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一時間も禁煙が続かない

 

 領主に招かれた部屋はどうやら執務室のようだった。

 その部屋の中央に置かれているソファーに座るよう促され、俺が腰を下ろすとハクアはソファーの後ろへ立ち。

 クロエは俺の隣に腰掛けた瞬間に、ハクアが頭にチョップを落とす。


「イテッ!!」

「アンタも後ろに立ちなさい」

「はいはいわかりましたよ~だ」


 クロエがソファーの後ろへ移動するのを確認し、口を開く。


「ゴホン。それで、報酬について……ですよね?」

「ああそうだ。だがその前にもう一度礼を言わせてくれ。娘を救ってくれて本当に感謝している。私にできることなら何でもするつもりだ。報酬も君たちが満足する額を用意しよう」

「ん? 今何でもするって――痛い!」


 口を挟むクロエの脇腹をハクアがどついた。


 やれやれ、サッサと終わらせたほうがいいな。


 俺は事前に決めていた報酬を口にする。


「報酬についてですが……我々の後ろ盾になってもらいたい」

「後ろ盾? いや、私としてもだ。君たちに害が及ばない様に手を回すつもりでいる。それ以外の要求はないのか?」

「そうですね……今のところはありませんね。ハッキリ言って今回の件は本当に偶然の出来事でしたので、自分としてもこの街で安全を保障してもらう以上のものは思いつかないんです」


 正直な話。金はそれなりにある。

 ハクアとクロエがバカみたいに魔物を狩るので、素材を売った金がかなり手元にある。

 そんな二人の維持費も、俺のスキルを使えばタダで手に入る。

 身の危険に関しても二人の内のどちらかが常に側にいるので問題ない。

 問題があるとすれば……コイツらが起こした問題の後処理だ。


 この二人は基本的に絡まれると、男女問わず誰が相手でも返り討ちにする。

 殺しはしないがハクアは腕と足の一本は確実に圧し折るし、クロエはそれに加えて謎の虹色の光を浴びせて手下にしている節がある。

 憲兵に何度事情を説明したことか……幸いにも目撃者がいるので、今の所お咎めはない。

 今後もそうであるとは限らないので、街一番の権力者の後ろ盾が一早くほしい。


 なので今回の件は渡りに船。

 死にそうな女の子を救えて俺も寝覚めがいいし、領主も娘が元気になってお互いWin-Winだ。

 そんなわけで金に関しては後日でもいい。

 今は俺たちが領主の娘を救った恩人であるということが周囲に知れ渡ればそれでいい。


 俺の要求に対して領主は押し黙る。


 まあ、わかる。貴重な世界樹の葉?を使ったんだ。

 そんな貴重な品を使っておいて、要求が金銭ではなく後ろ盾なのだから。

 俺でも怪しむ。どんな裏があるのかを考え、予想し、対策を練るだろう。

 まあ今回はいくら怪しもうと無意味なんだけどな。だってこの後ろの二人がやらかす事をもみ消したいだけだし。


 沈黙を続ける領主に対してエドガーが何かを耳打ちした。


 うーん。さすがに聞こえんな。


 エドガーの耳打ち後、すぐに領主は口を開いた。


「わかった。君たちがこの街にいる間の後ろ盾になると約束しよう。それとは別に、金銭も支払わせてほしい。これは私の誠意であり、君に引いてもらわねばならぬ一線だ。理解してくれ」

「…………わかりました。ではそれについては後日ということでよろしいでしょうか? 早く娘さんの所にも行きたいでしょうし」

「私としてもそうしたいが、いいのかね?」

「ええ。もしも貴方が約束を反故にするのなら、後ろの二人が俺の言うことを聞かなくなるだけですし。第一、大事な娘さんの命の恩人を粗雑に扱いはしないと、俺は信じています」

「そうか――わかった。君の気遣いを無駄にするわけにはいかないようだな。エドガー。この方々を宿へお送りしなさい。それが終わり次第、この三人のことを知らせて回れ。いいな?」

「かしこまりました。ではこちらへどうぞ――」


 俺は立ち上がると、領主へ軽く頭を下げエドガーの後に続いた。


 ◇


 エドガーの案内の元、馬車に乗り込んだ俺は盛大に溜息を漏らした。


「はぁぁぁぁ~~疲れたぁ~~~」

「お疲れ様です主様。さあここは一服して気分転換などされてはいかがですか? 私は重めの銘柄がいいですね」

「僕はレモン味のチューハイ系がいいな~」

「あーはいはい。ちゃんと役に立っていたからな。ほれ」


 俺は《無限嗜好品供給むげんしこうひんきょうきゅう》を発動して、二人が求める種類のものを取り出し放り投げる。

 二人は「わーい」と言ってキャッチし、さっそく嗜好品を楽しみだした。

 そんな二人を見て自分のタバコに火をつける。


 ふー。何とか後ろ盾は手に入った。後は金銭に関してだが……これは素直に受け取るのがいいだろうな。

 下手に貸し借りを作って揉めるより、金銭のやり取りで関係を対等に持っていくのがいいだろう。

 ああいう相手は自分よりも下の人間に恩を残すのを嫌うだろうし、かといって恩を盾に色々と要求しようものならすぐさま敵になりかねん。

 ここ等が落としどころだな。


 俺はタバコの煙を吐きながらそう結論づけた――直後に窓の外に投げ出される見知った缶が飛んでいく。


「おいクロエェ! 飲んだ缶を窓から捨てんじゃねえ! ハクア! お前も吸殻をポイ捨てするな!」

「「はーい」」


 ◇


 宿に到着した俺たちにエドガーが頭を下げた。


「お嬢様を治療して頂きありがとうございます。赤ん坊の頃よりお世話をしていた身としては貴方様方へいくらお礼を言っても足りません」

「ああいいですよ。コチラも後ろ盾に加えて金も手に入るんですから。それでこの話は終わりですよ」

「そうだとしてもです。本当に、本当にありがとうございました」


 エドガーのお辞儀は何とも気持ちのいいものだった。


 ここまで立派なお辞儀を見たのは俺の記憶の中でも数度しかない気がする。

 執事か……うーん。侮れんな。秘書とは別次元の作法を感じるな。


 俺はエドガーに礼はもう必要ないと一言告げ、宿の自分の部屋へと向かった。



 部屋についた俺はすぐにベッドへ横たわる。

 正直疲れたからだ。

 慣れないことはするもんじゃないな。そう思った。

 ベッドの上でゴロゴロしながらクロエに問い掛けた。


「クロエ。逃げた奴は追えるか?」

「ん~? 一応ね。追うの?」

「……因みなんだが、本当にそいつが怪しいのか? ただ単に屋敷から慌てて飛び出しただけの人間じゃないのか?」

「それはないよ。前からマークしてた奴だし。あの子の呪いの元となる魔道具の気配がソイツからしたし」

「そうか。はぁ……どうするかな。領主にこの事を伝えても俺らが怪しまれる可能性があるよな」

「ご命令とあれば即座に消しますが」


 ハクアが物騒な提案をしてきた。

 物騒だが……今回の件に関しては因果応報というやつだ。

 呪いをかけた人物がその後どうなるかなんて俺の知ったことじゃない。

 ハクアに任せるか? いや、やめておこう。そうなると手は一つだ。


「クロエ。お前洗脳的なの使えるよな?」

「使えるよ~」

「それで犯人を自首出来たりするか?」

「出来るけどさ~主様、結構えぐいこと言うね。ようは洗脳して自分の罪を認めろって言ってんだよ?」

「そいつがやったと確定しているのなら……まあ、仕方ない。今回は許可しよう」


 俺の言葉にハクアとクロエが見合わせる。


 そんなに変なこと言ったか?


「いいよ、オッケー! その代わり良いお酒用意しておいてね!! ってなわけで行ってきま~す」


 そう言うとクロエは窓を開けて飛び出していった。


 大丈夫……だよな? 自分で指示したとはいえ不安でしかない。


 俺は一抹の不安を覚えながらもそのことを考えないようにした。

ハクア必殺技一覧

ハクア全力パンチ:相手は死ぬ

ハクア全力キック:相手は死ぬ

バールで殴る:相手は粉々になって死ぬ

各属性最強魔法同時に全ブッパ:数キロにわたり更地にする。相手は死ぬ

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