自分から禁酒を宣言するのはどう考えても異常だ
部屋でハクアと共にクロエの帰りを待っていると――
「たっだいまー」
10分程で戻って来た。
犯人を自首させるにしても、行って戻って来るまでが速すぎる
本当に行ってきたのか? そう思ったので確認しておく。
「随分と早かったな。ちゃんと犯人は見つかったのか?」
「あー、それがねー」
珍しくクロエはバツの悪そうな態度をとっている。
コイツがこんな感じになるのは本当に珍しい。というか初めて見た気がする。
な、なんだ? 何を考えているんだコイツは……
俺はベッドから身を起こして身構える。
するとクロエは頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。
「いや~。逃げられちゃったみたい」
………………は? おいおいおいおいマジかよ。
あの飲んだくれていても仕事はちゃんとこなすクロエが失敗した?
チラリとハクアを見ると、目を見開いて驚いている様子だ。
あっ、ハクアからしてもかなり予想外なのか……まあ逃がしたものはしょうがない。
どちらにしろ俺らが解決する問題じゃないんだし。
「クロエ」
「……なに?」
「ご苦労様。ほれ、コレ飲んで休んでろ」
「…………僕。失敗したんだよ?」
「だからなんだ。元々俺らが関与する問題じゃないんだ。成功しようが失敗しようがどちらでもいいんだよ。気にするな」
珍しくシュンとしているクロエを見れただけでも収穫があったと思おう。
俺にそんな趣味はないが……珍しいものが見られた。それでいいじゃないか。
ハクアが目に見えて驚いてる姿も見れたしな。
「お前は普段からそれなりに働いてくれているからな。一度や二度の失敗でどうこうする気はないさ」
「……ふーん? なら別に落ち込む必要もないよね~。もっとお酒ちょうだい!!」
「ハッハッハ。調子に乗るな」
◇
夜になり、ヤシロが寝息をたて始めた頃。
ハクアは吸っていたタバコの煙をヤシロに向けて吹きかけた。
「あれ、どうしたの? 主様に結界なんてして」
「消音の結界よ。聞かれたくない話をするから一応ね」
「ふーん。何の話? 性癖の話?」
「ぶち殺すわよ……クロ。隠していることを話しなさい」
ハクアがタバコの火を消すと、真っ直ぐクロエを見据えそう言った。
そんなハクアの様子を見たクロエは、新しい缶を開け。一口飲み込む。
「――ふう。何の話?」
「クロエ」
「ああもうわかったって。怒らないでよ」
クロエは観念したように、ハクアに話を始めた。
「主様に犯人を取り逃がしたってのは嘘で~す。ちゃんと確保してるよ。この後領主の所に行って引き渡すつもりだったし……」
「なら何で嘘をついたの?」
「えー? うー、主様に余計なストレス掛けたくなかったしー。自分の指示で一人の人間が酷い目に合うなんて主様からしたら寝覚め悪いでしょ? だからだよ」
「ふーん……なるほど。クロ、主様はそれも承知で貴方に指示したのよ。私たちが思っている以上に肝は座っているお方よ」
ハクアの言葉にクロエは缶をペコペコ潰しながら答えた。
「僕もそれくらいはわかってるよ~だ。たださ~人間って変な所で繊細だったりしてすぐ壊れるじゃん? だから少し気を使っただけです~だ」
「はいはい。それで、犯人は今どうしているの?」
「隠れ家にいるよ。その場から動かない様に催眠かけておいたから」
「そう――じゃあ行きましょうか」
「どこへ?」
「領主の所よ。さっさと終わらせて、寝ましょ」
「うい~っす了解っす~」
ハクアは新しいタバコに火をつけると、ヤシロへ向かって煙を吹きかけた。
その様子に、クロエは首を傾げる。
「何で追加の結界付与してんの?」
「念の為よ。念の為――ね」
「アハハハハハ! ハーちゃんの方がよっぽど過保護じゃんwwww」
そのまま二人は窓から部屋の外へと飛び出していった。
◇
ファーステッド家の執務室に二人の男が向かい合って座っていた。
低いテーブルを挟む様に向かい合って置かれたソファー。
片方は領主である、マルコス・フォン・ファーステッド・ハジマリノマチー。
そして向かい合って座っているのは、ファーステッド家の筆頭執事であるエドガー。
その二人がグラスを片手に一息ついていた。
「――ああ。久方ぶりの酒は美味いな。エドガー」
「ええ。まったくですな。旦那様もお嬢様がご病気になられた時から飲んでいませんでしたからね」
「まあな……あの子が苦しんでいる姿を見て、酒で逃避するなんて考えは浮かばなくてな」
「ですが、奇跡が起きましたな。まさかあのような方に巡り合うとは……奇跡以外のなにものでもありません」
「全くだ。彼らには感謝してもしきれない」
マルコスとエドガー。
二人は幼少期より共に過ごし、互いに唯一無二の存在となっていた。
そんな長年連れ添った二人の間に流れる空気に、水を差す様に声を発する人物が現れた。
「あー、浸ってるところ悪いけどちょっといい?」
二人は突然聞こえてきた声の方角に顔を向ける。
その人物はいつの間にか窓際に佇んでいた。
「やっほ~。お昼ぶり~」
月明りを背にし、怪しく光る黄金の瞳がギラリと二人を見据える女は、昼間に我が家へ来た三人の内の一人。
口調こそ軽いが、異様そのもの。
なぜこの時間にこの場所にいるのか、マルコスとエドガーは理解できなかった。
「お? なになに~、美味しそうなの飲んでるね~、僕にもちょうだい?」
目の前の女は両手を合わせると、首と一緒に可愛らしく横へ倒した。
ニコニコと笑う女の様子に、マルコスとエドガーの背中に冷たいものが垂れた。
あまりにも理解出来ぬ光景。
なぜこの女がここにいる。
なぜこの部屋に入って来れた。
なぜ、なぜ……
その言葉だけが頭の中を駆け巡る。
だがマルコスはすぐに持ち直した。
それは街を治める貴族としての経験か、はたまた本人の胆力か。
実際の所はわからないが、目の前の女を前にして自身の弱みを見せるつもりはなかった。
すると女は言った。
「今回の犯人を捕まえたから好きにしていいよ」
その言葉に二人は女を視界に捉えたまま首を傾げた。
犯人? 犯人とは一体……この女は何を言っているんだ? それが二人の素直な感想だった。
すると――
「クロ。もうちょっとちゃんと説明しなさい」
背後から新たな女の声が聞こえてきた。
二人は困惑しつつも、窓際の女から目を逸らすことができなかった。
その女の声は昼間の女で間違いない。
まただ。
また、なぜ。この部屋にいる? 扉が開いた音も、人が部屋に入って来る気配もしなかった。
それでいえば、窓が開いた音も聞こえなかった。
いくら酒を飲んでいたとはいえ窓や扉が開き、人が入って来るのなら気づくものだ。
すぐ後ろから足音が聞こえてくると、視界の端を通った女が窓際へ近づき、二人の女が並び立つ。
月の明かりを浴びた黒と白。
だがその両の瞳は黄金と真紅に輝き自分たちを射殺さんとばかりに見据える
「な、なにが目的だ――」
マルコスは絞り出すように声を出した。
その言葉に目の前の二人の女は互いに顔を見合わせると、笑った。
「アハハハハハ! 何言ってんのさ~。僕たちは善意でここにいるんだよ?」
「フフフフ。そうね。でも貴方たちはあまり理解していないようだから教えてあげるわね」
片方の女がそう言うと少し間を開けて告げた。
「貴方の娘を苦しめていたのは病気ではなく呪いよ。それもたちの悪いタイプのね」
「そうそう。それを主様が解呪してくれたんだから感謝してね!」
「貴女は少し黙ってなさい……娘に呪いをかけた人物がいる場所を教えるから、後はそちらで好きにしなさい」
そう言って女は紙を一枚放り投げた。
「私たちからはそれだけよ。ああそうだ。このことは主様に話さないように」
「僕たちも主様には平穏に過ごしてほしいからさ~、余計な心配事はしてほしくないんだよね~。わかるよね?」
ビリビリと空気が震えるのを感じた。
この二人の言っていることを無視する様なら、自分たちの命はない。
そう思える空気が漂っていた。
そんな中、エドガーが地面に落ちた紙を拾い上げると中身を確認した。
「旦那、様。私は屋敷の精鋭を連れて、このネズミを捕らえて参ります」
「…………わかった。許可しよう。行け。この場の対応は俺が引き受ける」
エドガーは領主に一礼し、部屋を出た。
「さて……お二方。椅子が空いた。座られてはどうかな?」
マルコスはエドガーの座っていたソファーを指差すと、自身もその場に腰掛けた。
「いえ。私たちはもう帰るわ。行くわよクロ」
「はいはい~。あっ。ちょっと待って」
そう言うと女の一人が近付き――酒瓶を手に取った。
「これは貰っていくね~。ばいば~い」
そのまま二人の女は窓を開けると、外の闇に消えていった。
侵入者の去った部屋で、マルコスは一人。深い息を漏らした。
「ふうぅぅぅ。恐ろしいな。あんな従者を従えていたとは……」
酒の入ったコップを一息で飲み干すも、先ほどまで感じていた味が一切しなかった。
「――フ、フハハハハハ。もしかしたら俺は恐ろしい存在の力を借りたのかもしれないな……」
そう独り言を零し、エドガーの分も一気に飲み干した。
クロエ必殺技一覧
クロエスーパー酒瓶殴り:相手は死ぬ
クロエハイパー酒瓶投げ:相手は死ぬ
クロエウルトラボイス:周囲の鼓膜が死ぬ
催眠幻覚洗脳合成魔法:相手を奴隷に出来る
スーパーウルトラアルティメットゴージャスポセイドンリバース:汚い
そろそろネトコン14の締め切りなので、ここまで読んだ方には☆を置いていって星い!(爆笑ギャグ




