第34話:『運任せの英雄』
芸能事務所を後にした帰り道、ゼンジは満足げに語った。
「これでアリス社長やユイが、無理に舞台に立って
踊る必要はほとんどなくなるだろう」
その言葉に、アリスとユイは心底ホッとした顔を見せた。
「ホールを遊ばせておくのはもったいないからな。
今後は他のアーティストのライブやスポーツの試合、
何でも呼び込む。二万人の客が常にそこにいるんだ」
ゼンジは端末を叩き、新たな収益モデルを描き出す。
「出撃するかどうかは、もはや運次第のアトラクションだ。
もし試合中に敵が現れれば、ユイが会場を貫いて飛ぶ。
その劇的な瞬間こそが、世界一の付加価値になる」
ゼンジはニヤリと笑い、さらに黒い野望を口にした。
「報酬額の釣り合い次第じゃ、政府の依頼がなくても、
あえて『デモンストレーション発進』をしてもいい。
二万人の興奮を燃料に、機体を飛ばすんだよ」
人気と実戦、そしてギャンブル性の融合。
俺はあきれながらも、既に新基地の設計を修正していた。
「……つまり、いつ何時、誰のライブ中だろうが、
最高速度で換装・射出できる完璧なシステムを作れってか。
相変わらず、とんでもない無茶振りだぜ」
アリスは「……平和を守るためなのか、興行のためなのか、
もうわからなくなってきたわ」と苦笑いした。
だが、その目は確実に、かつてない強固な基地の完成を
見据えて、真っ直ぐに前を向いていた。




