39話 裏ダンジョン再び 上
「勿論そのつもりです。初心者にも関わらずワイバーンを容易く仕留めたあなた達ならば、というギルド長からのお墨付きですが」
鬼一たちは以前ディノコッコの依頼の途中で、ワイバーンに襲われた。
ワイバーンは本来では、初心者の冒険者は到底太刀打ち出来ない存在だ。
だが鬼一たちは違う、能力を使い迎撃した事でその力を高くギルド長に買われたようだ。
(なるほど。裏ダンジョンから少ない物資で攻略、ワイバーンの件も加味してくれているのか)
高給で雇ってもくれる、今回は十分な補給も受けられる。
過去の過酷な環境下での探索とは大違いだ。
これは飲まない手はない、と鬼一は腹の中でほくそ笑む。
だが、鬼一の中でふと嫌な予感が芽生えた。
何故こんな好待遇で迎えられるのか、と言うそんな疑問である。
(まさか俺たちを使い潰すつもりじゃないだろうな)
魔王の幹部に生贄として差し出された経験がある鬼一は、そういった思考に寄りがちになってしまった。
あの日以来、信頼している者以外からの頼みを聞くとなると時々疑心暗鬼に陥ってしまう。
しかし、と鬼一の心理が考え直す。
(このまま他の依頼ばかりを受けるのもギルドに良い顔が出来ない。ギルド直々の依頼を断れば、依頼の斡旋もしてもらえなくなる可能性がある)
損得勘定をした結果、鬼一は答えを出した。
「他のパーティの加入や補給路が断たれる心配はありますか」
一人でありもしない事を考えるよりも、まず聞いてみる事にしたのだ。
「そうですね。他の腕利きのパーティも二組ほど呼びかけております。補給路に関しても恐らく大丈夫かと。アルカのダンジョンは既に管理下にありますのでそこからの補給が断たれる事はあり得ません」
言質は取ったな、と鬼一が心のなかで呟く。
「ご説明いただきありがとうございます。ギルドからの依頼、お受けまいたしましょう」
リィンがニコリと笑顔を作って応える。
「受注いただきありがとうございます。ご要件は以上です」
鬼一は数枚の依頼内容の書かれた羊皮紙を持って退出する。
(渡された資料に裏ダンジョン攻略に参加する別のパーティの情報も載っているのか。どれどれ)
羊皮紙には二組のパーティの簡単なメンバーが書かれている。
一つは銀級パーティ「白銀の翼」。
男女の五人で編成された、かなりの大物。
編成を見るに前衛後衛にバランスが良くメンバーが揃っている。
他のダンジョンでは名を馳せていたらしい。
もう一つは青銅級パーティ「冥海の光」。
こちらは魔術師を中心とした、最近成り上がってきた者たち。
メンバーは計六人。
基本的に後衛で固められているが、魔術によるその殲滅力は計り知れない。
ちなみに鬼一たちは未だに昇格の連絡は来ていない、鉄等級のままだ。
羊皮紙に書かれた内容によると「冥海の光」のメンバーと一次的に大規模なパーティを組む予定となっている。
(なるほど。遠距離に特化したパーティに俺たちを組み込む事でバランスを保とうと言う訳か。構成は俺達が先鋒、「白銀の翼」、「冥海の光」といった感じか)
先頭に鬼一たちが配置された理由は、裏ダンジョンの知識がある為、先導を頼まれているからである。
(先導かぁ。と言ってもとにかく殲滅して回ってたからなぁ)
そんな風に考えていると、
ドン、と誰かにぶつかってしまった。
「おおっとすみません」
「っと、どこに目ぇつけんですかコンニャロー!」




