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短くなってゆく
ゆるしてたもう
「中条さん、ありがとね」
先輩のところで昼を済ませて、教室に戻ってきた。
「答えが出ましたか?」
「無理っぽいですね。時間かけても難しかったです」
俺が一人で解けたものでもないし、もう一度見直しでめすれば簡単に答えは出るだろうから敢えて言わなかった。それに解き方は公開されてないらしいし。
「そうですか」
頑張ってね、中嬢。
「あっ、そうだ。中条さんに聞きたいことあるんだけど…いいかな?」
「いいですわよ。私にできることならば」
「もう少しで姉様の誕生日だからさ…女の子は何あげれば喜ぶかなって。参考にさせてくれないかな?」
そろそろ4月も終わってくる。姉様の誕生日は5月の13日だから、そろそろプレゼントとかも考え始めないとな。
「私に聞くのですか?…愛情がこもっていれば喜びますわよ」
少し考えるそぶりを見せたあと、そう言った。
「愛情か…ありがとうね。参考にするよ」
ぐにゃぐにゃでどす黒く染まった愛情を形にするほど難しことはないだろうな。
愛情とか一言言われたって、どうすればいいかわからない、手詰まりだな。変に俺が知らないものを渡したとしても中途半端にしか成り得ない。金も無駄になるし、姉様に気を使わせてしまうだけだ。はて…どうしたものか…
で、何で俺はこんなとこにいるんだ。もう何度も見た狐面が立っているし。おかしいな、俺は姉様の誕生日プレゼントを考えてたはずなのに。
「ああ、そこにでも座ってくれたまえ」
俺は促されるようにソファに腰掛ける。
「度々呼んですまないね。これで最後だから安心してくれ」
早く俺を家に帰してくれ。時間感覚はなかったが、壁にかかった時計で時間は分かっているんだぞ。
「君には前学年長としてお墨付きを与えて欲しいんだ」
「と、いいますと?」
「君と齋藤さんと中条さんの3人以外だとどこかしらから不満が上がるからね。それを抑えるために君の名前を使おうってことさ」
実にわかりやすくていいんだけど、流石にそれは俺を警戒してなさすぎじゃないかな。もしかして俺、そんなに愛想笑いうまかった?
「僕の名前を使うことによってみんなが納得するのなら、どうぞ使ってください」
そして俺を家に帰してください。
「ありがとう。君の協力を感謝するよ」
握手を求められたから、軽く握ろうとしたんだけど強く握ってきやがった。あんまり痛くはないけど、離せない。こんにゃろ。
「では、失礼します」
これで最後だということで、今までに何回も言ったセリフも幸せがこもってしまう。
まあこれも、俺が警戒してなさすぎただけなんだったけど。いやぁ、一杯盛られたね。
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