偶然
こうして、俺、鬼寺先生、三尹、天野さんの四人で登山をすることになった俺達は先生の説明通りにクラスの一番後ろからスタートすることになった。
俺には登山経験がほとんどない。
ほとんどないというのは、唯一したのが小さい頃で、その時はほとんど父さんに背負われていたのでろくな記憶がないからだ。
中途半端な傾斜。これがただの階段を上り続けることよりもきつく感じる。
「優くん、大丈夫? お水飲む? 休憩する?」
俺の顔色からきついのが伝わってしまったのか、休憩を提案する三尹。
やっぱり、三尹は優しいな。
「あはは! 椎名ちゃん、流石の優君でもまだそんなに疲れてないよ」
と思ったら、いつの間にか俺は運動音痴キャラに位置付けられてしまったらしい。
まあ、運動が得意ってわけではないけど。
「三尹ありがとう。天野さんの言う通り俺は大丈夫だから先に進もう」
「そうだぞ。こんなところで一々休憩していたら、いつまでたっても目的地につかないからな」
はい、と返事をする俺。
しかし、三尹はふーんといった、何か言いたげな反応をしていた。
三尹の提案を断ったことが嫌だったのかな?
「それにしても、先生と優君って仲が良くないですか? いつも授業の後とか一緒にいますし。バスの中でも」
天野さん!? いきなりそんな爆弾落とさないで!
確かに仲がいいのは本当だけど、それは先生がキャプテンイタリアンさんだと知った後で、それまではただパシられていただけだから!
でも、ここで中途半端な嘘をついたらまた三尹を心配させてしまうかもしれないし、嘘をつかない範囲で本当のことを。
「せ、先生の知り合いが俺と仲が良かったんだ。だから、先生は特別俺に厳しく......ね? 先生?」
これなら嘘はついていないぞ。
「まあ、そうだな」
だから、なんでそんな意味ありげな雰囲気を出すんですか!
「へぇーそうなんだ」
ほら、三尹の目がどんどん細くなっていく!
「ま、まあ、仲がいいっていってもゲームで知り合っただけだけどね」
しまった! これは逆効果か?
「何で知り合おうが、私はいいと思うがな」
なんであんたがそこに擁護するように首を出すんだ!
「先生、どんなゲームなんですか?」
流石、天野さん! うまく話をそらして......って、爆弾を落とした張本人だけどね。
「野原行動といって、孤島で資源を拾いながらバトルロワイヤルをするゲームだ」
内容を簡潔にまとめる先生。この回答には特に問題はないはずだ。
「そうなんですか! 面白そうなゲームですね。でも、なんでそんなに詳しいんですか? 優君と知り合いさんがやっているゲームですよね?」
なにぃぃぃぃぃぃい! そんなトラップが!
ああ、三尹の疑いの目がどんどん俺に!
「私もやっているからだ」
ああ!
「なるほど。優君と一緒にしたことは?」
どんどん掘られていく!
「あるが?」
先生!?
「じゃあ......」
じゃあ? これから何を言われるんだ? 別に先生とは何もやましいことなんてしてないよ?
「やっぱり二人は仲がいいんじゃないですか!」
「まあ、そうだな」
「ね? 椎名ちゃんも嬉しいでしょ?」
「う、うん」
へ? それだけ?
天野さんはずっとそれを聞き出そうと? 別に俺と先生の関係を疑っていたわけじゃなかったのか。
楽しそうに何かを話している三人。それを後ろから見て俺は安堵して深呼吸する。
ふぅ、よかった。
俺と先生はばれてもまずいようなことをしていないが、出会いが出会いだからな。知られるといけない気がする。
それに教師と生徒の仲が良すぎるとあらぬ疑いまでかけられてしまうかもしれないからな。
これでいい。
よし、気持ちの整理がついた。
「行くか! って、あれ?」
立ち止まって休憩をしていたら、三人の姿は見えなくなってしまい、代わりにいたのは思いもしない人物であった。いや、望んでいたかもしれない人物だった。
「何してんだお前」
「亮介?」




