キャプテンイタリアンが止まらない
好きな漫画のストーリー。
それは主人公がイケメンで要領がよくて運動もできて。みんなから愛されるような主人公が個性的なヒロイン達とハチャメチャな学校生活を送るというものだ。
それに比べて俺はどうだ。
もちろん、漫画の世界みたいに現実がうまくいくわけない。
でも、高校で好きになった子には彼氏ができて、中学からの親友とは喧嘩して。挙句の果てにはせっかくできた彼女ともあまりうまくいっているとは言えない。
いい関係を築けているのは鬼寺先生くらいだ。
名前も知らなかった後輩まで出てきて。天智先輩の紹介? これじゃあまるであの二人が主人公みたいだ。
もう忘れよう。
俺は俺なんだから。
付き合ってからはギクシャクしてるところがあるけど、付き合うまではそんなことはなかったんだ。
趣味も価値観もあうし、歩み寄っていけば三尹とうまくやっていける。
......と、思っていたんだけど。
「優君! 隣に座らない?」
「天野さん!?」
「ちょっと! 優くんは私と一緒に座るんです!」
「三尹!?」
バスの乗車口。二人に腕を組まれ、俺は狭い入口につっかえてしまう。
何でこうなるんだ......
今日は校外学習の登山キャンプに行く日。
山まではクラスごとでバス移動するのだが......
「天野さん! 放してください! 優くんは私の彼氏なんですよ!」
「椎名ちゃん。私たちは‘二人っきり’の実行委員で仕事があるの。だからごめんね」
俺は二人に動きを封じられていた。
三尹! ここでそんなこと言ったら他の人に!
天野さんもなんでそこを強調するの!?
後ろには列ができ始め、不満そうな顔をしている人もいた。
「ちょっと、二人とも! いったん中に!」
「何してるんだ!」
「先生!」
鬼寺先生登場! 先生ならこの状況を一喝して、
「青井は私の隣に座らせる。早くこっちにこい」
先生!?
結局、俺達は一番後ろの四人席に座ることになった。
俺と先生が真ん中で、俺の隣の左端が三尹で右端が天野さんだ。
普通教師って一番前に座らない?
でも、これが先生なりの助け舟だったのかな?
「さっきはありがとうございます。氷代子さん」
俺は二人には聞こえないように小声でそう伝える。
「馬鹿! ここでそんな呼び方するな!」
「すみません」
俺だけが知っている先生の二面性。
先生は普段は校則に厳しくて鬼教師と呼ばれるくらいだけど、家に帰ったらゲーム好きの優しい先生に変わる。
これは俺以外には知りようもないUMA。未確認先生だ。
それだけじゃなくて、もっと他にも知っていることはあるけど。
「あー! 二人で何話してるんですか?」
声が少し漏れてしまっていたのか、天野さんが声を上げて反応する。
「別に言うほどのことを話してませんよね? 先生」
ここは合わせてください!
少し考えた表情をする先生。その様子に心配することは、
「まあーそうだな」
なんでそんな意味ありげな風に言うんですか!?
「......優くん」
三尹もなんでそれくらいで怒るの?
その後も到着するまでずっとこの調子で乗車時間を過ごすことになった。
「はぁ、疲れた」
「何を言っているんだ青井。疲れるのはこれからだぞ?」
先生にそう言われ、俺は山を見上げる。
今から登る山の標高は約1000メートル。
と言っても、頂上までは登らず、回り道などをしてから山の中腹くらいでキャンプをするらしい。
なので、体力に自信のない俺でも心配はいらなかった。
毎年一年生の恒例行事らしいしな。危険なことなんてないだろう。
「ここからは班ごとにまとまって登れ。絶対に一人で行動をしないように。前には前のクラスの先生、後ろには私がいるからその間から出ないように」
先生の説明が終わり、皆それぞれ行動を始める。
先生は一番後ろか。流石にここまではついてこないよな。
俺は天野さんと三尹の三人班だから、それで行動して―
「青井班は私についてくるように」
「...」
「なんだ?」
「......実行委員ですもんね」
「そうだ」
どうやら先生は俺の側から離れるつもりはないらしい。
キャプテン......




