42話 はぐれのエルネ
「エルネ=グレイヴスターはどこにいる?」
鬼一が店員に尋ねる。
「なるほど、冥海の光のエルネね。ほらそこのカウンターにいるよ」
店員が目で誘導する先。
ギルドの酒場のカウンターに一人、ぽつんと飲み物を煽っている姿があった。
「よぅ、エルネ」
「あら、鬼一。何かしら?」
杯を弄ぶようにゆらゆらと揺らし、背を向けたままエルネは答える。
(相変わらずのふてぶてしさだな。安藤を思い出すぜ)
若干の苛つきを感じつつ、隣の席につく。
「俺のパーティのティナが耳に入れておいて欲しい事があるって言っててな」
「······あんた、私の噂、知ってるんでしょ?」
「·····ああ」
「あんたも蔑んでるの?この私を」
眉間に皺を寄せるエルネに答える鬼一。
(直球に聞いてきたな)
「俺も、あいつも別に蔑んではないぜ。まぁ学院の規則が厳しかったっていう事もあるんじゃないか?俺がアンタを探してたのも別にティナが蔑んでるんじゃないってのを伝えたかっただけだ」
「·········ハァ。······知ってるわよ、それくらい」
ため息をつき、頭を抱えるエルネ。
以外な答えに少し鬼一が戸惑う。
「知ってるって、どういう事だ?」
「あの子、わかりやすいのよね。それなりに言葉にしなくっても態度に出てるっていうか、何となく察するのよ」
「あー、なるほど」
(そんなに分かりやすいのか。俺自体があまりティナとの絡みが無いからか、それとも俺が朴念仁という可能性があり、か)
「そんな事よりも、貴方も何かたのんだら?ほら、酒とかあるわ」
色々と忘れるのにうってつけよ、と付け加える。
「いや、明日から裏ダンジョン攻略だからな。酔ってもられんよ」
「あら、意外とマジメなのね。そんなに肩ひじ張ってたらいつか壊れちゃうわ」
からかうような声色で話しかけてくるエルネに目もくれず、シードルを注文する鬼一。
「忠告感謝する」
「話は変わるけど、あんた魔力の質は紫って本当?」
その言葉を受けて、暫く間をおいてから話す。
「本当だぞ」
「じゃあ、魔力の量が三回分しかないって本当?」
「それも本当だ」
「おっかしいわねぇ」
「何がだ」
「私だって魔術学院の端くれ。魔力の質と量の関係性について少しは詳しいわ」
「どういう事だ?」
「あんたの魔力の質に比べて量が少ないっていうのは珍しいケースだってことよ」
「なるほど、どうしてだ?」
「知っての通り、私の魔力質は青、量は多め。私のように魔力の質も高ければ量も多いって事になるパターンが基本。逆に魔力の質が低ければ量も少ないって事にもなる。魔導師ノクスが発見したこの法則は、ノクスの法則と呼ばれているわ。でも貴方はこの法則には当てはまらないイレギュラーな存在でもあるの」
「イレギュラー、ねぇ」
「続けるわね。ノクスはあんたみたいな存在について調べた結果、何らかの力で魔力自体が無くなっている可能性が高いとしていたわ。元々は法則に当てはまっていたけれど、何らかの原因で魔力が体外へ流出、結果いつも使える量が限られているって訳」
その説明を聞きながら、注文したシードルを飲む。
魔力の質は俺の一つ下らしい。
「なるほど。自覚して無い魔力の浪費があるというわけか」
「心当たりは無いの?」
「無い。基本的に三発しか使えないからおいそれとは使えないからな」
「ノクスは魂に結びついた存在の維持の為に魔力が使われているかもしれないとも」
魂に結びついた存在、その維持の為の魔力の流出。
一つ、鬼一には心当たりがあった。
自身の能力である。
今ここで言うべきか、と悩む。
「その顔、何か心当たりがあるみたいじゃない?」
見透かされているか。
「実は俺は能力者でな。それと関係があるかもしれない」




