第53話:『偽りの翼、真実の出撃』
共闘の契約から数日が経ち、ついにその時が訪れた。
基地の警報が鳴り響き、アリスが緊張した面持ちで叫ぶ。
「予測ポイントに侵略者出現! ディフェンス・ノヴァの
戦車部隊は、既に出撃地点へ向かっています!」
「よし、こっちも行くぞ! ユイ、準備はいいか!」
俺の声に、ユイは静かに頷き、ステージへと向かう。
今日のホールは、合同任務のニュースを聞きつけた
二万人の観客で、かつてないほどの熱狂に包まれていた。
ゼンジの演出が冴え渡り、巨大モニターには相手側の
重装戦車部隊が、地響きを立てて進軍する映像が映る。
「陸の王者が道を拓き、空の英雄がトドメを刺す!
今、史上最強の共闘が幕を開けるッ!!」
二万人の大歓声の中、ユイがカプセル内で着装を終える。
「……ユイ、飛行コア、接続!」
リボルバーには今回選択された飛行パーツが装填され、
シリンダーが固定。凄まじい射出の火花が散った。
客席を貫くレールを音速で駆け抜け、ユイは夜空へ飛ぶ。
「……ゲンおじさん、カナタ。向こうの部隊、捕捉した」
「了解です。ユイ様、相手の戦車隊が作る安全圏から、
予定通りの爆撃コースに入ってください」
カナタが冷静に、だが微かな警戒を孕んだ声で指示を出す。
俺はモニターに並ぶ、機体の数値を凝視した。
「……全システム、オールグリーン。行ってこい、ユイ!」
夜空に消える漆黒の翼を見上げながら、俺は祈った。
この舞台が、最悪の罠ではないことを。
だが、俺はまだ気づいていなかった。
数日前の「相互見学」の際、彼らがほんの一瞬の隙を突き、
機体の底部にあの「黒いデバイス」を、
既に密かに取り付けていたことに。




