第46話:『覚悟の所在』
「……分かった。そこまで言うなら一度だけ試してやる」
俺たちはカナタを基地へ連れ帰り、訓練機に座らせた。
だが開始前から彼女は、隣のユイを見て悶絶している。
「ユイ様とお隣で共闘……死んでもいいです……っ!」
「死ぬとか簡単に口にするんじゃねえ。テスト開始だ」
訓練シミュレーターには敵機十機が投影された。
これまでのユイの単独ベストは、四分二十五秒。
だがオペレーター席のカナタは、指示どころではなかった。
「あわわ、ユイ様の横顔が尊すぎて……計算が、計算が!」
カナタの指示は支離滅裂。三手先を読む頭脳は停止し、
無線越しに「ユイ様、可愛い!」と叫び出す始末だ。
結果、十機の撃破に、素人以下の十分以上もかかった。
「……テスト終了だ。もう帰れ。あんたじゃ無理だ」
俺が冷たく言い放つと、カナタは絶望に顔を歪めた。
「そんな……! 私は、ユイ様のために……!」
だが、言葉を遮ったのは、これまで黙っていたユイだった。
「……カナタさん。私、遊んでるんじゃないんだよ」
ユイは冷めた目で、震えるカナタを真っ直ぐに見据えた。
「私はいつだって、命を懸けてあの重力の中にいる。
あんたが見惚れてる間に、私は死ぬかもしれないんだよ」
ユイは冷たく、だが切実な願いを込めて言葉を続けた。
「私、ファンはいらないの。欲しいのは仲間だけ。
背中を預けられない人は、私の隣に座る資格はないよ」
その言葉は、鋭い氷のようにカナタの胸に突き刺さった。
「……っ!」カナタは床に膝をつき、拳を握りしめた。
自分の軽率さと、ユイの背負う本物の重みを知り、
彼女は再び、床を割るほどの勢いで頭を叩きつけた。
「……もう一度、お願いします! もう一度だけチャンスを!
次は決して見惚れません。ユイ様の命を守るため、
私のすべてを、この一秒に捧げますから……!」
涙を流し懇願するカナタ。その瞳にはオタク心ではない、
一人の勝負師としての、真剣な覚悟が宿っていた。




