第43話:『盤上のアイドル』
翌日から、俺たちは最高のオペレーター探しに奔走した。
だが戦況を瞬時に読み解くような優秀な人材は、
既に大企業や軍に囲い込まれており、どこも門前払いだ。
「……ダメね。うちみたいな新興企業じゃ実績が足りないわ」
アリスが肩を落とし、俺たちは事務所で途方に暮れていた。
とりあえず見つかるまでは俺がやるしかないのか。
そう俺が頭を抱えた時、アリーナから地鳴りのような歓声が響いた。
「なんだ? 今日は誰のライブだったっけ」
俺たちがモニターを覗くと、ステージでは有名アイドルの、
ライブイベントが佳境を迎えていた。
だがその光景は、歌やダンスとはかけ離れたものだった。
「――参りました。……私の負けです」
ステージで頭を下げたのは、現役の将棋プロ棋士だ。
対局相手の小柄なアイドルが、涼しい顔で駒を置く。
二万人の観客が、プロを破る大金星に熱狂の渦を上げた。
「……おいゼンジ。あのアイドル、何者だ?」
「最近売出し中の『カナタ』だ。特技は超高速指し。
数手先どころか、数千通りの局面を瞬時に読むらしいぞ」
ゼンジの言葉に、俺とアリスは同時に顔を見合わせた。
数千の局面を瞬時に読む頭脳。相手の動きを封じる先読み。
盤上の王を守る彼女の指し筋は、まさに俺たちが求める、
戦場を支配するオペレーターの資質そのものではないか。
「……ゲンおじさん。あの人なら、私のスピードに追いつける?」
ユイの言葉に、俺はモニターの中の少女を睨み据えた。
「ああ。決まりだ。さっそく彼女に交渉してみようぜ」




