第42話:『欠けた歯車』
戦場上空に到達した瞬間、ユイがパージのスイッチを入れた。
「……切り離し」
巨大な翼が外れ、数トンの鉄塊となった戦車が、
重力に従って敵の多脚機部隊へと垂直落下する。
切り離された飛行パーツは、そのまま上空を自動旋回し、
戦場の詳細なデータ収集を開始した。
「敵機の数は十五。建物に隠れている奴は俺が指示する。
ユイ、俺がオペレーターをやる、左十度の路地に一機だ!」
「了解。……えいっ」
ユイが主砲を放つが、敵は俺の指示より早く移動していた。
「……おじさん、指示が遅い。そっちはもういないよ」
俺の予測が甘い。戦場のデータ処理が追いつかず、
俺のオペレートは、常に戦況のコンマ数秒後を追いかける。
ユイは超人的な反射神経で、俺のミスをカバーし続ける。
だが十五機の殲滅に、想定の三倍の時間がかかった。
何とか全滅させたものの、俺がオペレーターとして、
全く役に立っていない事実は、誰の目にも明白だった。
「……ふぅ。終わったよ。でも、次はもっと効率よくやりたい」
帰還の途につくユイの声に、俺は歯噛みした。
俺は最高の機体を作れるが、戦場を動かす才能はない。
ユイの腕を活かすには、俺ではない最高のオペレーターが必要だ。
「……アリス、ゼンジ。俺たちには最高のオペレーターがいねえ」
俺はモニターを見つめ、次なる仲間の必要性を痛感した。
このままでは、いつかユイの技術でも補えない窮地が来る。
俺たちは、戦場を導く最高のオペレーターを探し始めた。




