本屋
放課後、今日から一緒に帰宅することにした俺たちは本屋に寄り道をしていた。
「優くんの最近のおすすめは?」
「最近はねーこれとか?」
「へーどんなお話しなの?」
「これは―」
俺達で本屋と言ったら、これに限る。漫画コーナーで品定めだ。実際に中身を知っていなくても、どっちかが読んだことがあって内容を知っていたり、お互い読んだことがなくても表紙や裏表紙に描いてあるあらすじなどで面白そうかどうか判断をするのだ。
これがちょっとしたデートのようですごく楽しい。面白い漫画にも出会えるし。一石二鳥だ。
「じゃあ、私あっちも見てくるね」
「うん」
三尹が向かった先は少女漫画のコーナーだ。俺はあまりそっちに興味がないので待っていることにしたのだ。
「さて、他にないかな~」
現在、世に出ている漫画の数は簡単に把握できないほど多い。週刊や月間漫画雑誌の種類も豊富で漫画好きの俺からしたら時代に感謝だ。
その時、兄弟ものの話の漫画が目に入る。そこから連想してしまうものと言えば一つしかなかった。
「明莉ちゃん......」
俺はもう保育園の迎いに行くことはやめると決めたのであった。
明莉ちゃんには申し訳ないけど、亮介と仲悪くなった以上、そんなことする義理はないし、そもそも天野さんの情報を教えてもらう代わりにやったことだ。元々、もう天野さんに興味がない俺にとっては不釣り合いな話だ。
それに、俺にはもっと優先したいものができたんだ。
これからは三尹と―
回り道してる暇なんてない。
そろそろ、終わったかな? と思った時だった。
「ゆ~くん」
甘い吐息が耳元にかかり俺はビクッと体を振るわせる。
この声は!?
「天野さん!?」
「ピンポーン!」
振り向くと、そこには人差し指を立て正解ポーズをしている天野さんが立っていた。
「正解なんだけど、本屋でそんな大きな声出したら他のお客さんに迷惑だよ?」
「あっ......」
天野さんにそう言われ、周りのお客さんが迷惑そうな顔をしていることに気が付く。
「す、すみません。天野さんっ、ちょっと外で話そ」
焦った俺はとりあえず天野さんの手を引き、表へ出る。
「ちょっと......優君は強引だな~」
あ、手を......
「ごめん!」
とっさに握って手を放し、頭を下げる。
「別に怒ってないよ。それよりどうしたの? いきなり外に出て」
「それは......」
まずいと思ったから無意識に? 周りの人に迷惑だから?
「......天野さんはどうしてここに?」
なんて答えたらいいか分からなくなった俺はとりあえず話を間際らす。
「なに? 優君、私とおしゃべりがしたいの? 丁度良かった。もうここに用はないし、保育園に行くまで暇だし、一緒に行こっか」
「え? ちょっと!」
今度は逆に俺が手を引かれ、保育園まで行くことになってしまう。
本屋にはまだ三尹がいるのに!
「そういえば、保育園では最初に会った時以来、会ってなかったよね? たまたま時間が合わなかったのかな?」
「放課後、図書室に寄ったりしてて」
「へーそこで椎名ちゃんと出会ったんだ」
「......なんでそこで椎名が出てきたの?」
「別に? なんとなく、二人が仲良くなったところはそこかなって」
間違ってないから何も言えない......
って! 会話の流れに流されて、誤解を解けてなかった!
「ちょ、ちょっと! 天野さん!」
俺は手を振りほどき、無理やり立ち止まる。
「ん? なに?」
「俺もう迎えに行くのやめにしたんだ」
「ふーん、そうなんだ」
訳を言わなくてもわかったのか、それともただ聞かないでくれたのか、妙にすぐ納得する天野さん。だが、その表情はまだ何か言いたげな顔をしていた。
「じゃあ、俺戻るから」
逃げ去るように背を向け、俺は歩き出す。
「明莉ちゃんだっけ?」
しかし、唯一気がかりにしていた部分を弓矢のように的を射られ、足を止める。
「亮介君の妹ちゃんには、ちゃんと話してあげたの?」
「いや......そもそも俺がする義理はないし......」
「そうだね。優君は何も悪くないよ。でも、相手はまだ小さい子供だよ? 優しくしてあげないと」
! そうだった。俺は何を勘違いしていたんだ。明莉ちゃんはまだ五歳だぞ? 弱みがあるからって勝手に明莉ちゃんを先生のように崇めて。
明莉ちゃんは少し大人ぶっている節はあるが、俺と亮介が喧嘩をしているのを心配して泣きそうになるくらいの小さな子供だ。それに俺はなんてことを。
「ごめん! 俺が悪かった! 天野さんの言う通りにするよ」
「もう、そんな顔しないでよ。それに謝る相手は私じゃないでしょ? 明莉ちゃんに謝らないと」
「......そうだね」
よしよし、俺の頭をなでる天野さん。その大胆な行為に俺はつい頬を赤らめてしまう。
やっぱ、天野さんには敵わないな。




