白龍
「龍布殿は宴に行かないのですか?」
夜道をゆったり歩く龍布。
その横から張篭遼が声をかける。
「龍布殿だって活躍したのに」
「ああ言うのは苦手。あなたは行ってもいいのよ」
「いや抜けたとは言え、流石に元敵軍が参加するのは……」
静かな夜の街を歩く二人の後ろから玲姫と笠宮椿が走り寄ってくる。
「姉上〜! 待ってよー」
「龍布殿ー」
龍布は立ち止まって振り返った。
追いついた妹の頭を撫でてから、椿に目を向ける。
その視線に椿は何も言われずとも、頷いた。
「ええ、調べてきました。東拓葉緒の行方を」
「で、どうだった? 姉様は」
「行方不明、とのこと。龍布殿が殴り飛ばした先で曹沙と紹美の派閥員達による入念な調査が行われていましたが、結局見つからずじまい」
「そっか」
不安がる妹の頭を撫でて、自分も心を落ち着かせる。
「恐らく戦場に一度も姿を見せなかった軍師梨樹が手助けをしたのでしょう。逃亡して隠れるまで、負けた時のために準備していた」
「……言い換えれば、姉様は負けることも視野に入れていたということ」
「そういう事になりますね。魔王の心と言うのはわからない。わからないからこそ、人は魔王を排除しようとするのでしょうね」
「……………」
抱きついてくる妹。
彼女だって当事者だ。義理の姉のこと、そして……。
「秀倉呂布はどうなったの?」
「そちらも行方知れず。東拓派の連中はそのほとんどが散り散りになって姿を消しました。中には新庄文胡のように、関西優香が負けた時点で派閥を見限って周囲にいた兵達を集めて姿を消した者も」
「みんなどこに行ったのはわからないって状況なんだ」
「ええ。足取りが追えるのは西拠点にて裏切られた牛松車騎くらいで」
「ふーん」
「それともう一つ……これは龍布殿に関係ない事かも知れませんが」
「なに?」
「かつての主流派。黄宮一派と高坂一派の残党が怪しい動きを見せています」
「うーん、どうでもいいかな」
龍布は視線を逸らす。
本当につまらなくて、どうでもいい話だと思っている。
「失礼しました。ではこれからどうしますか? 派閥を作ったりは……」
「それもナシ。興味ないし」
龍布がこの学園に来た目的は二つ。
東拓葉緒に誘われたからなのと、好き放題暴れられること。だから派閥とか派閥争いにも興味がなかった。
戦う機会がとりあえず欲しい。
「けれどしばらくは大人しくなりますよ。どの勢力も力を溜め込む時期ですから」
「そ」
龍布は歩き出す。その後ろを張篭遼、笠宮椿、天宮玲姫が付いて行く。
龍は何かに囚われない。
望むものは苛烈で、刺激的なもの。
ただその脳裏には一つ、懸念があった。
『あなたの暴れたい、戦いたいと言う心の疼きはこの結果を産む感情だと気づいてないの?』
『殺したいほど甘い』
姉の言葉が忘れられなかった。
ずっと頭の中をぐるぐるしている。龍布もまた鳴りを潜める。




