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東京へ

また新しいキャラが登場します。気に入っていただけると幸いです。

 翌朝、俺はたくさんの荷物を大きなキャンピングカーに積んで、里美をドライバーに華々美と涼と美玲の4人と一緒に車に乗り込んだ。


「5人とも、気を付けてください」

「留守は任せな」

「何かあったら、すぐに連絡してください」


 小夏さんと咲とアリアに声をかけてもらい、皆に見送られながら俺達を乗せたキャンピングカーは屋敷を出発した。

 その道中にガソリンスタンドによってガソリンの補充を行ったが、補充する機械を華々美が何かしたことで動かす事が出来た。ちなみにその方法を華々美に聞くと、「企業秘密だ」と言ってはぐらかされた。本当に一体どこで知ったのだ?

 それから10分後にキャンピングカーは高速道路に入り、とても長い東京までの道のりをひたすら走っていった。

 何度かトンネルを潜り、その度にたくさんの死霊達が襲い掛かってきたのだが、涼の術が施されたこの車に入り込める霊は一人もいなかった為安全に通り抜けることが出来た。

 高速を避けて通る案もあったが、なるべく早く着きたいということで高速を通ることになった。


「それにしても、わざわざ東京からあんなド田舎の山奥に行くなんて、その渋井沢とかいう馬鹿は一体何を考えてたんでしょうね」

「ツイッターからは、『噂の心霊スポットの某森の中に入った。果たして何が出るのだろうか!』、なんて書いてあったから単純に心霊スポット巡りをしてたんだと思う」

「バカじゃないのソイツ」

「ああ。ただのバカだよ」


 大方、それでリツイート数を稼ごうとしていたのだろうけど、それらの行為は死者を冒涜する悪質な行為であるため絶対にしてはいけない。ちなみに、涼が言うには渋井沢のツイッターに乗っていた全ての心霊スポットには霊は一人もおらず、一部の人間の勝手な思い込みによってそう思われているだけの所らしい。本当にただ迷惑なだけの中年であった。

 そんなことを里美と話していると、道路の脇に白いワンピースを着た髪の長い女性が俯きながら立っているのが見えた。生気が感じられない為、すぐに死霊であることが分かった。何より、肌が真っ白だった。


「あまり見るんじゃない。あぁいうのは無視しておけば特に害はないわ」

「里美の言う通りよ。無視すれば特に害はないし、どうしても気になるのなら私が退治するわ」


 里美と涼に言われて俺はすぐにその死霊から視線を外し、静かに首を横に振った。こんな所で力を消耗したくないし、あぁいう霊はこちらがちょっかいをかけない限り何もしてこない事はここ数ヶ月で学ぶ事が出来た。事実、あの死霊の前を素通りしても何も起こらなかった。


「今日は少し曇っていて、陽光があまり届いていないから日中であってもあぁいう死霊たちが外を徘徊する事があるけど、術を施したこの車には入って来られないから安心して」

「分かっている。涼の事は信用しているし、心配はしてないさ」


 とはいえ、12月に入ってから曇りと雨の日が続いてなかなか外に出て物資の調達が出来ないでいたし、本当なら屋敷の敷地の外に出るべきではないのかもしれない。特に雨の日は、死霊たちが夜と同じくらいに活発になる。梅雨時なんて最悪で、その時は十数日も敷地の外に出られないでいた。


「天気予報では、東京は明日から3日間も雨が降るらしいぞ」

「3日も?最悪だ」


 華々美がスマホから10日間の天気予報を見て、それを聞いた俺達はげんなりとした。日帰りは無理だと思い諦めていたが、まさか3日間ずっと雨が続くなんて最悪だ。

 渋井沢の家の住所は特定できているけど、だからと言ってすぐに霊滅版のある場所が特定できるわけではない為数日は東京に滞在する予定ではあったが、まさか3日間も雨で何も出来ないまま潰れてしまうなんて予想外であった。


「でも、電気の供給が無くなってもスマホから天気予報が見れるのはありがたいです」

「人工衛星は今も地球の周りを周回しているし、わたしのスマホはそれから直接お天気情報を知る事が出来るんだ」

「うぅわ、めっちゃ高い奴じゃん・・・・・」

「私でもそんなスマホ買ってもらえなかったのに・・・・・」

「幹夫も涼も、気にしたら負けだよ。というか、今も持っていて使えるだけありがたいじゃん。私のスマホなんて、この現象が起こった日に落としてなくしちゃったんだから」


 そう言えば、里美は自分のスマホを持っておらず、華々美が持っていたもう一つの予備のスマホで連絡を取り合っている状態にあった。まぁ、落として失くしたのなら見つけてももう使えないだろうし、今更気にしても仕方がない。


「パーキングで一旦降りて休憩するか?東京までの道のりはまだまだ長いんだし、休みながら進もう。そこでドライバーも交代しよう」

「そうね。何時までも私に運転を頼りっきりという訳にもいかないからね」

「ああ」


 とは言ったものの、無免許で車を運転するのは抵抗があるけど今更であった。そもそも、無人のショッピングモールやスーパーでたくさんの食糧や水や物資を勝手に持ち出している、その時点で俺達がやっていることは完全な窃盗だ。

 だが、こんな状況ではお金なんて何の意味もなさないし、そうしないと俺達が生きていく事が出来ない。それ以前に人が誰もいないのだから仕方がない。


(それに、このキャンピングカーだって盗んだ物だし)


 今更申し訳なさも感じることも無いし、向こうに着いたら新しい車と物資も欲しいし、娯楽品も調達出来たらいいなと思った。

 それからわずか5分後にパーキングエリアに到着し、涼の術でそこにいた死霊たちを追い払ってから20分程休憩を取った。その際、俺はトイレを済ませて、飲み物とお菓子の調達をした。

 それから1時間ほど俺が車を運転し、次のパーキングエリアで華々美と交代し、更に1時間後に涼と交代し、そして東京に入る直前に再び里美に運転してもらった。

 東京に入ったときの第一印象は、以前の東京とはまるで正反対の寂れたゴーストタウンであった。


「酷いな・・・・・」

「この現象が始まったときにも、誰かが流した動画で見たけど、人が多い上に隠れられる所もかなり少ない。大きい所は反社組織が占拠していたらしいし、最悪ね」

「ま、そこも持たないだろうな。涼が言うには、そういう人間が好き勝手にしていると守りの力もなくなっていくらしく、そう遠くないうちにたくさんの死霊に押し寄せられるって」


 里美と話しながら、窓からゴーストダウンと化してすっかり変わり果ててしまった東京の街並みを眺めていた。

 死霊たちの影響なのか、ビルは窓ガラスが全て割られていて、建物の傷み具合もかなり酷くいつ倒壊してもおかしくないような危ない建物が多かった。まるで何年も放置されたみたいに傷みが酷く、完全に廃墟であった。そして、その廃墟からはたくさんの死霊たちがあふれ出て来ていた。


(涼のお陰で襲われずに済んでいるけど、死霊たちの数が俺達の住んでいる町の比じゃない)


 まるでゾンビ映画のゾンビみたいにたくさんいる。死体は完全に白骨化していて、あの協会の時みたいに吸血鬼になった遺体は今のところ見当たらなかった。都会のビジネス街というのもあるかもしれないが、こんなにたくさんの死霊は見たことがなかった。


「この様子じゃ、ここに住んでいる人全員死んで死霊になったのだろうな」

「教会は一応あるみたいだけど、その筋の人達に占拠されたのか、完全に機能を失って死霊たちのたまり場になっているわね」

「強い悪意を持った人間が悪さするだけで、教会や神社の守りの力がこんなにもあっさり無くなるなんてな」


 こんな状況であるにもかかわらず、俺はそこにいた人達の心配よりも、死んだ悪党どもが吸血鬼にならなかったことに安堵していた。


「さて、野宿は確定としても何所で寝泊まりすればいいものか」

「なら、ここから50分程走らせた所にある小学校にでも行く?校舎や体育館は無理でも、グラウンドでキャンプするのも良いんじゃない」

「そうだな。じゃあ、今日はそこで野宿するか。明日から雨が降るらしいから、その間ずっとキャンピングカーの中で過ごすことになるけど仕方ないか」


 一応5人全員が過ごせるくらいに大きなキャンピングカーだが、それでも狭い事には変わりなく明日から3日間不便な生活を強いることになる。幸いなことに、他の4人はそういう生活耐えられると言っていたし、暇つぶしの為の娯楽品もいろいろ持ってきていた。

 何てことを、後ろで仮眠を取っている華々美と涼と美玲を見ながら思った。


「先に言っておくと、3人とハッスルしたくなったら言いなさい。その時は耳栓をして寝てあげるから」

「出来るか、こんな状況で」


 こうして、俺達は目的の学校のグラウンドで何もしないで3泊4日も過ごすことにした。こういう時、天気を呪わずにはいられないがそれでも出発を決行したのは俺達だ。


(何かよく分からないけど、すぐに行かないといけない気がしてならないんだよな)


 いつもの俺だったら、天気が悪い時点で遠出どころか外出すらしなかったのに、虫の知らせなのかどうか分からないがあの時はなぜかすぐに行かないといけないと思った。

 だが俺は、きっと婆ちゃんが急げば助けられる命があるぞと告げられた気がした。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 その頃



「皆!ご飯と粉ミルクとおむつを持ってきたわよ!」

「水と缶詰もたくさん用意してきました!」


 日没前、2人の女性がたくさんの物資を持って帰ると、とある神社に避難していたたくさんの子供達が一斉に駆け寄り、彼女達が持ってきた物資を持って奥の建物へと走っていった。そこには、病院から救助した複数の赤ちゃんがベビーベッドの上で寝かされていて、それを3人の男女がお世話をしていた。物資を調達した2人も含めると5人、更に10歳以上の子供7人も赤ちゃんのお世話をしている為正確には12人でしていた。

 とはいえ、たった12人で25人もいる赤ちゃんの面倒を見るのはとても大変であった。


「どうでした?」

「みんな健康そのものよ。夜泣きもだいぶ落ち着いてきたし、最初に比べれば大丈夫よ」

「むしろ、何時も2人に危険な役割をお願いしてごめんね」


 赤ちゃんのお世話をしていた3人の男女が、物資を調達した女性2人に頭を下げてお礼を言った。


「いいえ。あたし達こそ申し訳ありません。私のワガママで、皆さんやお姉ちゃんに苦労させて」

「私は良いけど、他の人達に迷惑をかけるのは」

「まぁまぁ」

「俺達は大丈夫だから、梨乃ちゃんは気にしないで。むしろ、25人もの赤ちゃんや15人の子供たちを救ってくれたんだから」

「うん・・・・・」


 お世話をしている男女は気にした様子はないが、梨乃と呼ばれた少女は少し申し訳なさそうに頭を下げた。そんな彼女を、一緒に物資を調達しに行ってくれた女性が背中をさすってあげた。


「梨乃は良いことをしたんだから気にしないで。私も、将来子供が出来た時の為の予行演習が出来て良かったと思っているわ。お陰で、赤ちゃんの抱き方と、おしめの替え方も、ミルクの作り方やあげ方を改めて学ぶ事が出来たんだから」

「お姉ちゃんは保育士さんだから、あたし達よりも詳しいのは当然でしょ」

「そうね。せっかく師匠から術と技術の全てを教わったのに、保育士をやっているもんね」

「そうだよ。本当にもったいないわよ」


 そんな感じで軽い会話をしながら、赤ちゃんがいる部屋に向かう2人の女性、影(かげ)山(やま)由(ゆ)乃(の)と影山(かげやま)梨乃(りの)の姉妹であった。




ようやく霊滅版探しが始まります。

言い忘れましたけど、誤字ではありません。ちゃんと意味があってこの「版」です。

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