第58話:『空から降る盾』
「……もう、限界……っ」
ユイの息が詰まる。敵機の猛攻で機体は傷つき、警報音が
鳴り止まない。数多の光弾が、逃げ場のない彼女へと
一斉に収束し、死の閃光が空を焼き尽くそうとした。
その絶望を、上空から飛来した「重厚な影」が遮った。
凄まじい衝撃波と共に、数トンの鉄塊がユイの目前に割り込み、
降り注ぐ光弾を、その分厚い装甲で強引に弾き飛ばす。
「……遅くなって悪かったな、ユイ! 後は任せろ!」
インカムから響いたのは、聞き慣れた、粗野で力強い
ゲンの声だった。モニターには、翼を捨て、ブースターを
逆噴射させながら滞空する、傷だらけの戦車パーツが映る。
「……ゲンおじさん? なんで、ここに……」
「整備士が、自分の作った機体を見捨てられるかよ!」
ゲンは叫ぶと同時に、戦車の全砲門を開放した。
精密な狙いなどない。ただひたすらに、圧倒的な火力を、
ユイを囲む敵の包囲網へと叩きつける。
「カナタ、計算は任せた! 俺はこの『動く城壁』で、
ユイの安全圏を確保し続ける! 撃ち漏らしを頼むぞ!」
「……っ、了解です! ゲンさんの無茶苦茶な軌道、
今、勝利の盤面に書き換えました!」
整備士が戦場に降臨し、軍師の瞳に再び火が灯る。
アリーナの二万人が、この泥臭い「本物の援護」に、
空を揺らすほどの怒号と喝采を送り始めた。
反撃の時は、今、この瞬間から始まる。




