は行きたくもない図書館へと向かった。
なんか区切りいい感じなので、少しだけ振り返りっぽい感じに。
区切りいいんで、ブックマークとポイントください(直球




