さいどえむ
答えがわかっているんで、面白みがないかもしれないですけど、谷口という人間を楽しんでくれたら嬉しいです。
女の子泣かすって気分悪いな。泣いてなかったかもしれないけど、詰んでないか?ダイスケほどの大金持ちのとこの嬢ちゃん泣かすって…終わったよな。家族にだけは迷惑かけたくなかったのに、土下座で許されないよな〜どうしよ…
「谷口くんそこじゃまー」
「体大きいんだから塞がないでよー」
「ああ、ワリィ」
見るたびに髪色が茶色に近づくギャル達に道を譲る。 この学校を出て言ったら、こうやって小金持ちのギャル達と突っつき合うこともできなくなるのか。
「おい谷口〜どうしたんだ?そんな馬鹿げたツラしてよ?」
「バカにはわからんだろう考え事だ。ほっといてくれ」
そう言って俺は机に突っ伏す。ダイスケは俺から話しかけたが、コイツは外部だとか関係なく話しかけてくれたな。あれが中一だったからもう3年も前の話になるというのは感慨深いな。それももう終わるんだろうけれど。
「しっかしどうすっかな…」
誰にも聞こえてしまわないように小さくは不安をつぶやいてみるけど、何の解消にもならない。まあこっから頑張ったってあんまり効果が期待できそうにないからなぁ…まあ一応土下座はするつもりだけど。
しかし、俺はよく3年間やってこれたな。ダイスケという大きな存在があったおかげが多かったんだろうけど、同学年に2人と1個上に1人、一個下にも2人と、一番危ない一年は5人から身を潜めてたんだぜ。よく頑張れたよ。こうやって甘やかして、俺なら大丈夫だなんてどっかで思ってたからこうなったんだろうけど…それでも今までの俺を褒めてやりたいな。小坊の時に親父がどっか行っちまったから俺が家を支えなきゃって、奨学金という名のお小遣いがもらえる金持ちばっかの私立に合格して、そっからも少しでも多く搾り取ってやるために勉強漬け。でも家族の笑顔が見れて幸せだなんて生活も終了。退学になったあとに他の高校に行くのはあまりにも金の無駄遣いすぎるから、いっそバライティタレントにでもなるかな。俺の家の環境と学校との対比を適当にちょこちょこっと本でもかけば印税でガッポガッポだろうし…でも社会的にも消されたらどうしようもないな…そこは土下座でカバーできるか?いや、靴も舐めればいける…はずだろう。
今後の人生も決まったことだし、これからどんどん勝ち組として生きて行くだろう人間の顔でも拝んでおこうと、俺は顔を上げる。…みんな輝いてる。お互い両親に隠しながら交際をしているラブラブカップルがイチャつく姿も、いつもは爆発してしまえと思っていたが今は少し笑えてくる。文字通り教室の隅で俺でもよくわからん固有名詞を吐き出している太り気味のあいつらも、思い出の1ページだったんだな…急に寂しく思えてくる。
「アイツに挨拶を…しに行ったら退学だな。あそこ先輩いるんだったらどうしたらいいか…」
本を書くときに時間をかけないためにも頭をあまり使いたくないけど、俺をずっと支えてくれた恩人のためだからな。思考を張り巡らせる。
「…アイツももう味方かわかんねぇからな〜先輩に気があるみたいだし…ほっといてやるのがアイツのためかな」
ちょっと悲しいが、俺の頭はこう思った途端に考えることをやめたようで、これ以上の答えなんて浮かばない。
「オマエらマジでサンキューだったわ」
少し気が早いけど、俺が後どれだけだけここに居れるかなんてわからない。恥ずかしいから小声だけど。
「…なんだなんだ?」
教室がざわめき出したと思ったら、急に静まる。気になった俺は、クラスメイトの目線の先を見てみる。お別れの時間みたいだな。
「…神楽坂先輩」
ゆっくりと廊下を歩いて、無言で俺の前までやってくる。座ってちゃダメなんだろうけど、俺は威圧で立つことができない。大事な時に役立たずな足だよ。
「谷口くん…」
ああ、死刑囚が看守に呼ばれる時ってこんな感じなんだな。
「…その、ごめんなさい」
「へ?」
さすが金持ち、礼一つにしてみてもものすごく綺麗だ。ーじゃなくて、言ってる意味がわからない。
「…イマイチ飲み込めないんですけど」
「あそこでご飯食べてたのも私が悪かったし、勝手に泣いたのも私が悪い…気分悪そうにしてたから、私のせいかなって思って…」
狐につままれるとはこのことか。
「え、いや。僕も物凄く悪かったですし、もし許してくれるんだったらお互い水に流してというか…いや、許してくれるんだったらのことなので。でも、家族だけは許してほしいな〜なんて…」
「水に流れるんだったら、願ったり叶ったり。むしろ私からお願いしたいくらいだけど…家族だけは?わからない…」
「な、なにもないですよ…ははは。ま、まあ!この件はもうなかったということで、おしまいということで」
「そうしてくれると、私が嬉しい。心が広い人で嬉しい」
「じゃ、じゃあ教室まで送ってあげますよ…」
「大丈夫。気持ちがかもらっておくから。…また図書室きてね」
「は、はいっ!是非行きます!」
なんかよくわからんけど、本を書く必要は無くなったみたい?
ここまで読んでいただきありがとうございました。明日も頑張ります。




