第50話:『偽りの共助』
「ディフェンス・ノヴァ」の担当者との具体的な打ち合わせが始まった。
会議室のモニターには、次戦の作戦海域が映し出されている。
「我が社は重装甲の戦車部隊で地上の敵を固定し、盾になります。
サオトメ技研のユイ様には、空からトドメを刺していただきたい」
相手の提案は、至極まともで合理的な協力要請に見えた。
「向こうが陸、うちが空……役割分担としては完璧ね」
アリスが頷く中、ゼンジは「空と陸の連携か、映えるな」と、
既にカメラドローンの配置を書き込み始めている。
相手の担当者は、にこやかに補足説明を続けた。
「戦車部隊の対空誤射を防ぐため、高度はこのラインを維持して、
指定のルートで進入してほしい。連携の安全のためです」
「……なるほど。現場での混乱を防ぐための制約ってわけか」
俺は提示されたルートを分析しながら、特に疑いもせず頷いた。
「……ゲンさん、この座標。敵の予測出現ポイントに対して、
相手の戦車部隊の布陣、とても美しい効率的な形をしています」
カナタがモニターを覗き込み、感心したように呟いた。
盤上遊戯を極めた彼女の目にも、その布陣は隙がないように映る。
「ユイ様、これなら私が計算するまでもなく、敵は追い込めます。
私はユイ様が一番綺麗に映る射撃タイミングだけ、考えますね」
カナタが珍しく無邪気に笑い、ユイも「……楽できるなら、いい」
と、少しだけ表情を緩ませていた。
大規模な民間防衛会社との提携。それは、弱小だった俺たちが、
ようやく業界の主流に認められた証のように思えた。
俺は、今回の合同任務がもたらすであろう「信頼」という実績に、
わずかな高揚感を覚えながら、機体の最終チェックに入った。
その共闘の裏に、どす黒い悪意の罠が仕掛けられているとは、
この時の俺たちは、まだ知る由もなかった。




