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有力情報

「それにしても、実際に行くとかなり酷いな」

「無理もないわ。あれからもう4か月経っているのよ」

「確かに、それ以来近づいていないもんな」


 釣りに行ってから2週間後、俺は華々美と涼と里美と美玲を連れて瀧倉神社があった場所に来ていた。この神社は、現象が起こった日にヘリが墜落し、大爆発が起こった場所でもあった。こんな事があったにも拘わらず、跡地に死霊が一人もいないのは驚きであった。

 数年前から涼の祖父と父が、定期的にこの地に結界を張り続けていて悪い霊が入って来られないようにしているのだと涼から聞いた。いざという時、ここに避難出来るようにしてくれたのだろう。

 あれから4ヶ月以上が経ち、俺達は改めて現場へ行って安全が確認出来てから散策を始めた。涼の案内で、俺達は必要な道具の確保と、この現象に関して何か有力な情報がないか、それっぽい資料はないかを探していた。


「祖父はこの現象を予知して、私達が今いるあの屋敷を建てて、浄水装置やソーラー発電による自家発電などといった設備を作った。当然、この現象に関する有力情報を集めている可能性もある」

「と言っても、あの爆発で全部燃えてしまったんじゃ?」

「それは大丈夫だと思うわ。大事な資料は金庫に入れて厳重に保管してあるわ」


 そう言って涼は、瓦礫をどけながら目的の金庫を探していた。俺と華々美はその手伝いをしつつ、使えそうな物の調達をしていた。


「おぉい!こんなのも見つけたぞ!」

「なんだ?・・・・って!?」

「ちょっ!?華々美あんた!」


 声がする方を向くと、華々美が何かを右手に持ってヒラヒラとさせていた。それは水色の花柄で、2か所小盛ながらも盛り上がっていた。そしてそれを見た瞬間、涼は顔を真っ赤にしてそれを華々美から取った。


「返しなさい!それは私のブラ!」

「へぇ、以外に可愛いデザインだね。あの大爆発でよく無事だったな」

「変なの見つけるな!」

「それにしても小さいカップだったな」

「ケンカ売ってんのかコラ!」


 恥ずかしさのあまり大声を上げる涼だが、彼女の下着を見つけたのは華々美だけではなかった。里美と美玲も、それぞれ涼の物と思わしき下着を発掘していった。その度に涼は顔を真っ赤にさせ、恥ずかしさのあまり見つけた3人に怒鳴りつけていた。というか、何故涼の下着がそんなにたくさん見つかるのだ?


(何やってんだか・・・・・)


 ギャーギャー騒ぐ女性陣を無視して、俺は黙々と瓦礫をどけていった。瓦礫に紛れて、黒焦げになったヘリの破片や、白骨化した遺体もたくさん出てきた。中にはクマのフンまで見つかったから、たまにクマも来ては遺体を食べていたのだろう。


「自分で提案したこととはいえ、あまり気分が良くないな」


 火事場泥棒みたいな真似をしているけど、俺達が生きるためには仕方がない事だし、これだけたくさんの白骨遺体の処理は時間がかかりすぎてしまうので出来ない。

 しばらくすると、瓦礫に埋もれていた金庫を見つけた。


「涼!」

「何!?幹夫まで私の下着を見つけたの!」

「そんなわけないだろ。これ」


 顔を真っ赤にしながらも、涼は俺が見つけた金庫に目を向けた。


「はぁ・・・ようやく見つけたわ」

「これで間違いないのか?」

「ええ」


 暗証番号を知っているみたいで、涼はあっさりと金庫を空けて中にあった5冊のノートと1冊の古い本を取り出した。手に取った本をパラパラめくり、半分くらいのページで手を止めて凝視し始めた。


「涼?」

「もしかして祖父と父は、この為にずっと調べていたの?」

「何かわかったのか」

「うん!」


 力強く頷くと、涼はそのページを俺に見せてくれた。

 そこには、石で出来た円盤型の石板について書かれていた。その石板は、霊滅版(れいめつばん)と書かれていた。


「霊滅版?」

「詳しく調べる必要がある。6冊とも、その霊滅版について書かれていたから、無関係とは思えないわ」

「そうだな。持って帰って調べよう」


 金庫で厳重保管している事と、6冊とも霊滅版についての本であることで調べる価値があると分かった。

 この現象の事を10年前から予知し、その原因となりうるものを徹底的に調べ上げたのだろう。


「きっとお爺ちゃんは、この日の為にたくさん調べて、いろんな所に旅行に行ったのかもね。5冊のノートは、お爺ちゃんが10年かけて調べ上げた結果なのね」

「俺達の為に調べて、こうして残してくれたんだ。無駄には出来ない。しばらくは、物資の調達と並行して霊滅版について調べる必要がある。霊滅版にこの現象を解決するヒントがあるんだろう」


 1冊の本と、5冊のノートを持って俺達は神社跡地を後にした。

 その後、俺は涼と里美の2人と一緒に手に入った古い本と5冊のノートを読んだ。

 古い本には、霊滅版について書かれていて、ノートには涼のお爺さんが10年かけて調べ上げた記録が書かれていた。要約するとこうであった。




 それは世界中に12ヶ所だけ存在し、日本にも一つ存在していてとある場所に保管されていた。

 その効果は、全ての怨念を集めて浄化し、この世をさまよう霊を減らす効果がある。それと同時に、霊の怨みと無念を時間かけて和らげて成仏させる効果がある。

 だが、それを一つでも砕くと石板に吸い込まれた怨念が一気に解き放たれ、この世に留まっている霊の怨念を増長させ、強い力を与えて姿が見える危険な亡者になるという。それによって強くなって、見えるようになった亡者は通常よりも強く、通常よりも凶暴になって人を襲うようになる。




「おい、これって」

「ええ。この現象と全く同じ」

「つまり、この現象が起こった原因は誰かが霊滅版を壊してしまったからって事かしら」


 里美の言う通りだとしたら、この現象は生きた人間の誰かが霊滅版を壊してしまったせいで起こってしまったのか。ノートには世界地図も挟まれていて、赤い点で記された場所に霊滅板が存在していることを示していた。全部で12ヶ所も存在していて、そのうちのどれか一つが壊れたのだろう。

 更に読み進めると、この現象で見えるようになった死霊たちについても書かれていた。




 それによって見えるようになった亡者は、通常の霊よりも陽光を嫌い、浴びると消滅して存在が抹消するようになり、神の力が少しでも宿っている所には近寄れなくなるという。悪霊になってもそれは変わらない。だが、悪霊よりも更に上の魔物になると、日中に活動できなくても生きている人間を引き寄せる力は強くなり、早急に滅さないと取り返しがつかなくなる可能性がある。




「魔物って・・・・」

「悪霊よりも更に強くて危険な霊で、常に生きた人間の生気を求めて世界中をさまよっているの」

「そんなに危険な霊なのか」

「ええ。でも、それは滅多に遭遇するものでもないし、私も父もまだ一度も見たことがないわ。祖父は1度だけ戦った事があるけど、祓う事が出来ず宝刀で斬ってこの世から抹消させるしかなかったって聞いた事がある」

「そんなに強くて危険なのか?」

「うん。だけど、さっきも言ったように滅多に遭遇するものじゃないから大丈夫だけど、警戒はした方が良いわ。それに、力の強い悪霊に教会や神社などの護りの力なんて殆ど意味もなさないわ」


 滅多に遭遇しないというが、そんな危険な存在が俺達を常に狙ってさまよっていることになる。いずれにせよ、警戒はすべきだ。


「2人とも、どうやらお爺さんはこの現象を解決する方法も調べてくれているみたいだよ」

「何!?」

「本当に!?」

「ええ。読むわよ」


 気になる内容はこうであった。




 霊滅版が壊れても、それに書かれた陣を描き、その陣の真ん中に砕けた霊滅版を置くことで元の形に戻り、世界中の怨念を集めて浄化させ、この時点までさまよっている守護霊を除く全ての霊を成仏させる事が可能。




「成仏、か。地獄に落ちる訳ではないんだな」

「正確には、天国も地獄も両方存在せず、死んで身体を離れた魂は真っ白の世界、霊界に送られて洗浄され、新しい命として生まれ変わるの」

「でしょうね。死神は、そんな転生するのが嫌な魂を回収するのが仕事なんでしょう」


 つまり、罪の重さに関係なく死んだ人間は皆新しい命へと生まれ変わるのか。


「ただし、重い罪を犯すとその分激しく洗浄されてしまい、畜生、つまり動物になるのが落ちなの」

「人間には転生しないのか」


 そりゃ、何かやましい事をしていれば成仏するのも躊躇われるわな。空道神社の周辺の死霊たちが、死神を恐れて逃げ出すのも何となくわかった。もちろん、この世に対する未練と執着があるから成仏できないだろうけど、なんだかそれだけではない気がしてきた。


「なんにせよ、この現象を解決する方法も見つかったわ」

「ああ。霊滅版を探し出して、それに描かれている陣を描いて真ん中に置けば全てが終わる」

「そうね。その壊れた霊滅版が日本にあるとも限らないけど、探して持ち帰る価値はあると思うわ。幸い、日本の霊滅版は隣県の洞窟の中にあるみたい」

「隣県なら、車で2時間くらいだな。準備が出来次第出発しよう」

「「うん」」


 方向性が決まり、俺達は皆にこのことを報告した。そして話し合いの末、霊滅版を取りに隣県に行くメンバーも決めた。メンバーは、俺、華々美、涼、里美、美玲の5人で行くことになった。

 そして俺達は、霊滅版の捜索に向けて必要な物資と食料の準備をこの日から進めた。





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