らびっと♡パニック
うさうさ
ぴょいぴょい
うさ
ぴょいぴょい
「ふふっ、にんじんモグモグ! えらいねぇ〜!」
二人のおんなのこは、うさぎがいっぱいの楽園でかけまわります。
にんじんをポリポリ食べるうさぎさんたちに二人はニコニコです。
ネッコロがると背中やおなかの上に乗っかってきてくれます。コロコロとした丸くて小さな体がかわいらしくて仕方がないようすです。
かわいい。
かわいい。
もふもふ。
ふわふわ。
「わ〜! みてみてつかさちゃん! この子わたしのことが好きなのかな?」
つぐみちゃんが正座して座るとヒザの上にぴょんと乗ってきました。
それを見てむっとしたつかさちゃんは、すぐに自分も正座して座ります。けれどうさぎ達は来ませんでした。
どうして?
「どうして……? うう〜……」
うさぎはみんなつぐみちゃんの方にいます。
つかさちゃんは泣き出してしまいました。ガマンしようとしましたが、たえ切れずポロポロと泣いてしまいます。
そんなつかさちゃんに、つぐみちゃんはゆっくりと近よります。
「ほら、大丈夫だよ、つかさちゃん」
「つぐみちゃん……?」
「ゆっくりとね。うさぎは怖がりだから、ゆっくり、優しくね」
つぐみちゃんはうさぎを抱いて、つかさちゃんの所につれて来てくれたのです。
大好きな友達が泣いていたらすぐに助ける。つぐみちゃんは優しいおんなのこです。
「ほら、ゆっくりね」
「う、うん」
つかさちゃんは、つぐみちゃんから渡されたうさぎを慎重に両腕で抱き上げました。
つぐみちゃんの言う通りにすると、うさぎは逃げずに、つかさちゃんの腕のなかにスッポリはいりました。
ヒザの上に乗せて、うさぎの背中をなでると、うさぎはつかさちゃんの顔を見上げてくるのです。
「わあああ〜〜!」
「あ、つかさちゃん。あまり大きな声は出さないようにね。うさぎさんがビックリしちゃうから」
「うん」
うれしい気持ちをガマンして、しずかに、ゆっくりとうさぎの背中をなで———
「って、ちがああああああああああああああう!!!!」
ハッと気づいて曹沙は大声をあげて立ち上がる。
兎達が一斉に逃げ出して紹美の元に集まって行った。
「あー、ほらダメでしょつかさちゃん。うさぎさんは耳がいいんだから、大きな声が一番苦手なんだよ?」
「全部の漢字に読み仮名振ってる児童図書の世界観から出て来い! 私ら東拓を倒しに来たのよ⁉︎」
「ハッ!」
そこで紹美もハッと気づいた。
「あ、あれ……そう言えば。私達今まで何をして……」
「何か幻覚のようなものを見せられていた気分だわ。黄宮一派にもそう言うのがいたけど、今回のは戦意を削ぐ目的があるはずよ」
「じゃあこのうさぎさん達は幻覚……? いやでも、触れる」
静かに近づいてお腹に片手を差し込み、もう片方の手で兎の丸い背中と尻を撫でるようにして抱え上げる。紹美は正しいうさぎの抱え方で、白い天使を持ち上げてみる。ちゃんと重みもあってふわふわした感触がする。
ふへら、と紹美の顔が弛んでしまう。
「こらー! 気を抜くな!」
「ハッ! そうだったそうだった。危ない危ない」
「術師がいるはずよ。そう言えばさっき梨樹が言ってたわね。二階部分は楽しい催しをしてるって」
「これがそうなの?」
しゃがみ込んでゆっくりと床に兎を降ろした紹美は、曹沙と一緒に周囲を警戒する。
その間にも兎達は紹美の周りに集まっていた。どうやら紹美は兎に好かれるタイプのようだ。
「———ふふっ、優しい心音を持っていらっしゃるのですね」
新しい声が聞こえた。
すかさず曹沙は剣を構える。
紹美はゆっくりと剣を引き抜きながら、兎達を守るように前に立つ。だがしかし兎達は紹美の横を通り抜けて、声がした前方の方へと行ってしまった。
うさぎ達が集まるところに、一人の白髪の少女が立っていた。桃色の和服を着ており、真っ白なうさぎ達が周りに集まると絵になった。
「紹美さんが言った通り、この子達は音に敏感です。どんな小さな音でも聞き取るために耳が大きく、長く進化したのですから。そして心の音、心臓の鼓動や脳から発せられる脳波も感じ取る事ができます。紹美さん、あなたの音はとても優しくゆったりとした音なのですよ」
「……アンタは?」
曹沙は警戒しながら長々と喋りながら現れた少女に、ぶっきらぼうに質問する。
優しい微笑みを浮かべていた少女は曹沙の声を聞くと一変、見下したように目を細めて口を歪めた。
「一方で曹沙さんはダメですね。クソです。うさぎに嫌われるような人は今すぐ私とうさぎ達の前からいなくなって欲しいです」
「はあ⁉︎」
紹美には優しい言葉をかけていたのに、曹沙には毒々しい物言いだった。
「こっちはアンタらの勝手で閉じ込められてんだけど⁉︎ それなのにこんな幻術に付き合わせておいてその言い草はなに⁉︎」
ガー!と怒る曹沙。
そんな彼女に桃色の少女は言い返す。
「でもあなたさっき、うさぎがあまりにも近寄ってこないから泣いてたじゃないですか」
「ぐはっ!」
先ほどの事を思い出して顔を真っ赤にする曹沙。
「ち、ちが……あ、あれはアンタの幻術で……」
「確かに不思議な術は使ってますよ。あの一階から二階を塞ぐ扉の出現だって、急に現れたりしてたでしょう? あれはそう言う力を使っているからです」
「ほ、ほらね! だからあの時の気持ちはアンタの仕業で……」
「しかしうさぎ達を見たり触ったりすると、ほんわかした心になるような術を使いましたが、あなた方の言動を操るような術は使用しておりません」
「え………?」
「つまり先ほどのあなた方の言動は、ほんわかワールドに入り込んで心が解放された結果、曝け出されたあなた方の本当の姿なのです」
「なっっっ!!!」
ボフン!とゆでダコのように顔を真っ赤にする曹沙。
紹美も頬を赤くした。
(嘘でしょ⁉︎ いやでもあの空間は気持ちよかったような……わ、私何か変なこと言ってないわよね⁉︎)
(…………なんか、曹沙の事を大好きな友達とか思ってたような気がするけど………き、気のせい気のせい!)
二人して心の中で恥ずかしくなって誤魔化す。
二人とも目の前に現れた少女に対して、まともな戦意を向けられなくなったのを見て、少女はゆったりとお辞儀をする。
「改めまして、初めまして。私は東拓様の家来、白城彩陽と申します。曹沙さんにはよろしくしたくないので、紹美さんにだけよろしく申し上げます」
「あ、はい。ど、どうも」
「さ、さっきからムカつくわね」
まだ照れている二人はハッキリとした反応を返せなかった。
「私はここであなた達を試すよう東拓様から指示されていたのです。そしてこれでおしまいです」
彩陽が小さな手を叩くと、ポンッとコスモスの花が出てきた。
それを手に持つと、二階の窓から放り投げた。コスモスの花はくるくる周りながら、なんと空中を飛んでいくではないか。
まるで生きてる鳥のように飛んでいくコスモスの花に、二人は呆気に取られる。
「幻術を使えるのは本当のようね……いいえ、これはもはや幻術と言うより神通力とか魔術のような……」
「神通力? ああ、いらっしゃいますよ。この学園の中に神通力を操り、さらには鶴や羊に変身する私の友達が。しかし曹沙さん、あなたがあの方に会うのはオススメしません」
「は?」
「あの方はあなたの事が大嫌いですから。では〜」
そう言い残してから次の瞬間、ポフン、と彩陽とうさぎ達が目の前から姿を消してしまった。
「消えた……!」
「曹沙、何したの? なんかすごい嫌われてない?」
「何かした覚えはないわよ。ま、あんなやつどうでもいいでしょ。それよりも………」
うさぎ達がいなくなった先には、三階の最上階へと続く階段があった。
そこから独特の匂いと、怪しげな湯気が立ち込めていた。
「何よこの匂い……!」
「いかにも魔王の目の前に来たって雰囲気ね」
二人は頷きあって、怪しげな雰囲気立ちこめる階段へと歩みを進める。




