表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
占い師リリーの当たりすぎる恋愛予報  作者: わがままな饅頭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/18

第六話:新米恋人の距離感

「――で、結局、あれから何日経ったのよ」


数日後、店番を手伝いに来たミアが、興味津々の顔でカウンターに肘をついていた。


「五日、かな」


「進展は?」


「し、進展も何も。まだ、そんなに」


しどろもどろに答えるリリーを、ミアは呆れ顔で見つめた。


「あんたたち、両想いだって分かったんでしょ。なのに、まだ手も繋いでないの?」


「て、手を繋ぐとか、そんな急に……」


「急も何も、恋人同士なんだから、普通のことでしょ」


正論を突きつけられ、リリーは言葉に詰まった。実のところ、あの告白めいたやり取り以来、ヴァンスとは何度か顔を合わせているものの、二人きりで過ごす時間は、意外なほど少なかった。自警団の仕事が忙しいのもあるが、それ以上に――


「なんというか、お互い、変に意識しちゃって」


「初々しいこと」


からかうミアを軽く睨みつつ、リリーは占い小屋の看板を磨きながら、ぽつりと呟いた。


「占いだと、色々スラスラ視えるくせに、いざ自分のこととなると、途端に不器用になるのよね」


「それ、才能の無駄遣いって言うのよ」


そんな話をしていた矢先、店の扉が控えめにノックされた。


「ごめん、いいか」


顔を出したのは、ヴァンスだった。私服姿で、心なしか、いつもより緊張した面持ちをしている。


「ヴァンスさん! きょ、今日はどうしたんですか」


「いや、その」


ヴァンスは、珍しく歯切れの悪い様子で、懐から何かを取り出した。小さな包みだった。


「これ、渡そうと思って」


「な、なんですか、これ」


「町の外れの菓子屋で、評判の焼き菓子だ。……その、恋人に贈るには、こういうものがいいと聞いたんだが」


不慣れな様子で差し出された包みを受け取りながら、リリーは頬が熱くなるのを感じた。


「あ、ありがとうございます……」


その様子を、ミアがにやにやしながら眺めている。


「初々しいって言ったの、撤回するわ。これは末期症状ね」


「ミア!」


慌てるリリーをよそに、ヴァンスは律儀にミアにも会釈した。


「君は、リリーの友人だったな」


「はい、ミアです。花屋の娘やってます。よろしくお願いしますね、団長さん」


「ヴァンスでいい」


「じゃあヴァンスさん、これからリリーのこと、よろしくお願いします」


「ミア、勝手に話を進めないで!」


賑やかなやり取りに、ヴァンスは苦笑しながら、リリーに視線を戻した。


「今度、非番の日にでも、出かけないか。町の外れに、新しくできた食堂があるらしい」


「あ……はい、喜んで」


「よし。詳しい日程は、また改めて」


用件を伝え終えると、ヴァンスは名残惜しそうにしながらも、仕事に戻っていった。扉が閉まると同時に、リリーはカウンターに突っ伏した。


「な、なんか、思ったより緊張する……」


「初デートね、これは」


「デ、デート!? そういう括りになるの!?」


「他に何て呼ぶのよ」


ミアの指摘に、リリーは包みを胸に抱えたまま、しばらく赤面していた。


その日の夜、リリーは水晶玉を前に、いたずら心を起こしてみた。


(試しに、次のデートがどうなるか、視てみようかな……)


だが、水晶玉に手を伸ばしかけたところで、リリーは思い直したように、その手を止めた。


「……ううん。占いに頼らないって、決めたんだから」


未来を視ずに、自分の足で進んでいく。それもまた、当たりすぎる占い師にとっては、案外新鮮な挑戦なのかもしれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ