第62話:『重なる鼓動、届かぬ牙』
「……仕掛けるよ! おじさん、しっかり掴まってて!」
ユイが叫び、二人乗りのコアが急加速する。
俺は膝の上のユイを支え、揺れる機体で必死に耐えた。
「主砲、最大出力! 撃てッ!!」
俺の怒号と共に、飛行ユニットの火器が火を吹いた。
だが人型の侵略者は、避ける素振りすら見せない。
光弾は装甲に直撃したが、傷一つ付けられなかった。
「……嘘、効いてない!? 火力が足りないの!?」
アリスの悲鳴が響く。敵ロボットは目にも止まらぬ速さで、
死神の鎌のような鋭い爪をこちらへ突き出した。
「ユイ、回避だ! 離脱しろ!」
俺は叫んだが、周囲はビーコンに寄った無数の敵機が空を埋める。
「……ダメ、逃げ場がない! おじさん、さっきの戦車、
囮にしないで、あっちの火力があれば……!」
ユイの言葉が、後悔となって俺の胸に突き刺さった。
戦車を囮にしたのは最善手だった。だがその結果、
装甲を持つボスに、薄皮一枚の飛行機で挑む羽目になった。
「……私の読みが甘かった。あんな個体がいるなんて」
カナタの震える声。敵の二撃目が俺たちの翼を掠め、
コックピット内に激しい火花と警報音が吹き荒れた。
「……くそっ、整備士が判断を誤ったか……!」
俺は操縦桿を握るユイの背中を、強く抱きしめた。
武器も盾も逃げ道もない。
絶体絶命の二人に、鉄の拳が無慈悲に振り下ろされた。




