第7話:『伝説の隣に座る男』
俯くアリスと、その横で腹を鳴らしたユイ。
その光景を見て、俺は深い溜息をついた。
「……はぁ。クソ真面目な子供には甘いな、俺も」
俺はアリスに向き直り、指を一本立てた。
「いいか、条件だ。俺を最低限の給料で雇いたければ、
もう一人、俺が指定する人物を引っ張ってこい」
「えっ……。もう一人? 整備士さん?」
首を傾げるアリスに、俺はニヤリと笑って見せた。
「いや。俺が伝説の整備士なら、そいつは
『神のインスタグラマー(映えの専門家)』だ」
この世界の理不尽なルール……人気こそが予算。
どれだけ機体が「本物」でも、国民に届かなければ、
このガレージは明日には潰れ、ユイは戦えなくなる。
「俺は嘘の演出は嫌いだ。だが、このマシンの
『機能美』という真実を、最高に美しく、
残酷なまでに魅力的に発信できる奴が一人だけいる」
前職で俺と唯一、話が合った広報担当の男。
「あんな電飾はゴミだ。機能が噛み合う瞬間の
火花こそが、究極の官能なんだよ」
そううそぶいていた、変わり者の天才ディレクターだ。
「アリス、そいつを口説き落とせ。俺たちの
『本物の戦い』を、世界が無視できないほどの
エンターテインメントに塗り替えてやるためにな」
俺の提案に、アリスは目を見開いた後、
力強く、確かな意志を込めて頷いた。




