彼女達のと未来
翌朝目覚めると、俺のすぐ横で穏やかな寝息を立てる華々美の姿を見て安心した。
それからしばらくして他の皆も目を覚まし、俺達は一旦空道神社に向かう事にした。そこで朝食を取り、お昼ごろに俺達は屋敷に戻った。
その際に笠島先輩が、優希を引き取ってくれると言ってくれた。この神社に着いたときに俺は、神社や教会を難なく突破できる悪霊について話したことがあり、その流れで優希のことを話していた。そんな俺達の事情を知り、かつ今の優希なら問題は起こさないだろうと思い、引き取って面倒を見てくれると申し出てくれた。笠島先輩の提案に、空道神社に避難してきた皆が快く賛成してくれた。
先輩の有難い申し出により、俺達は優希を置いて屋敷に帰ることにした。その代り、水と食料の配給と積極的に協力すると約束し、今後も特に良好な関係を築く事が出来た。
帰ってすぐ、俺は里美や美玲の指導の下華々美の誕生日を祝うケーキを作った。と言っても、生クリームの上にドライフルーツを乗せたもので華やかさのかけらもなかった。それでも華々美は喜んでくれて、その日の夜は彼女の17歳の誕生日を祝った。
それからお風呂を済ませ、全員が就寝した時に俺は唇に触れる柔らかい感触に目を覚ました。視界の先には、非常に整った顔をした女性、というか全員女性なのだけど長くて滑らかな黒髪ですぐに誰なのか分かった。
目を覚ました俺に気付いて、彼女がスッと唇を離した。キスしたのは華々美であった。
「華々美」
「すまない。どうしても我慢できなくてな」
「いや、それは良いが・・・・」
まさか華々美から、この屋敷に避難している女子の中ではダントツに綺麗な女の子からキスをされるなんて!?
「グリムスに狙われ、魂まで抜かれかけた時にいろいろとやり残したこと多いことに気付いて、その中でも幹夫に想いを伝えられなかったことが一番の心残りだと思った」
「俺への、想い!?」
まさか華々美が、俺の事が好きだと!?
今までは優希が近くにいたせいで、なかなか女子と接点を持つ事が出来なかった。この屋敷に避難してからは、周りにいるたくさんの女の子たちと関わってきたけど、ここにいる女子達の信頼を裏切る訳にはいかず出来るだけ下心を抱かず、かつ極力見過ぎたり馴れ馴れしくしたり、やたら触れないように気を付けてきた。
だけど、そんな中俺は今華々美に覆いかぶさられ、その上キスまでされた。
だが、冷静に考えるとこれは非常にマズイ。
「お、落ち着け!こんな事が皆にバレたら!?」
「その点は問題ない。予め皆には話してあるし、許可は下りた」
「マジ!?」
「涼と美玲だけが強く反対していたが」
「いたじゃん反対した奴!?」
涼と美玲が、華々美が俺に夜這いを仕掛けることに強く反対していたのか。涼はともかく、美玲までも強く反対していたなんて、否、不純だの破廉恥などと言って反対したのだろう。
ちなみに、咲と姫香の2人は別に良いんじゃねと言って特に反対されなかったみたいだ。小夏さんとアリアは、どうすればいいのか分からず困惑した様子であったそうだ。
「だけど、里美が賛成してくれて、涼と美玲を説得してくれたお陰で何とかなった」
「里美が?」
「ああ。わたしが最初に幹夫として、それから時間を置いて気持ちが固まり次第」
「って、それ自分も含めていずれ全員とすればいいじゃんって言っているようなもんじゃん!?」
「まぁ、そうなる。だが、こんな状況で幹夫を独り占めするのは良くないし、生きた人間が少なくなっている中男一人を女一人が独占何て、そんな事に拘っている場合ではない」
「そんな事って・・・・・」
本当にそれでいいのよって思い、何とか言い逃れをしてその日はやり過ごそうと考えていたのだが、華々美に手を引かれて寝室を出ると2つ隣の部屋へと入っていった。ご丁寧に布団まで敷かれていた。
そして、入った瞬間に俺は華々美に押し倒される形で布団の上に寝転がった。
「か、華々美!?」
「お預けされて、心残りを残したくないし、後悔もしたくない。死ぬ気は毛頭ないが、あの時は本当に後悔したんだ」
「け、けど・・・・・」
このまま流されてするのは、ここにいる皆に対して不誠実になるのではないかと思いどうしても躊躇ってしまう。そんな俺の心中を察した華々美、有無を言わさず再びキスで口を塞いできた。
「言ったろ。ちゃんと皆に話したって。里美の援護射撃のお陰で許可も下りたって」
「そ、それは・・・・」
「幹夫って、普段は決断力があるのにこういう事になると優柔不断になるんだな」
「ほっとけ。どうせ女性経験の少ないヘタレ童貞だよ」
「その童貞とも今日でお別れだ」
「何言って・・・・!?」
次の言葉を発する前に、俺の頭は突然大きくて柔らかい何かに包まれた。考えるまでもなく、華々美の大きな胸に抱きこまれたのだ。
「ほら、こんなに大きんだぞ。我慢しなくてもいいし、してほしくないな」
「んんん!?」
声を発したくてもなかなか出ない!そんな俺に、華々美は最後の追い打ちをかけた。
「こんなに誰かを好きになったのは、幹夫が初めてなんだ。だから、17歳になった今どうしても幹夫としたいんだ」
その言葉の後華々美は、俺の右手を自身のシャツの中に入れて、その中にある大きくて柔らかいものに触れさせた。
「幹夫」
色っぽい声を発しながら華々美は、再び俺にキスをしてきた。それも、先程よりもかなり濃厚な。
その後、俺の決意とは無関係に反応した身体に華々美は更に色気を出し、抗えなくなったところで・・・・・・。
腕っぷしで華々美に勝てるわけがなく、その日の夜、俺はあっけなく襲われた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから3日後。
俺達はその日、待望の魚釣りを行っていた。涼が2日かけてようやく見つけた、死霊たちがあまりいない穴場スポット。そこで俺は、全員を引き連れて魚を釣っていた。無論、釣りをしたからと言って必ず魚が釣れるという訳ではなく、朝から釣りを始めてお昼ごろまでのせいかは僅か3匹であった。
「あああ!全然釣れねぇ!」
「餌付けて糸を垂らせば爆釣れではなかったの!?」
「いや、それゲームの中の話ですから」
「あははは・・・・」
1匹も釣れずに不満を漏らす咲と姫香、そんな2人を宥める小夏さんとアリア。4人とも本日は1匹も釣れずに坊主の状態であった。
「そりゃ、大きくて美味しい魚はもっと沖にいかないと釣れないでしょう」
「それ以前に、誰も船の操縦が出来ないんですけど」
「流石の私も、船の操縦は出来ないし、そもそも漁船に乗ったことなんてないから」
あっけらかんとした感じで釣りを続けるのは、涼と美玲と里美であった。ちなみに、3匹とも里美が釣った魚であった。
「まぁ、そこは華々美が仕掛けた罠にかけるしかないよ」
「魚は臭いの強いものに惹かれるから、それを利用した即席の箱罠を作ったまでだ」
「「・・・・・・」」
即席と華々美は言ったが、実際は100円ショップで揃えられるものだけで作り、それを洗濯紐で垂らして海の底に沈めているのだ。引っ張り上げる前に涼が念力を注ぎ、周辺にいる死霊たちを遠ざけてから引き上げるという物だ。それが何と5か所もある。
自分の仕掛けた罠を自慢げに語る華々美だが、そんな華々美の言葉に涼と美玲は少し複雑そうな顔をしていた。
「・・・・・あぁ、2人とも、その・・・・・」
「「・・・・・・」」
俺が声をかけると、2人は益々不機嫌そうに視線を逸らした。
「いつまで不貞腐れているの。言ったでしょ。男一人を、女一人が独り占めしている場合ではないって」
「「・・・・!?」」
動揺する2人に、里美は構わず言った。
「今私たちが考えるべきは、この訳の分からない現象が解決した後の事よ。おそらく、大半の人類は死霊どもに襲われているでしょうし、生存者も20億人いるのかどうかも怪しい。小っちゃい島国の日本なんて100万人いるかどうかも怪しい。ゾンビみたいにバリケードで進行を防げたり、ヘッドショットで倒せたり、火葬すれば大半を倒せる訳でもない。特定の建物や地域にしか避難先がなく、銃火器は役に立たない。その上悪霊になるとその特定の建物や地域にも入り込めてしまう。日中の自由が利くというのを差し引いても、そんな状況で生き残れる人間が多い訳ないでしょ」
うん、里美の説明を聞くと確かにバリケード等で侵入を防ぐ事が出来、普通の銃火器で倒す事が出来る分ゾンビの方がマシなのかもしれない。幽霊の場合は、そんなものは簡単にすり抜けてしまうし、銃火器なんて何の役にも立たない。いや、パンデミックの規模はゾンビの方が上なのかもしれない。何故そこはゾンビではなく幽霊なんだ?
(いずれにせよ、里美の言うように日本だけでも生存者は100万人もいないだろう。下手をしたら10万人を下回っている可能性だってある。俺達が住んでいる町でさえ、確認できただけでも200人にも満たないし、人の多い都会なんてもっと最悪だろう)
そんな最悪な状況の中で俺達は少人数で今を生き、見つかるかどうかも分からないこの現象を解決する術を探し始めたばかりだ。
「そんな状況下の中で、一人の男を一人の女が独占しても良いと思う?今を生きる私達の最大の役目は、その命を次の代に受け継ぐこと。こっちには男は幹夫しかいない中、誰かが取ったから他は皆諦めてなんて言えないだろ。命を繋ぐことは、この世に生きとし生ける者全ての役目。こんな現象が起こらなかったら、ジェンダーだの自由の侵害だのなんだの言われるかもしれないけど、あの頃の恵まれた世界はもう終わり、私達の代では二度と戻って来ない」
里美の話を聞いて、もはや俺達が当たり前に過ごしてきたあの時間はもう二度と戻って来ない改めて思い知った。全てが完全に元に戻るには、百年単位で時間がかかってしまうだろう。
「最初を華々美に譲ってはいるけど、その内幹夫には他の皆とも関係を結ぶことになるわ」
「それだと俺の意思も無視することになるけど・・・・・」
「仕方ないでしょ。前の感覚のまま生きていても、10年もしないうちに人類は絶滅すると思うわ。逃げる手段も、対抗手段も無いし、この現象の解決と並行して子孫を残すことも視野に入れないといけない。簡単に絶滅なんてさせてはいけない」
「「「「・・・・・・」」」」
里美の最後の言葉に、俺達は押し黙る事しか出来なかった。確かに、この現象が起こる前の感覚でい続けると近いうちに皆死に、人類は絶滅してしまうだろう。そうならないようにする為に、里美は提案したのだろう。
「だからさ、華々美に先を越されたからと言って悲観しなくていい。幹夫としたいならすればいいわ。私は止めない」
「だとしても、まずはこの現象を何とかしないといけないだろ。子作りはその後からでも遅くないだろ」
「・・・・まぁ、幹夫がそう言うのなら、この現象をどうにかすることを最優先で考えても良いわ。その代り、あまり危ない事はしないで」
「分かっている」
となると、まずは情報収集をしないといけない。
一体なぜ、こんな現象が起こってしまったのか、そもそも何がきっかけで起こってしまったのか、誰がそうさせたのか?自然発生なのか、はたまた人の手で起きた災厄なのか?
いずれにせよ、こんな現象は早く何とかしないといけない。
「じゃあ、誰が幹夫さんとしても、誰も文句を言わないという事ですか?」
「そうなるわね」
「ん?・・・・っ!?」
美玲の質問に里美が頷いてすぐ、何を思ったのか美玲は急に俺に抱き着いてきたと思ったら、突然唇を重ねてきた。
そんな美玲の大胆な行動に、俺はもちろん華々美と涼も面食らった。里美はまったく気にしていないし、咲と姫香は相変わらず釣れない事にグチグチ文句を言い、そんな2人を小夏さんとアリアは宥めていてこっちに気付いていない。距離があるのもあると思うが。
「なっ、おまっ!?」
「私だって、幹夫さんの事が好きです。最初に会った時、必死になって吸血鬼たちから私達を守ろうとしてくれたあの時からずっと」
「ふぁあ!?」
「ちょちょちょっ!ちょっと待ちなさいよ!抜け駆けはずるいよ!」
「わたしとの余韻がまだ残っているのだから、せめてもう1週間は待て美玲!」
そんなこと言って涼と華々美は、必死で美玲を俺から引き剥がそうとし、里美はただ静観するだけであった。
(まったく・・・・勘弁してくれ!)
この日から、変な方向にスイッチの入った女性3人によって、俺は毎日振り回されることになった。
私の作る作品の主人公は、とことん女難の層にあるみたいです。




