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その時堀内が呟いた。
「………てるんだろう」
え?今……何か言った?よく聞こえなかったんだけど!!!!
堀内が何を呟いたのか良く聞き取れなかったけど、その時の表情はどこか不安げに見えた。
「って!アヒル相手に何話してんだろな俺!」
堀内は一気に立ち上がった。
「じゃぁ俺そろそろ帰るな!また明日なアヒル!」
堀内は最後にまた笑顔を見せ、走り去った。
堀内ともっと沢山話がしたかった。
もっと沢山堀内の事が知りたくなった。
でももう夢のようなこの時間は終わる。
時間が続いたとしても私はアヒル。
そして、その私は19歳で、ここにいた堀内は15歳。
私が今想う相手は15歳のままの堀内なんだ。
こんなおかしいことってあるの?
その時、
「フォッフォッフォ……時間じゃ」
どこからともなく声がした。
小箱のジジィが私を呼びに来た。
上を見上げると私はまた見知らぬ異空間のようなところに移動していた。
姿は元に戻り、私の前にはジジィが立っていた。
「目的、果たせなかった……果たすどころか間違いに気がつくし、15歳相手に惚れ直すしもう散々」
苦笑するしかなかった。
私は別の悔しさを覚えていた。
今の気持ちに気がついた。
そう確信できたところで、私にはもうどうすることも出来ない。
ましてやヤイコたちに言われたようにホント「今更」だ……
苦しいのはこれからかもしれない。
そんな私を見ていたジジィは優しく微笑んでいた。
「フォッフォ、まだ終わりではないぞえ。目的を果たすのはこれからじゃ」
「え?」
私は良く分らなかった。
私の目的はこれからなの??
今までのことは前兆に過ぎないの??
「まだ続きがあるって言うの?」
疑問の眼差しを送るとジジィは何も答えずに髭を触っている。
「ねぇ!どういうことなの??」
「その後の未来、とはつまりお主が戻ったこの過去から元の現在までの間の歴史を変えることは出来んという事じゃ。しかしこれからの未来を作り出すことは出来るのじゃ」
これからの未来……?
「お主は過去に来て忘れていた沢山の事を思い出した。その事をこれからの未来にどう活かせるか。それがお主の目的となるのじゃ」
「どう活かせるか……」
堀内への気持ちを呼び覚ました事が、これから活かせられるの?
でも会えるきっかけなんてないし、会えたとしてもそんな事言えない。
15歳の堀内に対しての想いでしかないこの気持ちをそのまま今の堀内に向けていいのだろうか。
それともただいつまでも過去に縛られているだけなのだろうか。
色々な気持ちがめぐり複雑になってきた。
「思い出したその気持ちが、お主のこれからの未来を作るのじゃよ」
私の気持ちが解決しないままタイムアップを迎えた。
「フォッフォ、さぁ、起きなさい」
ジジィがそう言うと周りが真っ白な強い光につつまれた。
ん………眩しい!!