第37話:『高嶺の看板娘』
落成式は大成功に終わり、新基地の知名度は爆発した。
連日、ガレージの端末にはメディアの取材依頼が殺到。
さらには各方面のイベント会社から、ホール使用の要望や、
デモ発進の追加依頼が山のように届いていた。
「……ゲンさん、大変よ。ユイと私を、広告やイベントに、
出演させてほしいっていう話まで、数百件も来てるわ」
アリスが大量のメールを捌きながら、悲鳴を上げている。
だが、それら全ての依頼に対し、ゼンジが提示したのは、
誰もが目を剥くような「法外な報酬額」だった。
デモ発進一回、あるいは二人の出演一回につき、
中小企業がひっくり返るほどの、容赦ない金額だ。
「……おいゼンジ。これじゃ、誰も依頼できねえぞ」
俺があきれて言うと、ゼンジはニヤリと鼻で笑った。
「それでいいんだよ。安売りはブランドを汚すだけだ。
本物の価値ってやつを、まずは金で見せつけてやるんだ」
「ホールの使用は、スケジュールさえ合えば許可する。
だがユイの操縦とアリスの言葉、そしてゲンの技術……。
それらを安っぽく消費させるつもりは、毛頭ねえよ」
事実、ゼンジの強気な価格設定に、多くの会社が、
「おいそれと手は出せない」と、泣く泣く引き下がった。
だが、その門前払いが、逆に「サオトメ技研」の格を、
さらに手の届かない高みへと押し上げていく。
「……ふん。余計な仕事が減るなら、俺は助かるぜ」
俺は最新の工作機械を使い、空中換装のための
基礎研究に、誰にも邪魔されず没頭し始めた。
真の強者は、戦う場所を自分で選ぶ。
金と人気を盾に、俺たちは自分たちの「本物」を磨く、
静かで贅沢な時間を、着実に手に入れていた。




