表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
占い師リリーの当たりすぎる恋愛予報  作者: わがままな饅頭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/18

第九話:噂の広まる速さ

「――で、団長。例の占い師様との仲は、順調なんですか?」


自警団の詰め所で、若い部下の一人が、にやにやしながらヴァンスに詰め寄っていた。


「……お前、どこでその話を」


「どこも何も、町中の噂ですよ。団長が占い小屋に足繁く通ってるって話、知らない人の方が少ないんじゃないですかね」


ヴァンスは、深いため息をついた。この町の情報の伝達速度は、時として恐ろしいものがある。


「先日は、食堂で二人でいるところを見た、なんて話も聞きましたよ。もうデートまでしてるんですね」


「……否定はしない」


「うわ、素直!」


からかい半分の同僚たちに囲まれながら、ヴァンスは苦笑いを浮かべるしかなかった。


一方その頃、占い小屋でも、似たような騒動が起きていた。


「ちょっとリリー! 聞いたわよ、団長さんとデートしたって!」


常連客のおばさんが、興奮気味に詰め寄ってくる。


「だ、誰から聞いたんですか、それ」


「食堂の主人よ! あんたたちが来た日、えらく機嫌が良かったって、皆に話して回ってたわよ」


「あの店主……!」


まさかの情報源に、リリーは頭を抱えた。せっかく静かに関係を育んでいたつもりが、いつの間にか、町中の公然の秘密になっていたらしい。


「これからは、もっと大きな祭りとかにも、堂々と一緒に行けるんじゃない?」


「ま、祭りって、来月の収穫祭のことですか」


「そうそう。あれ、恋人同士で行くのが定番なのよね」


その情報に、リリーは思わず頬を赤らめた。


夕方、店じまいをしていると、いつものようにヴァンスが顔を出した。


「なんというか……町中に知れ渡っているみたいだな、俺たちのこと」


「こっちもです。今日、常連さんに根掘り葉掘り聞かれました」


二人は、顔を見合わせて、思わず苦笑した。


「隠すつもりも、そもそもなかったが、これほど早いとは思わなかったな」


「私もです」


「それで、だ」


ヴァンスは、少し照れくさそうに切り出した。


「来月の収穫祭、一緒に行かないか。噂になっているなら、いっそのこと、堂々と行った方がいい気もしてな」


「……はい、喜んで」


素直に頷くリリーに、ヴァンスは安堵したように微笑んだ。


「ところで」


リリーは、ふと気になっていたことを尋ねた。


「詰め所の方でも、からかわれたりしましたか」


「……散々な」


「ふふ、私と同じですね」


「お前も?」


「常連さんに、根掘り葉掘りです」


顔を見合わせて笑う二人の間に、これまでとは違う、穏やかな空気が流れていた。誤魔化す必要も、隠す必要もない、ただの恋人同士としての時間。


「収穫祭、楽しみにしています」


「ああ、俺もだ」


窓の外、夕暮れの町の喧騒が、いつもより少しだけ、賑やかに聞こえた。当たりすぎる占いから始まった恋は、いつの間にか、町中を巻き込む、賑やかな噂話へと育っていたらしい。


それも、案外悪くない"当たり"なのかもしれないと、リリーは密かに思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ