ブラック社畜エンジニアが100年前のFラン学生にトラック転生する話
このシリーズは設定厨が思い付いた設定を元に第一話分だけでっちあげてみた、というシリーズです。
設定だけなので続きとか考えていません。
もし、続きが読みたいという奇特な人が居たら、適当にパクって自分で書いてみてください。コメントに作品URL張っていただければ読みに行きます。
「くそう、なんだって俺がこんな目に……」
システムトラブルで急な出張を命じられて行ってみたら、実はシステムトラブルではなくクライアントのブラックさに愛想をつかしたシス管担当社員が行きがけの駄賃にがっちがちのセキュリティを社内システムに仕掛けてドロンしていたという極めつけの地雷案件だった。
俺が到着したときにはすでにクライアントのえらいさん(ド素人)の指示で認証システムが雑にアンインストールされており、起動トークンがフォーマットされて関連システムが軒並み起動不能になっていた。再構築しようにもサポート切れ、契約切れのプロダクトだらけでアクティベーションすらままならない。
俺が作業に入ってからもブラック幹部の無茶振りはとどまることを知らず、無能な働き者の取り巻き部下たちにしこたま作業を妨害されることに。
結局、システムの立ち上げをあきらめてデータのサルベージをすることになったが、その作業が思いのほか長引いて客先を出たのが0時を回り、予約していたホテルはチェックイン時間超過で無断キャンセル扱いされてしまい、予約した部屋は当日客に回されてしまっていた。もう満室になってしまっていたので、キャンセル料だけしっかりとられて寒空の下外に放り出されて現在に至る。
移動時間も合わせると20時間近く飲まず食わずで働かされ、寝不足と疲労で意識がもうろうとしたまま、真っ暗で無人の田舎道を歩いていた。慣れない道だったからなのか、極限まで疲れていたせいなのか、あるいはその両方か、俺は自分でも気付かないまま歩道をはすれて車道に出ていたらしい。背後から強烈なヘッドライトの光を浴びた。
振り向くと、猛スピードで突っ込んでくるえらく旧式のEVトラックがすぐそばまで迫っていた。とっさに運転席を見るとドライバーは乗っているのだが居眠りしている。自動運転任せにしているに違いない。
覚醒仕掛けの意識の中でそんなことを思った次の瞬間、強烈な衝撃とともに俺の意識はブラックアウトした。
目が覚めると、俺は何もない真っ白な空間で宙に浮いていた。
「ここは……どこだ。無重力ということはまさかラグランジュステーションか?」
誰にともなくつぶやいたところ、どこかともなく女性の声が聞こえてきた。
「いいえ、違います。ここは時限の間です。あなたは先ほどトラックにはねられて死亡したのです」
ん? 死んだのになぜ俺は自我を保っているんだ?
「おい、それはどういう……というか、そもそもあんたは誰なんだ」
「私はこの次元の管理者です。名前もないのですが、この部屋では女神と呼ばれることが多いですね」
女神とはまた非科学的な……。いやしかし、考えてみればこの部屋の存在そのものが非科学的だ。端が視認できないほど広大な無重力空間もそうだし、さらに部屋全体がまんべんなく明るいなんて仮想空間でもありえない。
「女神……? もしかして、おとぎ話でよく聞く転生ってやつなのか?」
「ええ、そうですね。概念としてはそれが近いです。今ここにあるあなたの記憶を、脳死状態になった100年前の学生に移植します」
「一つ聞いていいか、なんで俺なんだ?」
「因果律を改変するのにそれが一番コストがかからないからです。因果律の書き換えで最もコストがかかるのは、他の観測者からの隠蔽なのですが、経験を積んだ人間一人分の意識が即死して失われる瞬間、かつ観測者がいないタイミングというのは非常にレアなのですよ」
そうか、人通りも監視カメラもない深夜のド田舎、トラックの運転手は居眠り、自動運転システムは旧式でセンサもせいぜい赤外線動体センサ程度で人間だと認識できるかどうかも怪しい。そんな誰も観測していない状況で人が死ぬなんてレアなシチュエーションは今どき世界中探してもそうそうなさそうだ。
「なるほどな……。いやまて、飛ばす側の意識はそれで確保できたとしても、飛ばす先はどうなんだ?」
「それも問題ありません。あなたの意識を飛ばす先はあなたの死んだ時点からおおよそ100年前の日本です。観測機器が未発達でどうとでも割り込めますから」
「100年前……ってことは世界大戦前か」
「はい、その通りです。あなたが何もしなければ10年ほどで世界大戦が勃発して日本はとても酷いことになります」
「なるほど、読めてきたぞ。死ぬはずだった意識を救う代わりに、世界大戦を食い止めろと、そういうことなんだな」
「はい、理解が速くて助かります。お約束のチートスキルとして、解析スキル、映像記憶スキル……そうですね、あとは科学と歴史系統の辞典データをいくつか記憶に焼き付けておきましょうか」
「ワンマンアーミーできそうなスキルは無理なのか? 超反射神経とか筋肉増強とか」
「それは因果律のゆがみが大きくなりすぎます。サヴァン症候群の副作用で収まる範囲であれば安全なんですが、肉体改造を伴うような能力改変は因果律の反動リスクが高すぎます」
因果律、ねぇ……。歴史を変えるのは因果律のゆがみとやらには反しないのだろうか。
「納得いってないみたいですね。転生処置は世界そのものの外科手術みたいなものと思ってもらえばいいです。たくさん切って大掛かりにやるよりも、注射一つでどうにかした方が傷は少ないでしょう」
わかったようなわからんような……。まあ、細かいことを気にしてもしょうがないか。大事なのは、能力の方だしな。
結局、もらえる能力は以下に決まった。
・超計算能力
・映像記憶能力
・五感情報分析能力(いわゆる鑑定スキル)
・理化学、歴史学系統の辞書データの静的記憶領域への焼きこみ
「本当に理解の速い方で助かりましたわ。よっぽど苦労されてきたのですね。本人領域だけの理解力がここまで高い方がこの時代にいるとは思いませんでした」
「まあ、ろくでもない職場で体一つでどうにかするなんて前時代的なスタイルで10年以上こき使われてきたからな」
「ふふふ、転生したらこき使う側に回ることもできますよ。それじゃあ、意識を移しますね」
「そりゃあ楽しみだ」
俺の意識は再び闇に溶けた。
転生もので導入を叙述トリック的な感じにしたらどうなんだろうと思いついた設定です。
100年前への転生というのはあくまで主人公視点から見た話で、舞台設定的には100年後の世界から現代日本に転生してくる話になります。作中で世界大戦と言っているのは2030年ごろに勃発する中国とアメリカが引き起こす第三次世界大戦という設定で、太平洋戦争ではありません。
転生ものの知識チートは読者の知っている何でもないことが転生先ではチートになるというのが基本ですが、この設定だと現実にあったらチートだろうと読者が思うことが主人公にとっては何でもないことになります。
主人公の心中語りが「何言ってんだコイツ」という内容になり、それによって起きる異化作用をうまく表現に取り込むと新機軸の物語にできるんじゃないかと。




