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三人集まったら

 最悪だ。


 決定的瞬間を一番見られたくない人に見られた。


 俺のズボンのチャックは全開で天野さんは服を脱いでいて下着姿。


 これを見て浮気を疑わない奴なんていないだろう。


 でも、今回も誤解なんだ!


 今度は遠慮をしないで天野さんを突き飛ばす。


「ちょっとぉ! 優君!」


 もうこんな女は無視だ!


「違うんだ! 三尹! 話を聞いてくれ!」


 それは大量の砂の中から小さなダイヤモンドを探し当てるくらいの希望だったが、俺は何とかつかもうとした。


 お願いだ三尹! こんなことで終わらせたくないよ!


「優くん......私、まだ何も言ってないよ」

「三尹......」


 安らぎを見せるような表情に俺は安堵する。


 三尹、今回は落ち着いてくれてるんだな。


しかし、次の言葉でその考えは一転した。


「で、二人は何をしていたの?」

「え?」


 明らかに俺と天野さんがキスをしていたことをわかっている上でのこの質問。


 それは俺たちからしたらとどめの言葉だった。


「優君は椎名ちゃんと別れて私と付き合うことになったから」


 なんて返したらいいのか躊躇したところに天野さんが勝手なことを言い出す。


「ちょっと! 天野さん! んぐっ!」


 天野さんは俺に抱き着き手で口をふさいでくる。


 真っ赤な太陽のようなブラジャーがすぐそこに!


「椎名ちゃんも前々から分かっていたでしょ? 優君が私のことを目で追っかけていたこと。所詮、椎名ちゃんは私と付き合うまでの繋ぎに過ぎなかったんだよ」


 違う! 違うのに! 後ろから完璧にヘッドロックをかけられ、身動きが取れない!


 三尹! 俺のことを信じてくれ! そんな女の言葉を聞くな!


「......だ」


 三尹がボソッと何かをつぶやく。


 三尹?


「......そうだったんだ、やっぱり!」


 その時、三尹の表情からは普通の笑顔がなくなった。その代わりに狂気の笑顔が見えた。


「でも、でも! 諦めないから! 優くんは私の王子様だから! 絶対に私と結ばれなくちゃいけないの! その女! その女が邪魔なら! ヒロインである私が! 優くんを助けてあげる!」


 気が付くと三尹の手には大きな業務用のカッターが握られており、今にも飛び込んできそうであった。


 流石の天野さんでも三尹がここまで怒り狂うと思ってなかったみたいで、変わり果てた三尹の姿を見て放心状態になっていた。


「んー! んんー!」


 くそ!


 何とかしようと足をジタバタさせてみるが、天野さんは黙ったまま動こうとしない。


「待っててね優くん。今助けるから!」


 やめろ三尹!


 俺の心の声は届かず、無情にも三尹は走り出した。


 体が熱い。世界がスローモーションに見える。


 俺の目の前まで来てカッターを振りかざす三尹が悲しそうな顔をしながら嬉しそうに見えた。


 三尹......なんで......


 スローモーションが終わり、時が早く進む。


 寸前のところで天野さんが動き出し、後ろに逃げる。


 そして、天野さんを狙っていたカッターは、


 当然のように俺の体に刺さった。


「いたた......なんでこんなことになったのかな」


 幸い、刺さった個所が太ももで命に別状なはいと思うが、出血と三尹に刺されたという事実が俺の心に突き刺さる。


「優くん!」


 慌てて心配そうに近寄る三尹。


 その姿を見てやっと冷静になってくれたと思ったが、どうやら違ったみたいだ。


「でも心配しないで」


 突然、自分の腕に切り込みを入れ始める三尹。


「......なにをして」

「優くんが流した血の分は私があげるから」


 そういい、自分の腕の傷と俺の太ももの傷を合わせる。


 く、狂ってる。


「あはは、どうやら椎名ちゃんは私が思っていた以上にやばい子だったみたいだね」

「うるさい、黙れ」

「あはは、どうしようかなこれ」


 立ち上がり再び見合う二人。


 まさか、まだ続けるのか?


「何をしようと、優君は私のものだから」

「優くんは私の主人公だ!」


 その言葉を最後に俺の中の何かがバラバラに壊れ崩れる音が聞こえた。


「もういい。もうやめてくれ」

「優くん、待ってて。すぐ終わらせるから」

「もう聞きたくない」


 俺は三尹の手を払いのけ、激痛が走る太ももを抑えながら走り出す。


 もう嫌だ! もう嫌だ! もう嫌だ! もう嫌だ! もう嫌だ! もう嫌だ!


「なんで......なんでなんだよーーーーー!」


 俺はただ、漫画に出てくるような青春を送りたいって思っただけなのに!


 俺を追いかけてきてまで復讐したかったのかよ!


 俺はただ、クラスのマドンナ的な女の子に一目ぼれして、恋をしただけなのに!


 あんな自分本位な性格だったなんて!


 俺はただ、誤解を招いてしまっただけなのに!


 何も言わせてくれないまま一方的に感情を発散させて来るのかよ!


 もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ。


 俺は佐倉とも、亮介とも、天野さんとも、仲良くして、三尹と付き合っていきたかっただけなのに......


 青春なんて糞くらえだ。



三尹はヤンデレタイプです。

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