第60話:『見えざる呪い』
「……おかしいです。盤上のルールを無視しています」
カナタがモニターの波形を凝視しながら、鋭く声を上げた。
「敵の動きが正確すぎます。遮蔽物も、私の誘導も関係なく、
全ての敵が、まるで磁石のようにユイ様へ直進している!」
通常なら、俺が地上で派手に暴れれば敵の半分は分散するはずだ。
だが、侵略者どもは俺の戦車パーツを最小限の数で牽制し、
その全戦力を、執拗に空中のユイ一点へと集中させていた。
「まるでユイの居場所が、リアルタイムで筒抜けみたいだな……」
俺は嫌な予感を覚え、インカムのチャンネルをアリスに繋いだ。
「アリス、聞こえるか! 今すぐユイの機体をフルスキャンしろ!
俺の目が届かなかった場所に、何か『余計な物』がないか探せ!」
「……了解! すぐに全センサーを外部から同期させるわ!」
アリスの必死な操作音が、アリーナのスピーカーを通じて響く。
二万人の観客も、何が起きているのかと息を呑んで見守った。
数秒後、アリスが悲鳴にも似た声を上げた。
「……あった! 機体底部の装甲の裏、メインフレーム直下!
発信源不明の超小型ビーコンが、強力な信号を出し続けてる!」
「……やっぱりか! あの野郎、見学の時に仕込みやがったな!」
俺は怒りで視界が赤く染まった。
共闘を申し出たディフェンス・ノヴァ。奴らの目的は共闘などではなく、
この呪いの発信機でユイを敵の海に沈め、公開処刑することだったのだ。
「……ゲンおじさん、これ、どうすればいい?」
敵の包囲がさらに狭まり、ユイの機体が窮地に追い込まれる。
俺はレバーを叩きつけ、地上の敵を蹴散らしながら叫んだ。
「カナタ! そのビーコンを逆手に取った『詰み』を考えろ!」




