第5話:『小さき撃墜王』
約束通り、俺は翌日もサオトメ技研の門を叩いた。
ガレージの奥、昨日整備したばかりの換装コアの横に、
一人の少女が立っていた。
アリスよりもさらに幼い、中学生くらいに見える少女だ。
「――お姉ちゃん、このおじさんが新しい整備士?」
少女は眠たそうな目をこすりながら、俺を指さした。
「ゲンさん、紹介するわ。私の妹で、このシステムの
唯一の専属パイロット……ユイよ」
アリスの言葉に、俺は思わず耳を疑った。
「……冗談だろ。こんな子供に、換装時の衝撃や、
あのマシンの出力をコントロールさせる気か?」
俺が吐き捨てると、ユイは無言でコアに飛び乗った。
彼女が操縦桿を握った瞬間、ガレージの空気が変わった。
それまでの眠たげな表情は消え、
瞳には、獲物を逃さない獣のような鋭い光が宿る。
「おじさん、昨日の整備……悪くないよ。
コアの接続部、今までで一番、素直に噛み合ってる」
ユイがコンソールを叩くと、機体が低い唸りを上げた。
その時、街にけたたましいサイレンが響き渡った。
「――敵襲警報! 侵略者の偵察部隊が接近中よ!」
アリスが叫び、モニターに正体不明の影が映し出される。
前職なら、ここで派手な搭乗シーンの配信準備だ。
だが、ユイは余計な言葉一つ発さず、
コアのハッチを閉め、わずか数秒で始動を終えた。
「ユイ、換装テストを兼ねて迎撃に出るわよ!
飛行素体射出! 接続して!」
「了解。……ゲンおじさん、見ててね」
ガレージの天井が開き、高速飛行機が射出される。
ユイの操るコアが、その中心部へと猛スピードで突入。
ガシャリ!と、一切の無駄なく鋼鉄が噛み合った。
「……信じられん。あの速度でドッキングだと?」
俺が驚愕する間もなく、飛行機は爆音と共に空へ。
「映え」なんて微塵も考えない、殺意に満ちた初出撃だ




