報告
まるで一人カラオケを終えた後のような気分で浴びたシャワーは最高の睡眠導入剤で、俺はフカフカのベットに吸い込まれるように倒れこむ。
「ああ、今日は最高の一日だったな」
なんてったって人生初の彼女ができた日だからな。しかも、相手は三尹。これ以上最高なことなんてないだろう。
やっと。やっと俺の青春が始まる。これからは毎日一緒に二人で図書室に集まって......って、それじゃあ今までと同じか。じゃ、じゃあ、デートをたくさんして、もっと仲良くなって、それからは......
だめだ! これ以上想像したら寝れなくなる!
ん? なんて考えてたらちょうど三尹からメッセージが。
『優くん、今日は水族館誘ってくれてありがとう。
楽しかったよ。それに......
優くんの気持ちを優くんの口からはっきりと聞けて嬉しかったよ......
なんか恥ずかしいな///
もうこの話は終わり!
それでね! 今話したいことは明日から一緒に帰れないかなっていうお誘いなんだけ
ど......
ダメ! やっぱり、今日はもう返信しないで! これ以上ドキドキしたら寝れなくなっちゃう!
じゃあ、明日も学校でね。
おやすみ、優くん』
はは。ドキドキして寝れなくなっちゃうって。かわいいな俺の彼女。
この気持ちを誰かに伝えたい。いや、自慢したい!
けど、亮介とは今気まずいし、クラスのやつらなんかに話したら殺意の目で見られるだろう......うう。
「あー! 自慢したい! 俺の彼女を誰かに自慢したい!」
その時、携帯の着信音が鳴る。
寂しくなって電話してきたのか? やっぱり、三尹は自分の本音を伝えるのが苦手なんだから。しょうがないな。
「もしもし!」
『今日もやらないのか?』
「え?」
それは予想外の声だった。
「キャプテンイタリアンさん?」
『どうした? 今日はイタリーちゃんって呼ばないのか?』
そうだった。イタリーちゃんって決めたんだった。でも......今呼ぶのはな。
「やっぱり呼びにくいのでやめることにしました」
『そうか......私はなんだかんだ気に入ってたんだがな』
「そうだったんですか?」
あれ? 意外と悲しそう?
『で、どうするんだ? 今日もできないのか? 昨日も連絡待ってたんだぞ』
「じゃあ、やりましょうか。話したいこともありますし」
『なんだ? 話したいことって』
「とりあえず、ゲーム開きましょう」
お馴染みの野原行動を始める。俺たちのテンプレの初手は敵のいない所での物資集め。そこが最大の会話するチャンスであった。
『それでなんだよ。話したいってことで』
「ふっふっふ。キャプテンイタリアンさん。ゲーム終了ですよ」
『は? まだ私もお前も死んでいないだろ』
「違いますよ。そっちの話じゃないです」
『どの話だよ。もったいぶらずに教えろよ』
食いついてる、食いついてる。キャプテンイタリアンさん驚くだろうな。
「好きな人ができたので告白しました。なので、この前した約束はもうクリアです!」
『......は?』
いいぞ! めっちゃ驚いてる!
「前に約束しましたよね? 好きな人ができたら告白をするって。あ、そういえば。結局あれ以来、キャプテンイタリアンさんと彼女を作る練習をしてなかったですね。でも、こうして彼女ができたんで、結果オーライですね」
キャプテンイタリアンさん、俺にいろいろ教えてくれてたからな。きっと、喜んでくれるだろう。
『告白......成功したのか?』
「しましたよ! 失敗することを前提にしないでくださいよ!」
「......そうか」
気のせいか元気がない。あっけなく彼女ができたことに物足りなさを感じてるのかな?
「どうしたんですか? 喜んでくださいよ」
「......そうだな。おめでとう。よくやったな」
「はい! キャプテンイタリアンさんのおかげですよ!」
☆
「やってられねえな」
冷蔵庫の奥、引っ越し祝いでもらったまま放っておいた缶ビールを飲めもしないのに開ける。
「うぇ、まじぃ」
酒を飲むのなんていつ振りだろうか。
......認めよう。二度目の恋だったと。
一度目は散々な恋だった。だから、二度目は慎重だった。
年下を好きになったのも、その方が優位に立てて自分のいいように操作ができると無意識に思ったからかもしれない。それか予想外の気まぐれだったか。
どっちにしろ、自分の生徒を好きになってしまったんだ。すぐ相談をしてくるような頼りない男を。
もういっそ、ばらしてしまおうか。そうしたら、逆転のチャンスがあるのだろうか?
いや、それはないか。
「だって、私は鬼教師だからな」




