第6話:『地味な勝利と、静かな帰還』
飛行素体と合体したコアが、瞬時に成層圏へと消える。
ガレージのモニターには、ユイが捉えた敵機の影。
前職のレオなら、ここでカメラに向かって
「正義の裁きを!」と叫ぶところだが、無線は静かだ。
聞こえてくるのは、ユイの規則正しい呼吸音と、
俺が調整したエンジンの、淀みのない回転音だけ。
「ターゲット確認。……排除する」
呟きと同時に、飛行機から冷徹な火線が伸びた。
ド派手なビームじゃない。最小限の弾丸が、
敵の急所を的確に貫き、一瞬で火だるまに変える。
回避行動に無駄な旋回はない。ただ最短距離を走り、
敵を撃墜しては、次の獲物へと機首を向ける。
戦闘開始から、わずか数分。
空を埋め尽くしていた敵の影は一掃された。
必殺技の絶叫も、不必要な火花も一切なし。
ただ「作業」を終えたかのように、機動は戻ってきた。
「ただいま。おじさん、エンジンの同調、完璧だよ」
降りてきたユイは、汗一つかかず眠そうに笑った。
この腕、このマシン。正直、技術者としては震える。
だが、俺は冷静にガレージの惨状を見渡した。
「……見事なもんだ。だがアリス、現実は厳しいな。
このシステムの理念は最高だが、環境が追いついてない」
俺は剥き出しの鉄骨と、旧式のクレーンを指さした。
「格納庫は狭すぎるし、予備のパーツも底を突いてる。
この換装システム一つで戦域を支えるには、
設備も、それを維持する資金も、圧倒的に足りないぞ」
アリスは唇を噛み、沈黙した。
「……分かってる。でも、人気がないから、
国からの補助金も、まともな機材も回ってこないの」
「俺を雇う余裕なんて、今のあんたらにあるのか?
情熱だけで機体は飛ばせても、飯は食えねえんだぞ」
俺の問いに、アリスは答えられず俯いた。
性能は「本物」だ。だが、この規模のガレージでは、
次の一戦を生き延びられる保証すらない。
俺は腕を組み、冷え切ったコンクリートの床を見つめた。




