第4話:『鋼鉄の核(コア)』
翌日。俺は導かれるように街外れのガレージへ向かった。
錆びたシャッターを潜ると、そこには昨日の図面が、
三次元の質量を持って鎮座していた。
「……こいつが、換装コックピットの実機か」
それは、鈍いチタン色に輝く独立型の小型艇だった。
中央に分厚い装甲に守られた座席を持つ、プラグイン。
背後には、この核を受け入れるための戦車と、
細身で機能美に溢れるロボの素体が並んでいる。
「待ってたわ、ゲンさん。設計は完璧だけど、
接続の衝撃を殺しきれてない。解決できる?」
アリスが作業机から顔を出し、不敵に笑う。
俺は黙って上着を脱ぎ、機体の下に潜り込んだ。
「緩衝材の選定が甘い。積層式セラミックに変えろ。
そうすれば接続後、コンマ一秒でフル加速が可能だ」
それから数時間、俺とアリスは黙々と作業を続けた。
俺がボルトを締めれば、彼女が即座に配線を繋ぐ。
無駄を削ぎ落とし、機能が噛み合っていく快感。
俺が求めていたのは、この手応えなんだ。
「ゲンさん、私の理想はさらに先にあるの。
いつかは戦場のど真ん中で、戦況に合わせて、
瞬時にパーツを換装し、戦い抜くシステム……」
アリスの壮大な構想に、俺の胸が熱くなる。
それは「映え」のためではない、極限の合理性だ。
実現には壁も多いが、ここなら形にできる気がした。
だが、作業を終えて顔を拭った俺は、冷静に告げた。
「……図面と実機は素晴らしい。だが、アリス。
悪いがすぐに入社を決めるなんてことはできない」
「えっ……。どうして? 完璧な手際だったじゃない」
驚くアリスに、俺は油まみれの掌を見つめて言った。
「俺は昨日クビになったばかりだ。それに、
組織というものに、少しばかり嫌気がさしている。
あんたの理想が、本物の『兵器』を目指すものなのか、
それとも別の『玩具』なのか。それを見極めたい」
アリスは少し寂しげに、だが納得したように頷いた。
「……分かったわ。じゃあ明日、もう一度来てくれる?
このマシンが、ただの鉄の塊じゃない理由を見せるから」
彼女の視線の先、休憩室のドアの向こう側から、
誰かが起きてくるような微かな気配がした。
それが、まだ見ぬ最強のパイロットとの出会いに
繋がるとは、この時の俺はまだ知る由もなかった。




