表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
占い師リリーの当たりすぎる恋愛予報  作者: わがままな饅頭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/18

第十話:収穫祭の夜

収穫祭当日、町の広場は、朝から賑やかな熱気に包まれていた。


「うわあ、こんなに人が多いの、久しぶりに見ました」


出店の並ぶ広場を歩きながら、リリーは目を輝かせていた。普段は占い小屋に籠りきりの生活のため、こういった賑わいに触れる機会は、そう多くない。


「はぐれるなよ」


隣を歩くヴァンスが、さりげなく手を差し出してきた。リリーは一瞬躊躇いながらも、その手を取った。


「……あったかいですね」


「そうか?」


「はい」


繋いだ手から伝わる体温に、リリーは密かに幸せを噛み締めていた。


祭りの広場には、様々な出店が並んでいた。焼き菓子、串焼き、輪投げ、そして――


「あら、占いの屋台まで出てるんですね」


一角に、簡易的な占い台を出している旅の占い師の姿があった。行列ができるほどの盛況ぶりだ。


「行ってみるか?」


「私、占い師なので、他の方の占いって、なんだか新鮮です」


二人で列に並び、順番を待つ。順番が来ると、旅の占い師は、水晶玉ではなく、カードを使った占いを見せてくれた。


「お二人の関係、拝見しますね……ふむ、これは」


占い師は、カードを繰りながら、意味深に微笑んだ。


「深い信頼で結ばれた、良いご関係ですね。これから先も、末永く続くでしょう」


当たり障りのない、いかにも祭りの余興らしい占い文句に、リリーは思わず苦笑した。


(当たっているかどうかは、正直分からないけど……悪い気はしないわね)


占いを終え、屋台を離れながら、ヴァンスがぽつりと言った。


「お前の占いとは、随分違うんだな」


「そうですね。あちらは、雰囲気を楽しむための占いです。私のは、その、なんというか……事故みたいなものなので」


「事故、か」


「はい。視たくなくても、視えちゃうので」


「それも含めて、お前らしいと思うが」


さらりと告げられた言葉に、リリーはまた頬を熱くした。


日が暮れる頃、広場の中央で、盛大な花火が打ち上げられ始めた。夜空を彩る光の粒に、集まった人々から、歓声が上がる。


「綺麗ですね」


「ああ」


花火を見上げながら、リリーはふと、ヴァンスに問いかけた。


「これから先のこと、私、占いで視ようとは思いません」


「急にどうした」


「視えてしまう未来より、視えないまま、二人で作っていく未来の方が、きっと楽しいと思ったので」


その言葉に、ヴァンスは静かに微笑んだ。


「悪くない心がけだ」


「でしょう?」


「ああ。……それに」


ヴァンスは、繋いだ手に、少しだけ力を込めた。


「視えない未来だからこそ、しっかり掴んでおかないとな」


花火の光に照らされた二人の影が、寄り添うように長く伸びていた。


当たりすぎる占い師の恋は、こうして、賑やかな祭りの夜に、新しい一歩を踏み出したのだった。


――そしてこの調子だと、この先も、当たりすぎる占いのせいで、色々な騒動が巻き起こることになりそうだが、それはまた、別のお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ