カレー
「こうか?」
溝に棒を刺していく。
「あ! 優君、こっちにきて!」
「優くん! さきにこっち!」
我先にと俺を呼ぶ二人。それを見てどっちから行くか悩む。
「えー......」
彼女だし、三尹から手伝うべきだよな。
俺達はテントの設営をしていた。
「ありがとう、優くん」
久しぶりにこんなまばゆい笑顔を見た気はする。三尹は最近怒ってばっかだったからな。
「べ、べつに―」
「優君! こっちも手伝って!」
「わ、わかったよ!」
流石の流石に、鬼寺先生は他の生徒の状況も見なくてはいけないみたいで今はいない。
だから、今は三人だけど。
「ありがとー。やっぱり、優君は頼りになるね」
一度手伝って教えてあげると、サクサク組み立てていく天野さん。
その手さばきなら自分でもできたんじゃ? そもそも一度立てたことがあるような気が。
......手。そういえば、天野さん。昨日、天智先輩からもらったはずの指輪をつけていないな。無くすといけないから持ってこなかったのかな?
そんなこんなで‘俺たち三人’の今夜の寝床は完成した。
本当にいいのだろうか? こんな三人が寝転がったらやっとのところに......
先生が知ったらどうなるか。
テントを立て終えたから少し休憩した俺たちは、事前に言われていた集合場所に向かう。
「全員集まったか? じゃあ、始めるぞ」
先生が始めたのは予定でもあったカレー作りの説明であった。
食材と料理器具をもらい早速料理をしていく。
―と言っても俺の出番が来る気配はなさそうだけど。
「じゃあ、私が優君のためにすごくおいしいやつを作るから、待っててね」
「天野さん! 私が作りますから! 天野さんこそ待ってていいですよ!」
ニンジンを取り合う二人。俺はそれを黙ってみるしかなかった。
「じゃあ、私たち二人で作るか?」
「そうですねって。なんで先生がいるんですか?」
「私一人で作って、一人で食えっていうのか? 冷たいなぁー青井は」
「別にそうは言ってないですけど」
なんでわざわざ俺がいる班に? まあ、もう当たり前になってきているけど。
性格が合わない三人が起こす烏合の衆のような光景。それも悪くないように見えてきた。
結局、俺以外の三人で作ることになった調理場には俺に居場所はなくなってしまった。
「あ、水がない」
「じゃあ、それくらい俺がとってくるよ」
ずっと待っているのも退屈だし。
「青井、場所はわかるか?」
「はい。大丈夫ですよ」
バケツも持ち、水道へ向かう。
場所は料理場からさほど遠くない所であった。
そこは俺と同じく、水をくんでいる二人組の先客がいるだけですいていた。
どうやら、みんなは先にやってしまっていたみたいだ。
「なあ、知っているか? 二組の話」
二組? うちのクラスだ。
「なんか男女で班を組んでいる奴がいるみたいだぞ」
......あ。
「まじで!?」
「ああ。二組は男女合同でもいいらしくて。て言っても、そんなことをしているのは青井ってやつだけらしいけどな」
俺のことだぁぁぁぁぁぁぁぁあ!
「やばいな、青井」
「しかも、女二人のハーレム」
「やば! 締めてやりてぇ!」
物騒な!
「ん? おい、水出しっぱなしだぞ!」
「急いでたんじゃね? 俺達も早く行かないとカレーが作れねぇよ」
「そうだな」
俺は一目散に逃げた。
やばい! 俺のことが噂になってる!
「あれれー? どうしたの優君? そんなに息が切れて? まさか、そんなに急いで水をとってきてくれたの?」
「流石だな。青井」
「優くん、優しい」
「ま、まあね」
......一人でいたら危ないな。なるべくみんなと一緒にいよ。
「「「「いただきまーす!」」」」
無事カレーは完成したが、これが最後の晩餐にならないといいけど。
「優くんおいしい?」
「うん。おいしいよ」
「よかったぁ」
三尹。そんなに喜んで。よっぽど気持ちを込めて作ってくれたのかな。
「優君、おいしいって思ってくれてるかな?」
天野さん?
「お、思ってるけど」
「そっか。よかった。ちゃんとおいしいって思ってくれるか、ドキドキしてたんだからね」
腕と顔を机につき、横顔で俺を見つめる天野さん。
そんなこと言われたら俺もドキドキして―
「ちょっと天野さん! 私の優くんをそんな卑猥な目で見ないで!」
「別にそんな目で見てないけどー」
「嘘! 絶対見てたんだから!」
「えー」
「天野さん!」
「椎名ちゃんこそ―」
喧嘩? なのか終わりのない、言い合いをする三尹と天野さん。
まったく二人は。
「青井、おいしいか?」
先生も!?
生徒と張り合う先生・・・・かわいいですね




