第30話:『焦燥の帝王』
サオトメ技研が新基地の構想に沸く一方で、
「ギャラクシー・エンターテインメント」の社長室には、
絶叫とガラスの割れる音が響き渡っていた。
「……バカな! あの零細企業の動画再生数が、
我が社の『グレートイカロス』を上回っただと!?」
社長は震える手で、サオトメ技研の動画を睨みつけた。
そこには、これまで自分たちが「物語」と「いいね」で
支配してきた市場を、根底から覆す「本物」があった。
「新型機の開発はどうなっている! 早くしろ!」
社長がドックへ繋がる通信機に怒鳴り散らすが、
返ってくるのは整備士たちの、力ない報告ばかりだ。
「……無理です。あの複雑な変形機構は、
現場のスタッフでは何度テストしても、
関節部が自重で崩壊してしまいます」
現場はかつて「現場を支えていた男」の不在により、
今や、新型ロボはただの動かない鉄の塊だった。
英雄レオも、一機欠けた現状では出撃すらできず、
「俺の出番はまだか!」と無意味に騒ぐだけだ。
人気は目に見えて急落し、政府からは
補助金カットの通知が、追い打ちをかけるように届く。
「……おのれ、サオトメ技研。調子に乗りおって……」
社長は、画面の中で淡々と敵を沈める
謎の新勢力の機体を、憎しみを込めて睨みつけた。
まさかその裏に、自分がクビにした男がいるとは
夢にも思っていない。
人気を奪われ、技術でも完敗し、プライドはズタズタ。
追い詰められた社長は、デスクの隠し引き出しから、
一枚の黒い電子チップを取り出した。
「……こうなったら、奥の手を使うしかない。
銀河の法律だろうが、禁忌だろうが関係ない。
あの小娘共の『本物』を、絶望に変えてやる」
その顔には、もはや防衛企業の誇りなど欠片もなく、
ただ執念と悪意だけが、どす黒く渦巻いていた。




