第54話:『消えた盾、見えざる敵』
「……現場に到着。これより掃討を開始する」
ユイの声が響き、眼下には予定通り、
重厚な戦車部隊の影が市街地を埋め尽くしていた。
だが、カナタがモニターを睨み、鋭い叫びを上げた。
「……待って! ユイ様、そのまま突入しちゃダメ!
その熱源、味方の機体じゃありません。
……それ、全部侵略者の地上戦車です!」
カナタの叫びと同時に、地上の戦車が一斉に砲門を上げた。
「なっ……なんだって!? 仲間の戦車隊はどうした!
あいつらが盾になって、道を拓いてるはずだろ!」
俺はモニターを叩くが、ディフェンス・ノヴァの信号は、
作戦エリアのどこにも、影も形も見当たらなかった。
「空からも来るよ! 侵略者の飛行兵器、多数捕捉!」
ユイが鋭く叫び、上空から降り注ぐ光弾を回避する。
地上は敵の戦車、空は敵の飛行部隊。
そこにあるはずの「味方」は、どこにもいない。
「……ハメられたのね。あいつら、最初からここに、
来るつもりなんてなかったんだわ!」
アリスが拳を握りしめ、青ざめた顔で画面を睨む。
共闘という嘘で、ユイを敵の巣窟へ誘い出したのだ。
「ゲンおじさん、囲まれてる……。これ、まずいかも」
ユイの冷静な声に、かつてない焦燥が混じる。
敵の動きは統制され、逃げ道を塞ぐように包囲を狭める。
絶体絶命の孤独な空。
アリーナの二万人が困惑の声を上げる中、
機体に仕掛けられたデバイスが、赤く点滅を始めた。




