やっと来たほのぼの回
優は幸せです。。。。。
「じゃあ、行ってくるぞー」
「はい、いってらっしゃい。あ、待ってください」
「なんだ?」
「これ、忘れてますよ」
背伸びして軽くキスをする。
「おっまえー! ったく」
もう一度キスして先生は学校へ向かった。
かく言う俺は―
あれから学校に行っていない。
学校が怖かった。
あんなことがあってどんな気持ちであいつらに会わなくちゃいけないんだよ。
氷代子さんにあの日、倉庫で何があったのかを全部話して俺は救われた。
すべて受け入れてくれた。
すべて許してくれた。
ここにいていいよって―
親には一人暮らしの友達の家に泊まっていると言っているが、いつまで持つか。
でも、俺は親に何を言われようがここを離れるつもりはなかった。
やっと手に入れた物。
氷代子さんがいればそれでいいんだ―
教職は小さな頃から私の夢だった。
人に何かを教えることが好きだった。誰かの役に立てたらいいなって。
でも実際、高校生の相手をするのは重労働で毎日家に着くころには足が鉛になっていた。
挙句の果てには陰で鬼教師と呼ばれる始末。
とほほ......真面目に厳しくしていただけなのに......
しかし、そんな中でも変わったことがある。
それは―
「ただいまー」
「おかえりなさい」
家に帰ったらこいつが迎えてくれることだ。
「今日はビーフシチューにしてみました」
鍋ふたをとると香ばしい匂いが広がり、空腹感が起きあがってくる。
「料理の腕は女である私が自慢したかったんだがなー」
「え? だめでしたか?」
子犬のようなまなざしで見つめてくる青井。
こんな顔見せられたら何でも許してしまう。
「だめじゃない。でも、明日は休みだし、私が作るからなー!」
よしよしと頭をなで私は席に着いた。
学校に行っていない俺の仕事はもちろん家事だ。
といっても、氷代子さんも自分でほとんどしてしまうため、俺に残っている仕事は少ない。
ならば!
「ゲームしましょう!」
俺達にはこれしかないでしょ!
「よし! やるかぁ!」
氷代子さんも嬉しそうにノリノリだ。
「降りろ! 降りろ! サウスタウンに行くぞ!」
「はい! って、今日は攻めますね」
「攻めん。少し物資を拾ってから道路で待ち伏せだ」
「うわ! 姑息、姑息ですね」
「うるさい! 最後に勝ち残って油断したプレイヤーを刈り取ってやる」
「こ、これがキャプテンイタリアンか......」
「きた! 行くぞ! 撃て撃て撃てー! やられた!」
「早いですよ! やられるの! しょうがないですね。俺が全部倒しますから」
「ふゅー! やるぅ!」
「ギリギリでしたよ」
「生き返ったところで次はイーストに行くぞ」
「命拾いした立場なのにガツガツ行きますねぇ!」
「ははは、私達は一心同体だろ」
「わかってますよ。ついていきますよ」
・
・
・
幸せだ―
「そういえば、最近優くんって呼んでくれませんね」
「な、なに!」
突然、思い出した過去の産物。
キャプテンイタリアンさんの振りをしていた時代は呼んでくれていたのに。
「俺は氷代子さんって呼んでるんだけどなー」
チラッ、チラッと氷代子さんを見る。
すると―
「ゆ、優くん......これでいいのか?」
「! 氷代子さーん! 今俺めっちゃドキッとしましたよ!」
たまらず胸に抱き着く。
この行為も泣いているところを見られながら慰めてもらったことがあると思えば全然恥ずかしくならなくなった。
「あ、あんまり年上をからかうなよ。もぉー」
幸せだ―
一緒にいて楽しいと思える男が胸に抱き着き甘えてくる。
気を使って家事もしてくれようとしてくれるし、今日はとてもおいしそうな夕飯まで作ってもらった。
今までの彼を考えれば私を裏切るなんてことはしないだろうし、なによりずっと側にいてくれる。
―でも
でも、このままでいいんだろうか?
このままずっと私の家に置いといて。
もちろん、優が家にいて嫌なことなど一つもない。むしろ嬉しいことばかりだ。
お金だって。
優が働かなくても別に一人くらい養っていける貯金も稼ぎも私にはある。
でも、それは優のためになるのだろうか?
このまま私のひもとして生きていくのは......
やはり、学校に行って問題の根源を解決しなければ、ずっと優はこのまま―
「氷代子さん? どうしたの? 黙って」
「べ、別に。何でもないぞ」
「ふーん......ねぇ、氷代子さん」
「なんだ?」
「俺ずっとここにいていいかな?」
「......ああ、いいぞ。ずっと......」
それでも私はこの小さくて温かい幸せに甘えてしまう。




