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青春の始まり?

 それは休日明けの月曜日から始まった出来事であった。


「青井くん、今日から私も一緒に、お昼食べてもいいかな?」


 いつも通りの昼休みの教室。突然、発せられた椎名の一言でクラスのバランスが崩壊する。前のままの姿の椎名であったら、特に注目はしなかったであろう。しかし、クラスカーストトップ3には確実に入るであろう見た目になった今の椎名ではそうはいかなかった。


 ざわつく教室。中には亮介と同様、密かに椎名のことを狙っていた男子もいたのかもしれない。


 一方、注目を集めている当の本人の椎名はそんなことに気づいておらず、目の前の男のことしか考えていないようだった。


(青井くんともっと仲良くなるためには、もっと自分から近づいていかないと! それに友達の上谷君とも仲良くなれれば、放課後とかにも一緒に遊びやすくなるかもしれない。こないだ、青井くんに今度三人で遊ぼうって誘ってもらえたし)


「あ、もちろん、上谷君も一緒に」

「もちろん、もちろん! 大歓迎ですよ! なあ? 優」

「あ、ああ」

「どうやら、役目を果たしてくれていたみたいだな」

「え?」


 椎名に聞こえないよう静かに耳打ちをする亮介。しかし、椎名の目的は優であり、亮介はついでに過ぎなかった。


「何話しているの?」

「いや、いや。こっちの話ですよ。じゃあ、早速席を作りますね」


(優には感謝しきれねえな。早く俺も新しい天野さんの情報を仕入れてこなければ)


 二人の魂胆の上の空。一人勝ちした優であった。


 他にももう一つ。クラス内で変化したことがある。


「青井! ちょっと来てくれ」


 それは授業終わりの休み時間であった。鬼寺の呼び声がかかり優に悲観の目線が集まる。


「またか。式には参加するよ」

「なんのだよ!?」


 亮介にも見放された目で見られた優はしぶしぶ席を立ちあがる。


「先生、何か用ですか?」

「これを職員室まで運ぶのを手伝ってくれ」

「これ、ですか......」

「ああ」


 優は教卓に置いてある「これ」に目を向ける。これはもはや最近の恒例行事とも呼べるものであった。


「あのーこの量は、俺がわざわざ持つほどの量には見えないんですけど」


 それは今日の授業で回収したクラス人数分の課題プリント。つまり、たった三十枚ほどの紙の束であった。


「うるさい! 私は常に両手を開けていたい派なんだ」

「どういう派閥!?」


 鬼寺は他にも課題提出がない日には無理やりに授業で使う資料や教材を持ってくることでこの恒例行事を成立させていた。


 優も鬼寺によるパワハラとも呼べる行為に生徒と先生という立場ながら物申すことを許されてもいいんじゃないかと考えたが、この前の朝礼前に起きた椎名との事件で目をつけられたのだと思い文句を言えずじまいでいた。


 そして、こちらの当の本人は優とは全く違う考えを持っていた。



(電話で青井に担任のことを猛プッシュしてしまったからな。私と話しやすいように接点くらいは作ってやらなければ。それに決まった時間に二人だけの決まった作業があるなんてまるで恋人みた―ゲフンゲフン......今のはなしだ)


「さあ、行くぞ」

「はい......」


 プリントに束を手に持ち二人は並んで歩き出す。幸不幸にも、その姿は優が憧れていた漫画に出てきそうな青春っぽい姿であった。



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