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第57話:『整備士の意地』
「ゲンさん、無茶よ! その機体はピーキーすぎて、
プロのユイですらギリギリなの。素人が乗れば、
空中でバラバラになるわ!」
アリスが血相を変えて、予備機へ乗り込む俺を止める。
「構わねえ、出撃させろ! 腕がなけりゃ、
機体性能でカバーして、強引に道をこじ開けるまでだ!」
俺はレバーを握りしめ、ハッチを閉じた。
だがその時、ゼンジの不敵な笑い声が響いた。
「フン、素人のゲンがユイのようにスマートに、
レールを音速で駆けるのは無理だろうな。だが――
これなら、お前でも『弾丸』になれるぜ」
ゼンジが操作盤を叩くと、コンサートホールの天井で、
巨大なシリンダーが重々しく逆回転を始めた。
「シリンダー下降! ステージ上でドッキングだ!」
頭上から巨大な戦車パーツが、ゆっくりと降りてくる。
俺の乗るコアに、重厚な鋼鉄の塊がガチリと噛み合った。
シリンダーが再び天井へと吸い込まれ、視界が広がる。
二万人の観客が見守る中、ステージ中央に、
完全武装の陸戦機が、その圧倒的な姿を現した。
「レールなんていらねえ。垂直離着陸で、
最短距離をブチ抜いてやる!」
俺はスロットルを最大まで押し込んだ。
整備士の意地を乗せた戦車が、絶望の空へと跳ね上がる。




